newENGスタイル≠newDSLRスタイル

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3回に渡りDSLRをどうして使いたいのか?と質問を投げて見たのだが今まで予算が在ればF35やRED ONEを絶対に使うモンだと思っていたが、そんな中でやはりDSLR(と言うか5Dmk2だが)を効率よくガジェット的に使っていると言う現場から意見を聞くことが出来た。その現場とは日本の映像業界の中で最も制作本数が多く行われている思われるアダルトビデオ(AV)業界である。

まずはこのリグを見て欲しい。VFにHDCAMのOP扱いのカラーVFを本体のHDMI出力をRGBに変換し取り付けている。もはやこうなってくるとREDONEと値段が変わらない気もするがやはり女性の肌の質感は、大型撮像素子ならではの質感が在るからだろう。しかし作品全部が全部この様なスタイルで撮っているわけではなくあくまでもこのスタイルは、イメージ映像撮りのワンシーンのみで基本は本体単体だけで使う。

こうまでしてDSLRを使うのはその本体の小ささだけと言う事で、ボディ背面がレンズ後端から短いためにどの様な場所でもアングルが決まるためで、本編はやはりビデオカメラ(HPX175-P2等)を使用している。そして5Dmk2の使い方だが実は被写体深度は他のクリエーターの様に浅く撮ることを好まない。何故か?AVという作品を考えれば解ることだが顔にピンが来て体がボケるのでは全く意味がないからだ。パンフォーカスで撮って全てが見えなければAVとしては成立しないと言う解答になるほど!と素直に思ってしまった。

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しかしパンフォーカスで撮るには5Dmk2の大型撮像板では最低でもF8以上絞り込まなければならず、それはそれで使いづらい。しかもあのスチルカメラのボディではやはりビデオライクに撮るにはカメラ重心もさることながらホールド感に若干の無理もある。そんな中SONYから中々良い感じのハンディカムが登場した。NEX-VG10である。

DSLRとビデオの融合

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なかなかこのカメラは引き合いが多いのかデモ機が借りられなかったのだが、製品版をお借りすることが出来た。短期間だが、3つの現場に持ち込んで、実際に使って見た(ここ重要)。この原稿執筆中はまだ発売前だったが、結構否定的な厳しい意見がWeb上でも見られた。メディアやライターの方が書いているはずだが、中には駄目出しばかりのレポートあるらしい。おいおいチョット待ってくれ、そんなにこのカメラって出来が悪いのか?世の中に出ているどんな製品だって新型製品と言うのは最新技術の総意であり悪いわけがない。悪いとすればそれは想定外の使い方をしている方が多い。大型撮像板ビデオカメラって、このサイズにおいては日本初物なのだから今までの使い方じゃ駄目だろうって事。しかもDSLRではなくビデオカメラって事で浅い被写界深度よりもどれだけフラットなパンフォーカス気味の映像が撮れるのが重要なのでは?

今回持ち込んだ現場はグラビア系チョイエロの携帯サイト用の素材撮りとブライダルでのバックヤード分の立ち回り、後は宣材気味のPVの撮影で共通項目は被写体が女性であると言う事、グラビアとブライダルは映像が使えないのでPVでの使用感を伝えよう。個人的にはこの手の撮影は大好きなのだが、なるほど従来のハンディカムとはかなり異質な感じが強い。まずはデフォルト(オート)ではシャッタースピードがコロコロ変わってパラパラ感が妙に出て違和感が酷い。此を押さえるべく出来る限りSSは1/60か1/100にしたいのだが今回の様な晴天のオープンではかなり絞り込んでも厳しくやはりNDフィルターが必衰ともいえる。

また本気のGAIN表示だが此もビデオ感覚での感度UPと思っては駄目であくまでもISOと考えた方が、明るさの想定は掴みやすい。つまりビデオで+15dbと言うのはノイズ感バリバリで使えないレベルだがVG10ではその様な事は無いと言っていいだろう。既に書かれていることで純正ズームの操作が逆回転と言うのがあり、ビデオグラファーにとっては使いにくい部分でも在るが此はズームリングを回すのではなく、レンズ先端を持ってテレはレンズを伸ばす、ワイドは縮めると言う動作で結構しっくり来る。

意外に良いぞ!VG10

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まずこのカメラの駄目な使い方の一例を挙げてみよう。

  1. ビデオの様に使う。
  2. DSLRの様に使う。

つまり、どうやって使うんだ?なるほどもっともな意見だが、ちょっと待って欲しい。このカメラは新しいジャンルの言わば初物。どうやって使うかと言うのはこれからまだまだ探りを入れて行かなければならないカメラで、つまりこのカメラを普通に使って評価するのはおかしいのである。ビデオやDSLRの良い部分だけを使うことも出来るが逆に、両方の駄目な部分を引き出してしまうこともある。と言う事は頭の堅い(悪い?)カメラマンにはまず使って欲しくない。というもの自称:クリエーターと軽く名乗っている方にも使って欲しくない。常に新しい物に対しポジティブに考えることが出来るカメラマンこそこのカメラを使うべきで、その為には1週間ほどのデモ期間ではその評価は出ないはず。

総評

まずは、撮影したサンプルを見てもらおう。このカメラはお金を稼ぐカメラと言うより次世代の使い方を考える(勉強する)カメラと考えるとすっきりする。24Pが出ない?キャノン入力がない?良いじゃないか、何故ネガティブに考えるのか解らない。SONYはきっとこの市場の動向をみて次世代には確実にREDONEを凌駕する大型撮像板カメラを販売するはず。しかしこの実験機とも言える初号機がネガティブに思われてばかりではその先は言わなくても解るだろう。

つまり 「ワケしり顔で理屈をこね回してVG10を評価する。24Pがでない?感度が悪い?どんなマーケティングしたんだ?何を言ってる、本質を見てない癖に」と言う事だ。 ついでにVG10のジャンルをこの様に命名してみたがどうだろう?
Digital Large Sensor Video = DLSV = 一眼ビデオ = ビデイチ
チョット日本語表記は無理があるか(笑

紹介したサンプル1本目は、ストーリーが一応存在する。しかしロケ日の猛暑と熱中&脱水症状気味の為モデルさんを考慮して半分チョイ位で中断。どんな話かは妄想でwモデルさんと二人っきりだったのでロケ車出せず、映像にあるスピダーのみで移動等行った為に三脚含めて荷物が全く載らず、従って全編手持ちだったことを付け加えておく。さー。次回もさらに気になるものをのぞきこんでいきたいと思う!

モデル:高橋千佳 / 車:ルノースポール・スピダー(レンタル可)

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。