短期集中連載も今回が最終回。DaVinci Resolveの機能紹介に主眼においてトピックスを紹介してきましたが、実際に他のワークフローノードからResolveにどのようにしてやって来るかを解説します。オフライン編集では現在最もよく使われている、Final Cut ProとAvid Media Composerについて、具体的な作業の流れを見て行きましょう。素材はRED ONEのR3Dを使ったケースを例にします。

Final Cut Proでの事前準備

FCPではR3Dをネイティブで編集作業で使うことはできません。言い換えれば、R3Dファイルをダイレクトにタイムラインに配置して編集を進めて行くことができません。R3Dは独自の形式でQuickTime形式ではありませんので、現状ではFCPで読み込みができないのが理由です。この対策としてR3Dファイルには、そのRAWデータを参照することができるQuickTimeリファレンスファイルを持つことができます。_F.movや_H.movなどのファイルがそれで、これならばFCPのタイムラインに直接持ち込むことができます。この前提条件は、RED社から無償配布されているFCSインストーラを導入しておくことです。

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もう一つの方法は、FCPの切り出しと転送機能を使って、QuickTimeラッパーファイルを事前に作成する方法です。この原理は、R3DというRAWデータをQuickTimeという包装紙でくるんでしまい、あたかもQuickTimeファイルのように振る舞うことです。ここで作成したファイルはREDCODE QTと呼びます。R3Dは長い記録時間になると2GBをひとつにしたスパン化され分割されます。ラッパーしたしたREDCODE QTファイルは、単一のQuickTimeフィルとして現れます。作り方はFCPの切り出しと転送の初期設定で、ProRes形式ではなく「ネイティブ」を選択します。このREDCODE QTは見かけはQTですが、RAWデータそのものなので、非常に編集には不向きでプレイバックもままなりません。いくら強力なMac Proを使ったとしても、実際には編集作業では使えないのでご注意下さい。

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現実的な編集でR3Dファイルを使うには、先に述べたリファレンス形式のQTファイルを使うか、別のProRes形式などのオフラインメディアを作成することになります。前者はレンダリングが不要なので、撮影後すぐに編集に取り掛かれる利点がありますが、画像のサイズがビデオフォーマットと親和性が低いので、コンピュータ内だけに限定した編集になります。オフラインメディアを別途作り直す方法であれば、環境に合わせてQT形式を選択できるので、時間に余裕があればこちらの方がワークフローに柔軟性を持たせることができます。

この場合の注意点は、RED ONEで撮影した時のタイムコードを確実にハンドリングしてメディアに引き渡すことです。RED ONEでのタイムコードは、TOD、EdgeCode(EC)、そしてCameraタイムコードを選択できます。タイムコードの種類としてはTODとECだけなのですが、撮影時にRED ONEがどちらのタイムコードを表示していたかを記録するcameraタイムコードも、アプリケーションによってはサポートしています。オフラインメディアを作成した時点で、このタイムコードをFCPのメニューから確実に把握しておくことが、このワークフローでの肝になります。さらにREEL名はR3Dのファイル名に準じて16桁になっていることも確認します。場合によっては前半の4桁だけに切り取られる場合もあるので、この点も合わせて確認します。

準備が完了したら通常通りFCPでは編集が進められます。編集結果はEDLでDaVinci Resolveに引き渡すので、ビデオレイヤーは単一にしておくことになります。お勧めは、Resolve向けのシーケンスを別途コピーして、そこでレイヤー構成を整理しましょう。無駄なマッチカット編集点や、無効になっているセグメントはこの中から外しておくことで、余計なクリップをResolveに持ち込ませなくできます。EDLの書き出しでのポイントは、フォーマットをCMX3600形式、Reel conflictsを「Generic Edits」、EDL Notesを「File Name」、そしてオーディオの選択を外しておくことです。EDLの中のREEL名は短縮されたものになりますが、コメント欄で正式なアンダーバーを含む16桁の名前を引用するようになっています。

Avid Media Composer5での事前準備

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MC5ではR3Dのサポートを積極的に進めているので、QTリファレンスファイルがなくても、オフラインメディアを事前準備していなくても、すぐに編集に取り掛かれます。AMA機能がそれを強力にサポートしてくれるのですが、これは至って簡単に使えるので撮影現場でのオフライン編集で実力が発揮できるでしょう。ただし、編集後のコンソリデートで機能制限があるので、これまでのMXFファイルベースの使い勝手と異なるところがあります。

MC5での編集もFCPと同様にEDLでResolveに移行するので、ビデオトラックの整理はきちんと済ませておきます。REDのEDLを作成するためには、事前にAvidサイトから16Char EDL Templateを入手して、インストールしておきます。この拡張がなければ、EDL内にRED ONEの16桁のREEL名を埋め込めません。EDL作成はこのRED16を使うようにすれば、特に設定変更は必要ありません。Dupe Listもnoneになっているはずですが、念のため確認しておいてください。オーディオトラックはここでも外しておきます。

DaVinci Resolve側の対応

プロジェクトの作成後、CONFIGメニューのPROJECTから重要な設定があります。Timeline Conform Optionsの「Assist using reel numbers from the:」から「Embedding in source clip file」を選択します。これにより、素材のR3Dファイルに埋め込まれているREEL名が参照されることになり、その結果EDLとの整合性がとれます。今回はこの設定で問題ないのですが、Resolveの柔軟な点は、ファイルパスからREEL名を切り出したり、Media Poolのフォルダ名からREEL名を取り出せる点です。

ワークフローが複雑になってグレーディングの時点で素材の整合性を取ることになった場合には、知っておいて損はない機能です。さらにSOURCEタブからREDの設定をします。EDL連携で重要なのはタイムコードの選択です。編集環境に合わせたTimecodeをメニューから確認します。これで準備は完了です。

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BROWSEメニューに移り、Media PoolにR3Dファイルをすべて取り込んでおきます。その後CONFORMメニューで、EDLを読み込みます。タイムコードとREEL名を参照できていれば、クリップのコンフリクトは起こらないはずですが、Cマークが出ていれば右クリックをして、クリップを的確に選択し直します。これでResolveでのグレーディングに取り掛かれます。

DaVinci Resolveでのレンダリングは、次にどんな環境にメディアファイルを渡すのかによって、Output Typeをチョイスすることになります。DPX RGB 10bit、QuickTime非圧縮(UC YUV 10bit)、無圧縮(UC RGB 8bit)、ProRes形式あたりがよく使われる形式でしょう。Rendering Modeは、SourceとTargetを選択できます。Resolveのタイムラインを1つのメディアファイルのかたまりに書き出すにはTargetを、カットごとに分ける時にはSourceを指定します。オリジナルファイル名を利用する時には、「Use Prefix, Suffix, No. of Digits from Source」にチェックを入れておきます。レンダリング実行時にはグラフィックス機能がフル稼働しますので、Macの中で他のタスクを並行しないことが無難でしょう。

今回の例ではRED ONEの素材を使いました。他のEOSムービーやAlexa、ビデオカメラなど素材は多種多様で、この先さらに選択肢は増えて行くことでしょう。DaVinci Resolveでのワークフローのコツは、タイムコードとREEL名です。この2点を外さすに正確にコントロールできれば、編集結果を正確にResolveのタイムラインに持ってくることが可能です。この点を理解していただければ、他の事例にも応用可能です。

最後に

私はこんな連載を書かせていただいていますが、カラーリストではありません。この時点でこんな私の立場を明かすのは反則な気もしますが、元エディター出身者の私でも十分DaVinci Resolveは使えるツールであることを知っていただきたかったのです。MacにDaVinciが来るまでは、おそらく大半の方はとても取っ付きにくい道具であるとイメージしていたのではないでしょうか。専門のカラーリストでしか使いこなすことのできない、特別なツールであると。もちろんカラーリストは専門の技術を持っていて、エキスパートならではのノウハウを持っていることでしょう。映像編集がFinal Cut Proなどのおかげでコモディティ化したように、カラーコレクションツールであっても、もっともっと気軽に使えるようなツールになるべきであると考えます。

六回にわたりDaVinci Resolveを気軽に使いこなすことをテーマに、現場ですぐに使えるようにロケットスタートできることを目標にして、具体的で必要不可欠な点に絞って解説を進めてきました。ここで解説できなかった機能はまだたくさんあるのですが、そんな重箱の隅は使うユーザーそれぞれに任されているといえます。この先は「路上に出て」ご自分のフィールドで、各自のDaVinci Resolveにしていただけると幸いです。

WRITER PROFILE

山本久之

山本久之

テクニカルディレクター。ポストプロダクション技術を中心に、ワークフロー全体の映像技術をカバー。大学での授業など、若手への啓蒙に注力している。