小さな巨人が2機種

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キヤノンの最近の進撃は中々目を見張る物がある。昨年6月に登場したXF305はハンディスタイルながらMXF 4:2:2 50Mbps と言う完全にワンランク上のフォーマットを奢ってきた。当初はそのフォーマットの特性からキー抜きをメインにおいた制作系の現場に使用されるとメーカーサイドは思っていた様だが、筆者を始め現場サイドの人間から見れば明らかに報道系に使えるカメラと考えていた。結局その考え方は国内よりも海外でのNewsネットワークで評価されいち早く現場でその姿を確認することが出来たくらいだ。

名器XL-2からHDV機であるXL H1に移行したときにその画質にキヤノンファンならずともがっかりし、それから暫くは残念な時代を静観していた。しかしXFシリーズの始動によりようやく選択肢に入るカメラが登場した。そのXF305からわずか3ヶ月で小型ハンディタイプのXF105の発表、更に今年の1月CESでのDカメの決定版とも言えるXA10の発表とCanon Xシリーズの怒濤の巻き返しが発動した。

何が共通で何が違うか?

XFシリーズの大きな特徴として、まずは絶対的な高画質レンズの優位性だろう。レンズメーカーのカメラだから当たり前でも在るが前記したとおり残念な時期があった分だけXF305のレンズは良かった。ではXF105はどうなのか?正直XF105に関してはCMOSも単純にXF305から1枚だけを抜き取った様な物でしかも1/3inchと言うことで期待はしていなかったが、実際に使ってみるとこれが又良い方向で裏切られている。もの凄く良い感じだ。

しかし単純な疑問としてXF305が3枚の撮像板を使って4:2:2を作り出しているのにXF105は1枚でそこまでの解像度が出せるのか?と言う事。そしてこの疑問はもの凄く単純な回答で終わった。

つまりはXF305の撮像板はスペック以上のオーバースペックで成り立っているという回答をメーカー技術者より頂いた。全く問題ないと言うことでその画質も納得できる。XA10はその筐体の小ささから別設計の様に思えるがレンズから撮像板・画像エンジンまで共通で違いはフォーマットのみとなるとこの画質も不安はない。

もちろん音声は業務機として標準であるキャノン入力を使用していてその部分でも不安はない。また収録フォーマットこそ違うがXA10・XF105共にミラーリングでの収録を可能とした。残念ながら片方だけフリーランで走ると言う事は出来ないが同時期録はファイルベースのもしかしたら?の不安を消すのに十分な機能である。余談だがレンズ周りが共通と言うことでそのレンズキャップも全く同じ物が使われていた。

ディレクターカメラ or サブカメラ

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さてこの2台の棲み分けだが、XF105が登場したときはこぞってDカメと言っていたが、それは絶対的に間違いだとコメントしてきた!その理由として小型とはいえやはり若干大きい筐体と共に調整項目が多くフルオートで使うのには勿体ない!と言うのが素直な感想だ。Dカメと言えば、未だに使われてる名機としてHVR-A1Jが上げられるが、あれはやはりあの微妙な大きさがどんな人の手にも馴染むというのが大きな要因の一つだと思っている。

そうなるとXF105はやはり大きい。Dカメ決定版とは言えなかったのだがそこにXA10の登場。その大きさや民生機ベースを業務機にしたバックボーンと言い当にA1Jの登場と同じ、つまりはようやく新世代のDカメの登場と言って良いだろう。簡単に要約すると

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このような感じである。つまりXA10はディレクターやADがロケハンやちょっとしたアイディアを撮ると言うメモ書き的なカメラ、XF105は4:2:2収録や細かいプロファイル調整も踏まえたカメラマンがサブで使うカメラであると言える(因みにやはりこの手のカメラはガンマイクは見た目的にも必須だと思う)。

使えるこの機能!

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まずは望遠域での手ぶれ補正にその威力を発揮するパワードIS。元々は望遠鏡の技術を応用した物と聞いているがその効果は大きい。今回冒頭で紹介したサンプル映像は、日程の関係で、若干不適切な強風下に行ったのだが、その際に遠景撮影にこの機能はもの凄く、効きが良い。もちろん他の手ぶれ補正モードも基準以上!手ぶれ補正はSONY民生機の称号もそろそろ考え時か?

次にHDカメラになってから一番の問題となるピン合わせ。物理的にHD解像度を持たないLCDパネルでしっかりとピンを抜くのは至難の業だ。それを補うために各社フォーカスアシストは工夫を凝らしている。XA10・XF105もエッジ部分を強調したりMgnで部分拡大をさせたりしているが一番面白いのはエッジモニター。これはピンが来てるかをグラフ表示で表す物でかなり精度が高い。そしてXF305同様に波形モニターも装備している。この波形モニターは簡易型ではあるが現場ではかなり役立つ。また経験の浅いカメラマンならこの機能で色々なことを学べるはずだ。

他機種との比較、ハンドリング

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このXシリーズ2機種とガチで比較されるとすればXF105=GY-HM100、XA10=HVR-A1Jと言うことになる。前者は両方共にDカメというよりはENGでのサブカメラとして十分に機能する物であり、後者はまさしくその小さい筐体からDカメとしての使用だろう。XF105とHM100での比較だとその大きさは殆ど同じ、重量・質量にしても数グラムの違いしかない。

しかしそのフォーマットは50Mbps /4:2:2と35Mbps/4:2:0の違いがある。画質だけ見るとXF105の圧勝だがHM100はFCPで直接扱えるmov収録が出来る。決定的な画質を選ぶか、ワークフローの簡略化を選ぶかは自分の環境次第だろう。方やDカメ同士では25Mbps /HDVと24Mbps/AVCHDの違い。フォーマット自体での破綻具合という意味では両者とも大して変わらない。しかしテープベースかファイルベースかの違いはこれも各々の環境によると思うが、クロッグで10フレーム前後持って行かれるHDVより完全ファイルベースの方が安心は出来る。

ここが残念!

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今まで良いところばかりをピックアップしたがそれだけ、魅力のあるラインナップなのだが、チョットだけ残念なところもある。まずは音声入力。今回のような強風下では急激な過大入力時のリミッターの掛かり方が大きすぎて若干違和感を覚える。次にベースとなるトーンが所謂Canon色の為に他のカメラ群(例:EX等)に混ぜて使用すると後で補正が必要になる。この辺はHM100は素直な色特性で在ると言える。

もう一つはやはりワイド端の少なさ。約30mmなのでそんなに使い難い訳ではないが、やはりレンズメーカーのカメラと言う部分に期待して28mmは欲しかった。最もワイドを主張する余り歪みが酷いカメラもあるのでその意味では評価は出来る。

自分が買うならどっち?

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これはもう決まっている、絶対にXF105だ。理由はやはり現場のサブカメラとして十分以上に機能すると言うこと。画質と言うより収録コーデックの違いでやはり両者は同じ画質は言えない。どうせ素材として考えるなら少しでも良い方を選ぶのが自然の流れだ。

しかしお勧めはどっち?と聞かれたらXA10を押す。理由はその大きさとコストパフォーマンスの高さ以上の画質の良さだ。ハンドル部分が分解できてコンパクトな形で使用できるのもXA10の特徴だ。このハンドルを外して(ステルスモード)で収録できるというのは現場によっては大きなファクターとなるはず。

最後に、両機とも収録メディアには手に入れやすいCFとSDカードを使用しているが、ここで一つ注意して貰いたい。最近安いメディアを使っても大丈夫だと言う風潮が若干流れている。無印32GBで4,000円?それは結構、しかしそれはプライベートで使うべき物で業務収録でそんな得体の知れない物を使うと言うのは止めた方が良い。クラス10と言いつつ中身はクラス4なんて言うのもざらにある。そんな遅くて転送速度が間に合うはず無いだろ!?と言う方はもう少しファイルベースを勉強すべきでその転送速度がどれくらいかはビットレートを基準に計算できる。テープベースの時代でも収録には新品テープを必ず使っていた事を思い出して欲しい。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。