2012年8月末に発売されたものの、まだまだ限定出荷のBlackmagic Cinema Camera(BMCC)。今回は、本格出荷開始前に、その周辺機器について書き記してみようと思う。ちなみにこのコーナーの定番で、ここでご紹介する機材は基本的に著者の自腹である。

シンプルなBMCC

Blackmagic Cinema Cameraの特徴は、とにかく安価なシネカメラ、というところである。シネカメラとは、本来フィルムによる映画向けカメラのことを指すが、デジタル時代においては、1フレームごとばらばらの連番ファイルでの収録を行うカメラのことを指すと思っていればほぼ間違いない。映画とは活動写真であり、その本質は時系列に連続した静止画なのだ。それに対してビデオカメラとは動きを捉えることをメインにしているカメラで、デジタル時代においては動画ファイルを収録するものだ。動画ファイルとは事なり、連番ファイルシーケンスでは1フレーム内に音以外の全ての要素が完結しているため、合成やカラーグレーディングをおこなっても画質があまり低下せず、また、マスクも切りやすく、非常に優れた可変性を維持している。特にRAWやLogガンマなどのHDR機能を持ったファイルでは、後処理の余地が非常に大きい。これが、映画のフィルムと全く同じ構造なので、これらを指してデジタルフィルム、と呼ぶ。

なお、余談だが、映画向けのカメラは日本の現場ではキャメラと呼ばれることが多く、これはキネ・カメラの略だ。本稿ではビデオ系の読者が多いと思われるために一般的でないキャメラという言葉は使わず、シネカメラというデジタル用語の方を用いさせて頂く。

さて。前後のフレームを使って圧縮の出来るビデオカメラとは事なり、1フレーム内に全てのデータが完結しなければいけないシネカメラはどうしても高価になりがちなのだが、BMCCはそれを258,000円という驚異的な低価格に抑えたのが特徴だ。しかし、その犠牲は小さくは無い。最低限撮影に必要なもの以外はありとあらゆる機能を削ってあり、カメラ単独で撮影に挑むのはかなり無理がある。あくまでもBMCCはコアパーツであり、それに様々な周辺機器を組み合わせて各人の必要なワークフローに合わせて行くのが正しい姿なのだ。しかし、昔の16mmフィルムカメラなどはまさに同じような最低限の機能しかもっていないのが普通であったから全く問題ないだろう。BMCCは、現代版の16mmフィルムカメラとでも言うべき存在なのだ。

基本周辺機器

以前の記事にも書いたが、BMCCを最低限撮影可能状態にするための基本周辺機器は下記のものを使っている。

必需品
  • SSD Kingston 240GB SSDNow V+200 (SVP200S3/240G)
  • 長時間撮影用SSD Sandisk Extreme 480GB (SDSSDX-480G-G25)
  • SSD処理用 Apple Mac Book Pro Retina 15インチ
  • 標準レンズ SIGMA 10-20mm F3.5 EX DC HSM
  • 望遠レンズ SIGMA 24-70mm F2.8 IF EX DG HSM
  • 外部マイク オーディオテクニカ AT9940
  • マスターヘッドフォン YAMAHA RH5MA

SSDは、240GBのものは収録しっぱなしの保存兼用の使い捨てメディアとして日々買い足し、高価な480GBのものは2枚だけ購入し、中身をコピーしては消去して使っている。収録時には、240GBのSSDに対して、RAWで25分程度の撮影が可能だ。コピー時間は、USB3.0の最速環境でも240GBで40分、480GBで約1時間半。バックアップを考えれば日々この2倍の時間がかかると言うことになる。

コスト的な理想を言えば日々SSDはコピーして空にして次の撮影に流用して行くのが良いのだが、実収録時間の2倍というこの長大なコピー時間を考えると手間や人件費的には現実的では無い。特に240GBの方はコピーは中身のチェックも兼ねて作業RAIDへのバックアップコピーのみ1回行い、SSDのデータはそのまま保管してマスターディスクとして運用するしか無いだろう。なお、SSDはカメラ本体でフォーマットすることが出来ない。事前にMacでフォーマットする必要がある。Windowsユーザーは、Macフォーマットをする為のソフトを別途導入する必要があるから要注意。

レンズは、私はコストを考えてSIGMAのものを使っている。まあ、私がLeicaファンで、Leicaのレンズを一手に引き受けているといわれるSIGMAの味付けが好みだというのも大きい。注意点は、BMCCの公称2.3倍、実質2.4倍のフルサイズ比焦点倍率で、相当に望遠寄りになってしまう点だ。10-20mmの超広角ズームでも24-48mm程度相当の標準レンズに、24-70mmの広角ズームが62-168mm程度相当の望遠レンズに化けるので気をつけたい。なお、単玉を複数取りそろえることは、このカメラのコンパクトだという最良の特徴を殺してしまうので、私は避けている。もちろんシネカメラでは光学ズームは基本的に使い道がないので、ズームレンズを焦点距離固定で使う形だ。現状で48mm相当と62mm相当の間が切れてしまっているが、前述の通りの単玉感覚で使うため、あまり気にせずに使っている。

また、マイクに関してだが、BMCCの内蔵マイクはなぜかレンズの下という確実に手が当たる場所に着いているので使い物にならない。アフレコ用の当て音収録と割りきってくれということなのだと思うが、同録をカメラ本体でする場合、必ず外部マイクは必要だ。

とりあえず上記のものだけでも撮影できるが、その撮影時間は1時間を切るし、屋外にも出られない。やはり、ここは外部バッテリーとNDフィルタも必需品に加えるべきだろう。

準必需品
  • 外部バッテリー NEP BL-F1170M x2
  • バッテリー連結昇圧機 NEP ブラックマジックシネマカメラ対応プレート
  • NDフィルタ Kenko ND8

上記の中で唯一、NEPのバッテリー連結昇圧プレートは市販品では無く特注品になってしまうが、これは私がこのプレートを注文したSYSTEM5で定番品としての取り扱いがあるので「手塚がBMCCで使っているのと同じもの」といって注文すれば非常にスムーズだろう。上記のBL-F1170M2連発で、大体5時間弱程度の撮影が可能になる。公表されてはいないが、実測から計算すると、BMCCの消費電力は大体30Wというところなのだろう。NDは、定番のND8がとりあえずは必須だ。私は、写真用の薄手のNDを厚紙で挟んで10センチ角フィルタにして使っている。

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基本周辺機器を現場で組み上げて行くところ。今のところ、動作チェックも兼ねて大体10分程度。シンプルだ。SSDがカメラ本体でフォーマットできないので要注意

RIGはCageを使って2本ネジで固定を!

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Zacuto Stingerセットを中心にして、それだけではトップハンドルを掴んだときにネジが抜けるため、View Factor Cageでねじ穴を増やして2本ネジで固定している

BMCCを実際に購入して、まず戸惑うのが「一体どこを掴めば良いの?」という点だろう。

実際のところ、BMCCは全く取っ手やハンドル、グリップの類が付いて居らず、非常に持ちにくい。あくまでもBMCC本体は収録のためのメインユニットであって、これ単体での撮影利便性はあまり考慮していないとしか思えないのだ。そのため、RIG、特にトップハンドルと呼ばれるカメラ上部のハンドルRIGは必須となる。

また、機構上の問題点として、一眼レフ機を真似た1/4インチネジ+ローテートピンというカメラ止めねじを用いているのだが、これがBMCCの重量に負けてしまって緩みやすく、ショルダースタイルの撮影においては撮影中に簡単にがたつくという事態に容易に陥る。特に、定番のZacuto Stingerはトップハンドルをカメラ上部に付ける構造のため、トップハンドルをつかんだときにカメラ下のRIG全重量が1/4ネジ1本にかかるという状態になってしまう。これは大変不安だ。そこで、私は下記のようなセットで運用をしている。View Factor Cageを付けた上からZacuto Stingerを付けることで、ネジの本数を増やしているのだ。

  • Zacuto Stinger
  • View Factor Cage
BMCCの底面ネジは1本しかない。もう一つの穴はローテートピンだ。そのため、ケージなどの手段で固定ネジを増やす手法を考えた方がいい

また、Zacuto Strikerも軽量で大変便利なRIGだが、これはローテートピンも付いていない1/4ネジ1本のみでのカメラ固定のため、BMCCをそのまま付けるのは正直言って危険だ。レンズ重量の為にネジ位置が重量センターになっていないBMCCは、ちょっとカメラを振っただけで、テコの原理で簡単に回転してしまう。しかしこれも、Cageを用いて2本ネジで留めることで非常に便利に使う事が出来た。

また、View Factor Cageは単独でもRIGとして機能する。Cageの両側はサイドハンドルの代わりにも使えるため、とりあえず一つRIGが欲しいと言う場合には、これを付けておけば最低限事は足りる(RIG全体をぶら下げるのはしんどいので、その場合には別途トップハンドルを買った方がいいだろう)。

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使っている三脚は今回Manfrottoだが、クイックシューはAP-5のゲタでLibecに変換してある。そのため、現場で容易にRIGを抜いたり付け替えたりが出来る

更に弊社ではLibecのクイックシューを共用で使っているため、全てのRIGや三脚にAP-5アダプタープレートとクイックシューが2本ネジで装着されている。これによって、素早い運用が可能となっている。

  • Libec AP-5
  • Manfrotto 504HD
  • VARAVON Slidecam lite
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Slidecam liteは、BMCC本体だけに搭載物を絞り込めば、三脚と一脚の組み合わせによる運用も出来る。軽くて丈夫なスライダだ。三脚と共に持ち歩きたい

VARAVON Slidecam liteも今回買いそろえた中では便利な機材であった。値段の割にはスムーズな移動が出来、何よりもちゃんとボールベアリング装備のため、BMCCのような重いカメラであっても全く問題なくスライドすることが出来た。実は安いレールだとBMCCの重さに負けて滑らなくなってしまうものが多いのだったが、このSlidecam liteは難なくBMCCを運用できた。

なによりも、レール自体が軽いため、簡易な三脚と一脚の組み合わせなどでも運用が出来、設置が楽なのが魅力だ。しかも、格安で買える。

BMCCのようなシネマカメラでは、画角が大きく変わるパンやズームは破綻を起しやすい。そのため、こうしたレールは必需品と言える。もちろん本格的なレールがあるに越したことはないのだが、そう贅沢を言っていられる現場ばかりでもないだろう。Slidecam liteは、とりあえず一本持って置いて、三脚と一緒に持ち歩いておけば安心な機材だと言えるのではないか。

特筆すべきはCineroid EVF4 RVW with Retina

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Cineroid EVF4 RVW with Retina。一見普通のEVFだが、なんとRetina。しかもHD-SDIとHDMIの2系統入力対応だ

今回、最大の掘り出し物周辺機器は、これもまたSYSTEM5で買ったCineroid EVF4 RVW with Retinaだろう。実はBMCCは屋外でモニタが見にくく、ピント合わせに苦労していた。また、現状のファームウェアではまだウェーブレットモニタが付いて居らず、MacBook Proを組み込んでThunderbolt経由でのUltraScope利用を行うしか波形モニタを見る方法がなかった。かといって現状のThunderboltの短いケーブル範囲内で撮影システムにMacBook Proを組み込むのはかなりの無理がある。しかし、RAWやLogガンマ収録においては、現場の色合わせもさることながら、何よりも、なるべく多くの色数を幅広く収録することが肝要となる。それを考えると、適切な波形モニタがないというのは収録時には致命的であったのだ。

しかし、このCineroid EVF4 RVWは、Retina解像度(960×640ピクセル、1677万色)のEVFで非常にピント合わせが楽なのだ。オマケにボタン一つで波形モードに突入でき、しかもその波形表示中も左上に撮影画面が出てくるため、そこでのピント合わせも出来る。Retinaの膨大な解像度なので、左上部分だけの面積でも、今までのEVFと同じくらいの感覚でピント合わせが可能なのだ。

左サイドのファンクションボタンは大変に便利で、それぞれ、ピーキング、ピクセル等倍、波形モニタ、そして色飛び警告をトグルで表示することが出来る。BMCCのフォーカスアシストはエッジ強調でしかなく、ピーキングは正直貧弱だ。そのため、ピクセル等倍モードでのピント合わせや、ピーキングアシストが別途あるのは、正直大変に助かる。

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Retina解像度のため、波形モニタを出しながらでも充分にピントが合わせられる。波形範囲内に絵を納める必要のあるRAWやLogガンマ撮影では必須と言える

HDR収録機独特の問題として、Videoカラーと収録カラーの色の違いがあるが、このEVFを使えば、本体モニタでVideoカラーを表示して大体の色を予測しつつ、EVFでは収録デジタルフィルムデータ本来のフラットな収録色を見るということも出来る。これによってより安全確実に、多くの色データをデジタルフィルムの調整範囲内に納めることが出来るだろう。

また、BMCCの周辺機器を想定した本稿では余談となってしまうが、実はこのCineroid EVF4 RVWは、HD-SDIだけでなくHDMI入力も可能となっているのも魅力だ。つまり、GH2などのDSLR機にも使えるのである。DSLR機では本体モニタが写真用で動画用途としては貧弱である事が多いのだが、このEVFを使えば実際の収録状況そのままに見ることが出来るので、よりスムーズな撮影が出来るのは間違いない。

このEVFの駆動は各社バッテリー駆動だが、なんと、ほぼ全てのカメラバッテリー対応の変換プレートが初めからセットに入っているのも魅力だ。つまり、どんなカメラを使っていても、その場にある余ったバッテリーを突っ込めば動くのだ。もちろん、12Vのタップ分岐ケーブルも入っていて、Vマウントや大型バッテリーからの給電も出来る。正直今まではEVFなどは現場でカメラを振り回す必要のあるENGカメラマンだけが使うものと思っていたが、これは手放せない一台になりそうだ。

オタク社長的必需品f-stop Satori EXP

f-stop Satori EXPは、一見するとただの山岳ザックなのだが……

周辺機器とは少し違うが、私にとってのBMCC必需品と言えるアイテムがf-stop Satori EXPだ。これは、一見するとただの山岳ザックなのだが、実は初めからカメラバッグとして設計されている優れたバッグだ。このバッグをPhotokinaで見つけたときには、本当に驚いた。

BMCCの最大の特徴は、そのシンプルさ故の携帯性の高さにある。私は、BMCCを、16mmフィルムカメラ以来の本格的旅カメラ、山岳シネカメラが再登場したのでは無いかと思っているのだ。実際、世界を回りつついくつか映像を撮ってみたが、このカメラの旅カメラとしての魅力の高さは素晴らしい。映画館上映可能なレベルの美麗な映像で世界の風景を残せるのは、単に資料映像のストックを増やすという旅カメラ本来の業務目的だけでなく、旅行物の収録や高地での映像制作などにも力を発揮するだろう。

そうなると重要なのが、実は、カメラバッグである。読者諸賢はご存じの通り、カメラバッグ定番のアルミケースは寒さと水分に弱く、しかも大きいため旅カメラには適さない。かといって、ビデオカメラで定番化したボストンバッグ型の布バッグでは衝撃にも水にも弱く、大変に持ちにくい。では、と山岳ザックに詰めると、今度は超薄手の生地で作られた一般的な山岳ザックでは水分こそ防げるものの、衝撃がもろに内部に伝わり、カメラバッグとしての機能は全く果たせない。私はそのためグローブトロッターのヴァルカンファイバー紙製のスーツケースにインナークッションを詰め込むスタイルを好んで用いていたのだが、これはこれで傷が付きやすく、また防水性もゼロ…というかバッグまで紙のためむしろマイナスで、野山には全く適さないデザインだ。南極でのスコット隊の全滅原因の一つが、グローブトロッターのバッグが水分を含んで凍結し、もろくも崩れ去ってしまったことだというのはあまりにも有名だ。ちなみに私が用いているグローブトロッターは、このスコット隊をモチーフにしたもので、なんと現代の英軍が実際の南極探検に用いるほどの防水耐凍結になっているが、まあ、これはあまり一般的に入手できるようなものでも無い。

しかし、世の中には頭の良い人がいるものだ。超軽量の高性能山岳バッグに、クッション素材のインナーバッグを組み合わせてデザインすることで、山岳バッグの機能とカメラバッグの機能を両立させたバッグを作り出したのだ。それがこのf-stop社のカメラバッグシリーズである。

アウターバッグは「生活防水」とされているが、軽量なDWR ナイロン330 デニール ダブルリップストップ ナイロンで出来ており、その防水ポリウレタンコーティングは1500mmの圧力に耐える。ジッパーもYKK製の防水ジッパーを使っている。軽い雨くらいなら中のカメラが濡れることはないだろう。もちろん、本格的な降雨には、レインカバーも別売りしてあるのでそれを使うといいだろう。個人の私物は上部と背面に入れるようになっていて、メインコンパートメントにはICUと呼ばれるカメラインナーバッグを入れる仕組みだ。このインナーバッグが便利で、蓋を開いたまま装着する仕組みのため、ICU内部には背中部分のジッパーを開ければ直接アクセスできるのだ。

中身は完璧なカメラバッグだ。しかも分離式でインナーのICUだけでカメラ保管も出来る

しかも、ICUは、カメラを交換したいときにはそのまま抜き去って蓋を閉めることが出来る。つまり、カメラごとにICUを買って置けばICU単位でのカメラ管理が出来るわけで、これは通常のカメラ管理ワークフローに合致している。しかも、アウターバッグを変えれば全く別のシチュエーションでも同じICUのセットで運用できる。これは非常にスマートだ。

カメラバッグというのはカメラを買ったときから故障して廃棄するときまで同じものを使って管理するのが普通であり、必須付属機材も同じカメラバッグに収めて運用するワークフローを組んでいるところがほとんどだろう。なのに、今までのこうした旅用の特殊カメラバッグはいちいちカメラを持ち変える度に全荷物の詰め替えを要求していた。それは困難であるばかりか、必要なパーツを無くしたり忘れたりする可能性を孕む危険な行為であった。しかし、この分離式であれば、カメラはその一生を終えるまで同じインナーバッグのままで過ごすことが出来る。しかも、ICUはジッパーで底面が構成されていて、例えばSmallサイズを2つ、つなぎ合わせて運用するようなことも出来る。

もちろん、ICUは別売りをしており、最初からカメラに合わせた様々な組み合わせで導入することが出来る。なんと、RED EPICでの山岳運用実績もあるというから驚きだ。

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インナーバッグのICUだけ取り出してカメラを保管すれば、様々なシチュエーションに合わせてカメラをセット単位で素早く入れ替えられる

実際に使ってみると、まず、バッグとしての性能の高さに驚く。アウトドア好きなら触ればわかるような本物の山岳ザックで、ちゃんと腰から上へと締め上げると重量が分散して、全く荷物の重さを感じなくなる。しかも、バックルを緩めて地面に下ろせば、ちゃんと上を向いた背中側からカメラの出し入れが出来る。街の人が脳内イメージだけで作ったアウトドアカメラバッグは、ここでひっくり返す必要があるものがほとんどだ。しかし、重いカメラの入ったザックをを危険な坂でひっくり返すのは、最もやりたくない行為の一つだろう。ザックを下ろした状態そのままでカメラの出し入れが出来ると言うのは、非常に便利であった。

1日中背負って運用していたが、気になる背中の汗も上手に湿気を逃しているようで、中には一切侵入していなかった。もちろんクッション性能は完璧で、1日やそこらでへたるようなことはない。今はまだシーズンには早いが、ザックの両側にはスキーキャリアも用意されていて、これは三脚の運搬にも使えるだろう。さらに、このSATORI EXPアウターバッグには軽量な骨組みも入っていて、ちょっとした衝撃ならば中身を守ってくれる。他にもf-stopでは、完全防水のバッグや街用のメッセンジャーバッグなども用意されているようだ。

とにかく徹底的にカメラを旅行で使うために考え抜かれた、至れり尽くせりのカメラバッグなのだ。f-stopのバッグは全て45日間全返金保証、20年性能保証だそうだ。布製のバッグでこの保証というのは、それだけ性能に自信がある証拠だろう。このSATORI EXPを使って、山だけでなく、様々な旅行に、BMCCと周辺機器を楽しく持って行こうと思う。

各周辺機器連絡先

撮影協力:アイラ・ラボラトリ 橋本修平、板井義隆

WRITER PROFILE

手塚一佳

手塚一佳

デジタル映像集団アイラ・ラボラトリ代表取締役社長。CGや映像合成と、何故か鍛造刃物、釣具、漆工芸が専門。芸術博士課程。