ビデオグラファーの求めるカメラへ

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VG30(左)とVG900(右)を真横から見るとレンズ以外はほぼ同じ大きさと筐体デザイン!

SONYのNEX-VGシリーズも既に3年目に入った。初代のVG10はSONYにしては思い切ったカメラというのが印象だったが、なかなか支持が得られなかったことも事実だ。使いづらいと評判だったVG10を使いやすくカスタマイズする作例をネット上でも見かけることもあり、このカスタマイズVG10が実際に商品化されないのか?とユーザーは思った物であった。

もちろんそれを受けて、コンデジをビデオカメラ風に仕立てたVG10から大きく進化したVG20が販売された。特に画質に関しては30p to 60iと言う変則的な機能を実装していたために、評価はコンシューマー機と言うよりもプロシューマー機の領域まで食い込んできた。その派生としてFSシリーズで確実にプロ機としての位置付けをしたNEXシリーズは、ハイスピードや4K(センサー)まで搭載する様になった。そして今秋には大判センサー+ENGと言う新しいカメラであるEA50を発売、NEXシリーズは当初と大きく違う方向に進むのかと思いきや、しっかりとVGシリーズ当初のコンセプトを受け継いだモデルも冬前に順次発表された。それがVG30とVG900だ。特にNEX-VG30は純正16mm+0.7倍ワイコンが面白いのだ!

NEX-VG30はVG10からの正常進化か?

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あえてNEX-VG10からの比較にしたのは、外見こそ殆ど代わらない筐体デザインなのだが中身は完全に代わってしまっていると言うこと。とは言えVG20からの大きな違いはパワーズームの有無とそれをコントロールするズームレバー位だろう。センサー自体はVG20とは変わらずAPS-C規格の素子を利用している。FS100や700等に使われているスーパー35mm規格のサイズを使わなかったのは、あくまでもコンシューマー機としての位置付けと言う事だろう。このパワーズームレンズは元々VG20等に付属してした18-200mmのズームレンズに小型モーターを組み込んでパワーズームした物だ。

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ビデオ用レンズと違って元々スチール用のレンズをベースにしてあるのでその動きはデジカメであるNEX-5等のズームに比べるとかなり遅い。しかもインナーレンズではない為に三脚等で使う場合はワイドとテレ端でバランスが随分狂うのでそれは頭に入れておきたい。もちろん、遅いとは言えENGのニュース現場でもない限り遅すぎて使えないと言うことは無い。

ズーム操作はボディ本体に付いたズームレバーの他に、レンズ単体にもズームレバーが付いているので、 VG10/20やFSシリーズは元よりNEX-5Nや7にも取り付けは可能だ。VG20との外見上の違いとして、ズームレバーの他にも拡大フォーカスボタンがグリップ部分に付いており、大判特有の厳しいピンに対してのアシストとして活用できる。後は細かい部分ではあるが、底面の三脚取り付け用1/4ネジ部分に補強が入り強度が上がっている。

NEX-VG20からの超進化、大人のNEX-VG900!

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VG30とVG900のセンサー廻りの違い。特に開口部一杯のVG900のセンサーに注目

VGシリーズは元々EマウントのAPS-C、及びスーパー35mmセンサーをベースに作られている。APS-CとS-35mmは横方向は殆ど同じで縦方向が若干S-35mmの方が小さい。つまりはEOS 5D MarkIIIなどのフルサイズ35mmに比べるとかなり小さい。逆に言えば、シビアすぎるフルサイズ35mmのピン等を考慮すれば、APS-C(S-35mm)サイズ位の方が使い勝手が良い。しかし大口径レンズの表現力や、正確なレンズ画角を考えるとやはりしっかりとフルサイズ35mmも使ってみたいが、残念ながらEOS等はセンサーの熱暴走もさることながら4GBの制限もあり数分間しか撮れない。

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他のVGシリーズとは違うVG900の設定ボタン類

しかしビデオである以上長尺の動画を撮りたいのは当たり前の事。それをSONYが形にしてしまったのがVG900だ。筐体はVGシリーズその物で、元々APS-Cが入っていたボディに無理矢理フルサイズ35mmを押し込んでいるためかマウント廻りが一廻り大きくなってしまっている。なお付属のAマウント変換を使う事によりαシリーズのレンズを使う事が出来るのは当たり前として、AFを含む全てのレンズコントロールにも対応する。

更にこのセンサーはEマウントレンズを付けると自動的にクロップしEマウントの画角に変わる、言わばハイブリッドセンサーと言えるかもしれない。しかもVG900はVG30と同じ様な筐体を使っているが、その使用感はVG30よりもかなりビデオに近くなり、アイリス・GAIN・シャッター等が独立のボタンで設定出来るようになった。勿論VG30と同じく電動ズームも使えるが、αレンズにパワーズームレンズはない。その代わりEA50と同じく最大2倍までの電子エクステンダーを装備しており、明るい単焦点レンズを2倍のズームレンズとしても使用出来る。

総評

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VARAVON製のSLIDECAM Lite / 800mm

NEX-VGシリーズの正常進化板のVG30と超進化(若しくは異常進化)版のVG900、各々似たような筐体ながらその性格は全く違うカメラだが、特にVG900の今後の方向性には非常に興味がある。VG30よりビデオとしての操作感は上だが、その代わりに35mmフルセンサーモードで使う場合のピントのシビアさはVG30とは比較にならない。動画撮影としてしっかり撮るにはフォーカスマンが必要かも?!さらにVG900はαレンズを付けるとバランスもかなりはちゃめちゃになる。なお、コンシューマー機扱いの割にはしっかりとキャノン入力端子を備えたアダプターもオプション扱いで用意されており、VG10の後に業務用機としてFS100が登場したように、このVG900も業務用として進化した35mmフルセンサーを積んだカメラを期待したい。

余談だが、この手の大判センサーカメラはパンニングするだけでもピントのボケが気になる。勿論前後方向含む上下左右に動かす場合、確実にトラッキングとして平行に動かないと、後でプレビューを見てガッカリするはずだ。最近では低価格でスライダー(スライドレール)が販売されているので、大判センサーカメラを所有している方は是非1セット機材車に持っているとかなり便利だ。

NEX-VG900

NEX-VG30

各々スライダーとの組み合わせ動画

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。