はたしてライブ配信にHD映像は必要なのか?

HD映像のライブ配信に私は懐疑的だ。2010年段階でも芸能人が出る業務系配信では知見のある技術スタッフのサポートを得て、HDによるライブ配信を行なっていた。しかしあの小さい視聴画面ならタレントものでなければアナログコンポジットの映像でも充分であると感じていた。ローランドからVR-3が出てからはその使い勝手のよさからライブ配信における必要十分な機材として各方面に勧めてきた。しかしここ半年で状況は変わってきたように思う。それはライブ配信で使った映像の再利用のニーズの高まりである。

配信はSDで収録はHDでというニーズの高まり

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ライブ配信はUstream/ニコ生/YouTubeLiveともにアーカイブがネット上に残せる。しかしライブ配信時の画質で保存されるためSDで配信したものはアーカイブもSD画質となる。しかしHDで配信するとビットレートの増加と共に視聴者のパソコン性能に大きな負担をかけることにもなりかねない。実際ネットブックなどのパソコンで見ている視聴者には1Mbps以上のビットレートで配信すると「絵がカクカクする」などの症状が出ることがある。ライブ配信はSDで、しかしそのアーカイブはHDで活用したい。そんなニーズが現場では生まれている。私は主にネットで映像を活用するクライアントワークが多いためYouTubeの1080や720で見せる前提のHD映像を扱えるライブ配信機材を欲していた。今回のセミナーではそうしたライブ配信の現場を数多く体験してきた筆者が講師をするカタチで進行した。

最初に話したのは高画質な映像をどう作るか?の前にライブ配信で注意すべきいくつかのポイントだった。構成台本通りに事故なく進行するのはもちろんのこと、リアルタイムに視聴者の反響が寄せられるライブ配信においてはスタッフがその反響をしっかり受け止めること、そして返答していくことが重要だ。視聴者はライブ配信の中の人(つまり主催サイド)が反響をきちんと確認しているか?ということに想像以上に敏感である。映像スタッフとは別に必ず視聴者の反応をウォッチしてそれを現場にフィードバックするスタッフを置くのが鉄則だ。人員的に専属でそのスタッフが置けない場合は配信を担当しているスタッフが兼任するのが一般的だ。

リアルタイムに反響があることを忘れてはいけない!

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次に重要なのが視聴者が見たい!と思う映像をいかに的確なタイミングで見せていくか?ということになる。ライブ配信もYouTubeなどのオンデマンドビデオもテレビなどに比べると格段に小さい画面で視聴することが多い。機能的に全画面拡大などは用意されているものの一般的なユーザーはデフォルトの画面サイズのまま見ることが多い。それらの画面サイズはiPhoneなどの液晶サイズ程度の3インチから4インチである。人物のトーク番組などではバストショットよりさらに寄ったサイズを使うことで表情のニュアンスを伝えることが出来る。また視聴者が指摘したポイントに対してラジオのナビゲーターのように演者が直接答えて行ったり、それが出来ない場合でもカメラワークで答えていったりすることも大切である。音や絵の不具合などを指摘してくれたユーザーにはその原因を説明したり丁重に対処する。いわばクレーム対策まで考えないといけないのがライブ配信のポイントだ。

HDMI入力に対応したスイッチャーの出現!来る信号を拒まないスイッチャーは貴重な存在!

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HDライブ配信の機材はここ数年で様々な新製品が出てきており、かつて数千万した放送機材でしか出来なかったことが個人でも可能になってきた。そもそもマルチカメラによるスイッチングを映像収録で日常的に使うようになってきたこと自体が革新的な出来事だ。ちょうど一眼レフの映像が大判センサーによるボケ足を生み安価な予算で映画レベルの映像を撮れるようになった状況と似ている。特に高価な業務用カメラにしか採用されていなかったHD-SDIではなく民生のビデオカメラについているHDMIを扱えるような機材が増えたことは歓迎すべき状況と言える。ただしHDMIはインテリジェントで繊細な仕組みなので思わぬ落とし穴があることも覚えておいたほうがいいだろう。

まずは5m以上の延長をどうするか?問題。これはHDMIがもともと4.5m程度のケーブルで使うことを前提にしているからである。しかしライブ配信の現場では広いホールの後ろに配信卓、カメラはそこから30m離れているなどの状況もザラである。そのため延長はHDMIを無線化したり光ケーブルに変換したりする必要が出てくる。HD-SDIならBNCケーブルで引き廻せばいいところをHDMIだと追加機材が必要になってくるのである。その他にも1080iを前提とすることが多いスイッチャーで1080pのパソコンやiPadなどの信号をどう入力するか?問題や、カメラやスイッチャーごとに違う映像のディレイをどこで吸収するか?問題などもある。

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このような問題にシームレスに対応できる機材にローランドのVシリーズスイッチャーがある。V-1600HD、V-800HD、V-40HDと展開するHDスイッチャーは「来る信号を拒まない」シリーズとしてイベント現場やライブ配信の現場で活躍している。特にV-40HDはHDMIとアナログRGB、コンポジットまで、フォーマットの混在に対応していながら、安価な価格設定とともに音声もエンベデッドできこれ1台でライブ配信から収録まで使えて便利である。音声に関してもオーディオデイレィ機能がついているのでリップシンクなども簡単に調整できる。特に現場でパソコンからのパワーポイントやキーノート、iPadの映像などを入れるときにマルチフォーマットのVシリーズは強みを発揮する。そもそもカメラ映像だけで構成されることの少ないイベント収録などにおいては重宝する。

デカイ配信機材とはおさらばできる魔法の小箱!

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そしてライブ配信といえばスイッチャーの先にコンバーターや巨大なデスクトップの配信パソコンなどが並んでいるイメージが強いがLiveShell PROを使えば手のひらサイズのボックスで高画質な配信が可能になる。LiveShell PROはHDMIで720pの映像を配信でき、画質やビットレートの調整、配信のスタート・ストップそしてタイトルや画像のインサートまでスマホ・タブレット・PCがあればすべてコントロールできるという配信専用機材だ。コントロールのデバイスは特に高スペックである必要もないので手持ちのものが使えるのもありがたい。また通常の配信ソフトなどでは配信をスタートさせたら以後そのビットレートを変更出来ないが、LiveShell PROでは状況に応じてそれを配信中にも可変できるという特徴がある。バッテリーでも稼働するので1カメならカメラのアクセサリーシューにつけて手持ちのモバイルルーター経由でライブ配信することも出来る。

リアルタイムにマルチカメラで編集することの意味とは?

このようにコンパクトな機材でHD映像のライブ配信と収録が手軽に行えるようになったことで講演会や学会、イベントなどを高画質にアーカイブしリアルタイムに共有拡散するニーズがより高まっていくだろう。これまで複数台のカメラでパラに録画して何日も編集に費やしていたことが、HDライブ映像をスイッチングし収録することでリアルタイムに完パケることが出来る。スイッチングしたプログラムアウトの素材があれば短縮編集するのもそれほど時間がかからない。スイッチングのミスをフォローするためにメインのカメラの録画を回しておけば編集でのフォローアップも完璧だろう。HD映像のライブスイッチングは映像制作のフロー短縮に大きな効果が期待できるのである。

WRITER PROFILE

ヒマナイヌ

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頓知を駆使した創造企業