日本最大級のプロジェクションマッピングを手がけた企業
2012年12月、東京駅丸の内駅舎のクラシカルな建物が映像で覆い尽くされた。日本最大級のプロジェクションマッピングが披露された「東京ミチテラス
(主催:東京ミチテラス2012 実行委員会)
」。このイベントで「プロジェクションマッピング」を知った人は多いはずだ。このイベントの技術部分を担ったのが「マックレイ株式会社」という「総合映像テクニカル企業」だ。総合映像テクニカル企業
左:イベント事業本部 技術部 部長 早川峰氏、右:イベント事業本部 技術部 第一技術チーム 原伸一氏
「マックレイ株式会社」は、コンサート・イベントに関する映像機器の設営・オペレーション・機材レンタルを30年以上も続けている老舗の企業である。また、都内2拠点に最新鋭の編集スタジオを保有し、編集・CG・オーサリングなどポスプロ業務も行っている。ポスプロながらデジタルシネマカメラでの撮影も行っており、撮影から上映まで映像制作をワンストップで行うことができるのが魅力だとイベント事業本部技術部 部長・早川峰氏は言う。
早川氏:マックレイのイベント事業部は元々、マックレイとは別の会社でレーザー光線を使ったり、ホログラムを研究していました。その研究のなかで、絵を描いたり空間演出をしたりする商売をはじめました。そこから映像に関する編集・CGなどをやって、更に映像機材のレンタルにつながっています。その会社が、マックレイと合体して、今の会社になりました。今は映像機材のレンタルとポスプロがマックレイの二つの柱になっています。ポスプロの部門から人が異動してきた分、イベントでの素材が強くなりました。元々マックレイはCM制作、編集がメインの会社だったので、、プレゼン資料などもCMのクオリティで作れます。アイデア・発想がビジュアル化出来る環境になってきています。
映像の制作作業自体はパソコンで誰でも簡単にできますよね。でも、その人がこなしてきた仕事のクオリティが作品に影響してきますので、やはり人は重要なんだと思います。CMをやっている人が、自分の作品をテレビで見ることはあると思いますが、何万人というイベントで自分の作品が流れて、実際の反応を見るっていうのは新鮮なことだと思います。そういうことを踏まえれば、ポスプロとイベント部門が統合した意味はあったと思います。
ワンストップシステムの強み
マックレイが自負しているワンストップシステムを裏付けるのはあらゆる現場をこなしてきたそのノウハウと知識である。場数を踏んでいくことによってイベント屋の提案力は増していくのだ。イベント演出をワンストップで行うことも多いらしく、数々の現場をこなしていくには、クリエイティブチームとの迅速な連携も不可欠だろう。そんなマックレイの強みに関して原氏は語ってくれた。
原氏:コンテンツ部隊が一緒にいるのは強みですね。細かい解像度を合わせるのもすぐに指示できるし、コンテンツができたらすぐにチェックができるのでメールのやり取りが無くて時間のロスがありません。また、営業がすぐ横にいるので、急に15秒作らないといけない、音と画をもらったけどあてなくちゃならないってときに、パッパとやってくれるんですよね。そして、明日現場持っていこうねっていう一連の速さっていうのは強みですね。
情報収集能力を高める
マックレイではすべてのスタッフそれぞれが自分のポジションの役割だけを考えるだけでなく、演出できるぐらいまで映像のあらゆることをスタッフ全員が考え、日々意識を高めているという。
原氏:普段からも、社員には演出などに対してアンテナを立てさせ、勉強の意味で会社の経費でイベントを見に行かせています。その体験をレポートで出してもらい、見て感じたことを老若男女関係なく会議で発表するんです。また、現場で見た面白い演出・成功例・失敗例も会議で共有します。この職種は経験が大事です。一人の人間だと1年に経験できる回数は限られますが、会議で情報を共有することでその数倍の経験の情報を得ることができます。仲間達で共有し、切磋琢磨するのです。実際に若いスタッフがイベントを見に行って見つけてきたPCVJソフトなどは今後現場でも活用していこうという話になったりしています。
操作性に優れたマルチフォーマットスイッチャー
東京ミチテラス2012 プロジェクター設置の様子
プロジェクションマッピング以外にもコンサート・イベント・学会の映像など舞台が関わる映像を色々受けている。とある医療系のコンベンション会場では、プロジェクターで6面ワイドシームレス投影を行った。同時に、アナライザーで会場の700人のiPadにアンケートを送ることがあったそうだ。
原氏:メインはBarco社のEncore Presentation Switcherを使っていましたが6画面のうち一つに問題や答えを切り替えが多いソースがあったんです。そのスイッチングはサブミキサーとしてRoland V-800HDを入れ、PCからの映像のスイッチングやPinP合成などをしてEncoreに送りました。
最近、数多くの映像機器の中で、V-800HDの稼働率は多いという。その理由を聞いてみた。
現場でも活躍のV-800HD
原氏:ローランド製品はインターフェースがわかりやすいんですよ。取説を読まなくても大体わかるのが他社との違いではないでしょうか。変に難しいよりかは脳に直結しているような動きの方が、本番はやりやすいです。スタッフが少ない場合、外注スタッフが来ていきなりスイッチングということもあります。ある程度スイッチャーを触っている人間なら30分もすれば構造を理解し難なくスイッチングできるんです。また、時間の無い現場だと、搬入時間が短かったり、入出力の打ち合わせもまともに出来ないことがあります。たまに、打ち合わせと違う入力が来たりもします(苦笑)。マルチフォーマットのV-800HDがあれば安心できますね。
映像演出の先を見据える
原氏お気に入りの機材ラック。スイッチング機材がひとつにまとまっている。ふたに折り畳みの脚がついておりテーブルになる現場でのセッティング時間短縮のために考えられたラック
映像演出の幅は年々増えていく。流行り廃りも多い。そんな中、どのように対応しているのか聞いてみた。
早川氏:演出で言えば新しい技術というのはほとんどなくて、最近流行ののプロジェクションマッピングも投射する側からは特に新しい技術を使っているわけではありません。
既存の技術をいかに組み合わせて目新しく見せることができるかの成功例の一つだと思います。今後は技術的に新しい物、本流はやはり4Kや8Kの高解像度技術になると思っています。当社はいち早く目を向けてニーズを取り込む努力をしています。広まるのはもう少し先になりレンタル市場で需要が出てくるのは2、3年かかるかもしれませんが、社内にノウハウとしては蓄積しておきたいと思っています。そのためには今はまだ研究開発費をつぎ込むようなものなので、それができる体力的な余裕があるようにしたいなと思っています。
映像屋ではなくイベント屋
原氏:「映像屋」ではなく「イベント屋」だということを忘れるなとは社員に言っています。成功させてなんぼだよと。このイベントを成功させるお手伝いをさせて頂きます。そのイベントを成功させるためにはこの機材が必要だと。そういう提案も含めて考える。一時的に儲かればいいっていう気持ちではなく、お客さんといいパートナーでありたいという気持ちでやろう!といつも話しています。
マックレイのようなワンストップの力を持った会社やチームは、知識や経験が豊富な為、助言やアドバイスも的確なプロである。だから、クライアントはシステム周りを彼らに任せるのだろう。多方面からより多くインプットし多角的にアウトプットするということがこれから求められていくのであろう。