これはなかなか面白い奴だ!
もう既にコンパクトさはまるで無くなっているRIG仕様
まずは2ヶ月ぶりの執筆!ネタは今回のBlackmagic Pocket Cinema Camera(以下BMPCC)、今年のNABでのBlackmagicカンファレンスで4Kカメラよりもジャーナリストが食いついていた感が在るカメラ。3Q位に発売予定と言っていたので、いつもの出る出るパターンで年内登場は無いな…と思っていた矢先に予定通りの出荷開始。かなり人気があるらしくデモ機も全然無い状態なのは知っていた。ダメ元で連絡入れたら、偶然にも1台だけ日数限定でデモ機貸出OKとの事で、押さえて送って貰ったのが経緯。その為に、今市販されている物と若干バージョンが違うかも知れないが、その辺はファースト・インプレッションとして読んで頂ければ幸いだ。少なくともRAWでの収録は出来なかった。
小さな魔術発動
今回レンズはCOSINA NOKTON 17.5mm F0.95
Blackmagic Designは何時も面白くユーザーを驚かせてくれる。元々はコンバーター等の小さいガジェット等をメインに扱ってきたはずだが、ここ数年でビデオハブやHDスイッチャー、シネマカメラ、各種モニター等々、当にマジックでも使ったようなラインナップを次々出してきた。そして今年のNABでは4Kカメラと、4Kスイッチャーまでも登場させた。
そんな中でBMPCCは小さいながらもその人気度は抜群だ。そもそもBlackmagicのシネマカメラはその形が独特で、カメラと言うよりセンサーにモニターとケースが最小限に付いただけのイメージが大きい。BMPCCもその形状の面白さは引き継いでいて、見た目は当にコンパクトデジカメ!しかしBMPCCは写真が撮れない完全に動画仕様!しかも13stopと言う広いダイナミックレンジを持つシネマカメラという位置付け。その心臓部であるセンサーはスーパー16mmサイズ、マイクロフォーサーズ(MFT)レンズとの組み合わせで電子接点付きのレンズなら完全に電子制御できる。
収録フォーマットは高品質の10bit ProRes 422(HQ)にFILM-Log又はVIDEO-REC.709どちらかを選択可能、最終的な出力も踏まえたワークフローから適切なフォーマットを選べば良いだろう。またこの10bitのファイルは情報量が多く、収録するSDカードもそれなりに高性能な物を用意した方が良い。同時にそれだけのコーデックを処理するためにかなりの消費電力を使う。バッテリーは数本用意した方が良いがNikonバッテリーとのコンパチである為、充電器共々手に入れることは難しくない。尚、先述の通り、お借りしているデモ機ではRAW収録に関してはまだ選択は出来ない状態だった。
コンパクトor堅実性?
BMPCCはそのコンパクトなボディーが特徴でもある。つまり何時でも何処でも携帯して、何かあったら直ぐにポケットから取り出してシューティング!なるほど、このコンセプトは非常に面白いしその筐体の大きさから考えても十分あり。ただそれが作品に繋がるのかと言えば…?カメラマンから言わせて貰えば厳しいと言える。まずはピンと絞りを晴天下の中、本体のLCDでしっかり確認出来るのか?色の確認は?最低限の確認チェックが出来る様にLCDをしっかり見る事が必要で、その為にこの様なスコープやフードは欲しいところ。これならポケットとは言わないが鞄なら収納可能だろう。この写真のスコープはSONY NEX-5用なのだが、この様にボルトオンで付けることは出来る。最もNEX-5が3inch LCDに対してBMPCCは3.5inch、つまりチョットだけ小さい。とはいえ、何となくならこのスコープでも十分対応できる。
BMPCCの外部電源入力は超小型だが規格物なので自作も簡単に出来る
もう一つは簡易的にでも標準的なパイプRIGで組んでしまうこと。筆者は最近“RIGアドバイザー”と自称しているのだが、この手の物なら簡単にRIGで組み上げるだけの知識が身についてしまった。今回はマンフロットSYMPLAのショルダーKITをベースにZacutoのEVF、Vマウントから12Vを整流して直接本体に入力、ガンマイクはAzdenの小型ガンマイクを装備、ガンマイクとEVFの取りつけには3mmのアルミアングルから切り出して制作した。折角のRIGに組むならもう少しレンズコントロールはしたいところ。今回の装着レンズはフルMTなのでフォローフォーカスでお茶を濁したが、BMPCCにはLANC端子も搭載しているので早速ここにSONY純正のLANCリモコンで試したがRECコントロールはOK!フォーカス&ズームはMTの為に解らず、情報によるとCanonリモコンではやはりRECだけだがマンフロットのリモコンだとフォーカスコントロールも出来たと報告がある(確かにメーカーHPにはマンフロットのリモコンが掲載されている)。これならばRIGをガッチリと両手でホールドしてもフォーカスが自在にコントロールできると言う事だ。
これを見て「せっかくのコンパクトさの意味が無いじゃん!」と言われる方もいるだろう。筆者を含むENGを担いできたカメラマンなら解ると思うが、カメラには在る程度の重さがないと映像にも重みが伝わらない、軽いカメラでは軽くて薄い映像しか伝わらないと言うのが持論なのだ。今までどんな小さいカメラにも本気で行くときは使いやすいようにRIGを組んでいくと必然的に重くなって映像にもそれが伝わると言う感じだ。まぁ自己満足でもあるのだが…。
今回はこの筐体の小ささを生かしてMTBによる車載映像も撮って見た。今回のマウントは元々NX30用に作った物を流用したが、流石にレンズが多少重いとは言えこの様にマウントしても問題はない。またこの時の映像はVIDEOモードでの撮影でNEX5との比較も在るのでVIDEOモードでの色味を参考にして貰えばと思う。但しMTBでの車載走行動画なので雰囲気だけを見て頂きたい。
色調整
巷ではカラーグレーディングと言う言葉が一般的になっているが、筆者的には色をいじくると言うのはあまり得意ではない。多少編集もするので色合わせ程度は行うがとてもグレーディングと言うレベルではない。とは言えBMPCCの13stopと言う階調は流石に興味のあるところ。普段ビデオだと8stopそこそこなのを考えるとその広さは想像以上なのだろう。とは言えLOG収録での出力と言うことに対してはホンの一寸しか知識がない。大雑把な話をするとダイナミックレンジが広いと言うことは白が白にならず黒が黒になり難いと言う事。
大雑把過ぎるが上がREC.709、下がFILM-LOGのイメージ
前に高野光太郎氏に「下を決めて、上を決めて、色を載せれば良いんだけどね。それが難しいのよ」とアドバイスを貰った事を思い出し、諸処の情報を自分なりに理解してチョットだけ色を弄ってみた(グレーディングってレベルじゃないので)。使用ソフトはDaVinci?イヤイヤ、やっぱりEDIUS Pro 7でしょう。EDIUSは10bitでのカラーコレクションを持っている為に案外BMPCCの10bitLOGは相性が良いかも知れない。プロジェクトを10bitモードにしてからアドバイス通りに上下を整えて色を蘇らせていくのをイメージした。何となくLOGやグレーディングの入り口が見えた気もするが、なるほどBMPCCはこの様に色を弄る最初の窓口としても十分に使えるカメラと言うことが良く解った。今回のサンプルは別に用意したので、言葉で伝わらない部分も多々あると思うのでそれを見て頂きたい。カラー初心者の筆者でもこの程度は出来るので特に学生や若いクリエーターはドンドンやってみるべきだ。但し自己流は駄目!
今回色を弄るに辺り、色や光のプロの方に色々と御指南頂いたのだが、ある照明部さんの言葉が一番納得できた。「グレーディングって塗り絵じゃ無いんだよね、足し算引き算でどうにでもなる物じゃない。ましてや幾らRAWだとか4:4:4だとしても素材が駄目ならどうにもならない。まずは現場でちゃんと色を作ろうよ!」当にその通りだと思う。
(1)上下を決めて
(2)色を載せて
(3)微調整/EDIUSは非常に解りやすい!