化粧品のコンパクトのようなカメラらしくないスタイル。自分撮りに特化した形状。パッと見て何に使うかこれほどはっきりしているカメラもない。ニコニコ動画の「やってみた」「歌ってみた」「踊ってみた」にぴったりのカメラが登場である。早速実機を触ってみたところ実に面白い!これほど使い手のアイデアを刺激するカメラも近年ない。動画カメラが4Kなどの高解像度、交換式レンズの絵作りにシフトしていく中で「自分を撮る」「置いて撮る」というコンセプトに絞ったマーケティングの英断を讃えたい。では、何がそんなに面白いのか?解説していこう。
三脚なしでどのような角度でも保持できるスタイルが面白い!
カメラというのはそれ単体では撮る機能に特化し、どう設置するかは三脚などの外部機器に依存するのが常だ。ところがiVIS miniはカメラ内に内蔵されているスタンドであらゆる角度での撮影を可能にしている。自分撮りの場合、化粧品のコンパクトを開けるように(この喩えがPRONEWSの読者にフィットしているかはさておき)液晶を開ける。カメラの底部には粘りのあるスタンドがありどの角度でもピタッと止まる。自分ではなく相手を撮る場合は液晶を閉じると映像が上下反転する。そして今度は液晶のレンズを逆に開けると通常のビデオカメラのようなスタイルになる。実に考えられている。スタンドを完全に開くと撮ったファイルを再生して見るのに便利。自在に動く液晶のヒンジと粘り気のある底面のスタンドだけで三脚なしにあらゆる方向への固定を可能にしているのだ。
誰にでも使えるアクションカメラとしても面白い!
GoProを筆頭とするアクションカメラがヒットしているが、サーフィンやパラグライダーなどのスポーツをしない人にとっては買ってみても大量のアタッチメントとケースに戸惑い宝の持ち腐れになることも多い。アクションカメラの特長は魚眼レンズに近い超広角レンズによる主観撮影であり、GoProの場合は170度の画角を持っている。自分撮りに特化したビデオカメラというスタイルのiVIS miniだが、実は画角は160度でGoProにかなり近い魚眼具合なのだ。これは人間が視覚的に認知している視野角に近く、主観撮影の場合は臨場感が出やすい。また自分撮りしながら歩くと回りの風景が大きく映り込み、二人で並んで歩いても余裕で画角に人物が入る。さらにセンターだけを切り出すズーム機能もあるので通常のビデオカメラ的な絵も撮れる。静止画も専用のシャッターボタンが装備されているので魚眼系のスチルカメラとしても面白い使い方が出来る。
ビデオカメラ譲りの細かい設定項目!
iVIS miniの設定メニューを見るとどこかで見たような画面だなと感じる。G10やG20などのキヤノン製ビデオカメラと同じメニュー構造なのだ。アクションカメラの多くはホワイトバランスもオートのものが多いがiVIS miniでは屋外、屋内の設定はもちろん白い紙でプリセットも取れるのである。さらにマイク感度なども人の声、音楽など状況に応じてのプリセットも用意されておりきめ細かい。さらに撮影したファイルから任意のファイルを選び1つのファイルに結合変換するときにはG10/G20などについているシネマモードと同等のフィルターを適用できる。カラー映像をモノクロにしたりトイカメラ風にしたりとカメラ内だけで出来て楽しい。撮影時にはこのフィルターは使えないがファイル結合変換の時だけ適用できるという判断は見事だと思う。
動画インターバルが圧倒的に面白い!
もっとも気に入ったのがこの機能だ。インターバル撮影というと静止画の連続が動画になるというのが主流だが、iVIS miniが面白いのは0.5秒の動画をインターバル撮影出来るという機能である。インターバル間隔は5秒、10秒、30秒、1分、10分が選べる。5秒、10秒は液晶がついたままで撮影が続きそれ以上の間隔設定だと撮影するたびにスリープに入りまた復帰するという動作を繰り返す。この機能に関して、百聞は一見にしかずということでサンプルをお見せしよう。
インターバル撮影のサンプル映像
これはタクシーを探しながら歩いて乗り込むまでを、iVIS miniを手に持って自分撮りしながら歩いただけの映像である。自分撮りしているのに他人が撮影しているかのようなワイド感、タクシーに乗っても後部座席全体が入る160度の画角を実感してもらえると思う。そして何より0.5秒の動画の連続体によるインターバル撮影というのが実にイキイキとして面白くないだろうか?バックパッカーが世界を旅しながらこの手法で撮影したら新しいアメリカンニューシネマになるんじゃないか?とさえ思ってしまった。インターバル機能では、間隔は調整できるが1カットあたり撮影出来る動画は0.5秒しか選べない。しかしこの0.5秒という長さは絶妙である。どんなカットでも飽きずに見られてしまうしその連続体もテンポがいい。残念なのは音が録音されないということ。音があればまた違った印象になると感じた。動画インターバルは他にもいろいろ撮影してみたので興味ある人は参照して欲しい。
ビデオスナップと動画インターバルを比較してみる!
動画インターバルが無音なので音が入るビデオスナップと比較してみる。ビデオスナップはiVISシリーズが以前から搭載しているユニークな機能で、1カットの動画の長さを2秒、4秒などに固定できるという機能で音声も同時に記録される。最短のビデオスナップは2秒なので動画インターバル機能の1カット0.5秒よりは長いがこれも自然にダイジェスト映像が出来るので面白い。
意図的に撮影しているということと、2秒であることで動画インターバルとはだいぶ印象が違う。動画インターバルがビデオスナップよりダイナミックに感じるのは、撮影者がいつ撮影されているか意識していない点と、0.5秒動画の連続体によるスピード感にあるのだろう。今はYouTubeなどで権利が処理された音楽をアフレコすることも出来るのでBPM的に0.5秒に合う音楽をセレクトすれば面白いかもしれない。
その他の機能も充実!数少ない欠点は…
インターバル撮影やビデオスナップなどの撮影機能に加えて1/2、1/4のスローモーション撮影などもありスポーツやダンスなどのセルフチェックにも使えそうだ。Wi-Fiを装備していて、スマホのアプリからも撮影のオンオフが出来るので少し離れた場所からも操作できる。アプリは再生ファイルの再生も可能なので、複数人で見る時にも便利。このあたりは最近のビデオカメラ、アクションカメラのトレンドをしっかり取り入れている。数少ない欠点としてはバッテリーが小型なので持ちが悪いこと。特にインターバル撮影のような機能を使うと消耗も激しくスペアバッテリーは必須となるだろう。外部電源は純正オプションとしてACアダプターが用意されている。USB端子も本体についているが、撮影データの吸い上げ用でモバイルバッテリーからのUSB給電は出来なかった。汎用品を使って使用時間を伸ばしたいユーザーは多いと思うのでここは今後改良してもらいたい。もうひとつは動画の撮影ボタンについて。ハードボタンとしては静止画シャッターボタンがついているのだが、動画は画面の中の録画ボタンを押すかスマホのアプリで押すしかない。静止画シャッターボタンに設定で動画の録画ボタンを割り振れればと思うことは多かった。
好奇心旺盛でアクティブなライフスタイルな人にオススメの新世代ガジェット!
iVIS miniはこれまでのビデオカメラともアクションカメラともスチルカメラとも違う新世代のガジェットだ。使ったのは数日にすぎなかったが持っている間は常にワクワクさせられた。自分たちの身体表現やバンドの演奏、ダンスなどを記録するのはもちろん、移動しながらの自分撮りでロードムービー風のセルフドキュメンタリーを撮ることができ、これまでの常識にとらわれないアイデアで使えそうだ。自分撮りに特化したユニークな形状、アクションカメラ顔負けの160度の超広角レンズ、音楽や人の声もクリアに録れるステレオマイク、撮り手の発想を刺激するインターバルやスロー撮影機能。スマホやビデオカメラでは代用できない機能が盛りだくさんのユニークさに筆者は予想を上回るヒットを予感している。