4K野郎みたび降臨?!

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見た目はHDハンディカムと同じ、当に羊の皮を被った狼?!

4Kカメラは既に何回か取り上げてきたが、その殆どが制作系のしっかり運用を前提に考えて作ってある物ばかりで、その性能には驚くばかり。レンズ交換・LOG収録・外部RAWレコーダーがキーワードとなり、システム的な運用としても300万以下では話にならない。更にレンズコントロールも踏まえると、とても1人で全ての機能を使いこなしながら収録するのは難しい物ばかり。JVCも既に4KハンディカムとしてGY-HMQ10とJY-HMQ30の2機種をラインナップしているが(この2機はレンズだけじゃなくて中身が別物)、HMQ30は流石にオーダーメイドカメラに近く価格もなかなか良い値段。ソニーではNEX-FS700+4K RAWレコーダーが安価な4Kカメラとしては中々良いポジションだが、レコーダーを組み込むためにRIG等の補助フレームが必要になってくる。HMQ10もハンディカメラとしては価格も含め面白いが、光学系にやや無理があるのか、ズーム倍率も含めてオールラウンドに使うと言うより4KからHDをクロップして使うという方が綺麗にはまる機種だと思う。

そんな中登場したPXW-Z100は、外見こそHXR-NX5JやHVR-Z5J等の業務用ハンディカムの流れをくむデザインに収まっておりパッケージングは流石にSONYの上手さだと思う。兎に角、今までのハンディカムの代わりに何処まで使えるのか?その辺も含めてレポートしたい。

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筐体的にはNX5とほぼ同じデザイン

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HDのZ1から約10年経って4KのZ100に進化?!

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XQDメモリーカードスロット×2、SDメモリーカードスロット×1(来年対応予定)。右側のコンポジット下のスロットはアップデート等のサービス用

最初にZ100を持った時の感覚は、HDVカムコーダー HVR-Z1Jにそっくりだった。Z1Jはご存知SONY最初のハンディカムHDカメラ。当時は名機DSR-PD170を一廻りほど大きくした筐体でありながらもHD撮影ができると言う事に驚いた。そしてその持った質感も気にならない程度のしっくりとした重量感も含めて品川カメラ?には無い感覚を得た気がしたがZ100も当にその感覚がピッタリと来る。細かい数字はメーカーサイトで見て貰うとして、キーワード的に拾ってみるとZ100とは

  • センサー部は1/2.3型 Exmor R CMOSイメージセンサー 単板式
  • 4K(4096×2160,3840×2160)60p撮影に対応
  • 4:2:2 10bit 600MbpsをXQDメモリーカードにXAVCで収録(HD解像度も最高223Mbps)
  • 4K解像度出力に対応したHDMI端子を装備(SDIアウトはHDまで)

この辺りをアウトラインとして認識していると、その全貌が想像できるのではないだろうか?要するにかなりのハイスペック/高ビットレート(4K/60p時で最高600Mbps)フォーマットで在る為に、一般的な汎用メモリーカードでは書き込み速度が追いつかず汎用としては新規格のXQDメモリーカードに収録することになった。このカメラはファイル構文からXDCAMの機種名も与えられているので本来ならS×Sカードと言う選択肢もあったはずだが、将来的に数が出て価格もこなれると思われる汎用カードを使用したのにはミドルレンジユーザー的には嬉しい配慮だ。

またHD解像度でも200Mbpsを越していると言うことは、付属のメモリーカード(32GB)では30分しか収録できない。もちろん4K/60pだと10分(実撮影では6~7分)以下の収録なので、大容量のメモリーカードまたはHDMIから出力されている4K信号を収録できるレコーダーが必要不可欠になってくる。なおロードマップでは来年夏頃迄にHGに関しては本体SDカードスロットでAVCHDが収録可能になる予定だ。

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アサインも含めて見慣れたスイッチ類。メニュー構造も日本語化でNXCAM系とほぼ同じ

圧倒的な解像感!!!

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EDIUS/TLからの4K切りだし生ファイル

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※編集部注:今回のレビューで使用した機体は開発中のものです。画質等は製品版と異なる場合があります

同社のF55やFS700の様に大判センサーとは違い1/2.3inchの小さいセンサーの為に被写界深度は深め。ピンのシビアさは、AFレンズと言うことも相まって、さほど神経質にならなくても、解像度の大きいLCDパネルと拡大フォーカスを使う事で1時間程扱っていればかなり感覚的に慣れてくる。小型の撮像板とは言えレゾリューションという意味では4Kサイズがあるのでその解像感は思った以上に良い。勿論しっかりと色々な物を見るにはやはり4Kモニターで大体の感覚を掴んだ方が良いのは確かだ。

しかし40inch以上の4Kモニターを外に持ち出すのは中々難しい問題でもある。せめて28inch位で4Kモニターがあるとかなり楽にはなるのだが。とは言えハンディカムスタイルで4Kの解像感をここまで感じ取れるのは単純に凄い。貸出期間が短く更に台風等でサンプル自体が4Kに相応しく無いかも知れないが、簡単に外でパッと撮っても高解像度の恩恵は感じることが出来るはずだ。

HD解像度でも200Mbpsと言うビットレートで収録しているので、その解像感を単純に手持ちのHDカメラと機会があれば比べて見て欲しい。また4Kサイズまであるとカラコレした時にちょっとパラメーターを変更するだけでも映像は大きく変わる。SDからHDに変わった時もその効果の大きさを感じたが、4Kだと更に奥行きの深さまでもが感じることが出来る。つまりZ100は色を勉強すると言う意味でもその役割を補えるスペックを持っていると言うことだろう。

それでも弱点はある

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流石に消費電力が大きいのか大容量と言われるNP-F970でも100分程度が現実的。筆者はVマウントにNP-F970×2を搭載でき、LANCでコントロールできるハンドグリップを付加し、RIGに組んで使用した。LCDにも自作のスコープを付加してある


良いことだらけのZ100に見えるが、やはり実運用していると、どうしても気になる所は高性能機種と比較してしまう物で、それはこのカメラにもある意味当てはまる。もう少し改善されると良いなと思われる部分は収録時間を除けばまずは電源だろう。4Kを収録するにはそれなりの電力を使うらしくその時間はSONYハンディカムとしては短い部類に入る。またセンサーが過密になっている分、感覚的な感度は低い。丁度Z1J程度と思って貰えばいいだろう。ファンの音も気になる方は居るかも知れない。しかしそれらも欠点と言うよりは慣れの部分も在るので、Z100を展示している販売店等で実機を触って見ると解るはずだ。

総評

「PXW-Z100」で撮影した動画
※編集部注:今回のレビューで使用した機体は開発中のものです。画質等は製品版と異なる場合があります

SONYが作ったハンディカム4K。その初号機でありライナップのスタート部分がZ100と言う位置付けになるだろう。そう言う意味ではこれから次世代の4Kハンディカムに大きく期待したい所だ。勿論Z100もかなりのパフォーマンスを発揮してくれる事は確かだ。

最近業務用ハンディカムと言えばJVCのGY-HM600シリーズがバージョンアップで進化を続けており、完全にソニーのNXCAMシリーズを食ってしまっていると言えるはず。その中での4Kハンディカム登場というのはかなり面白い。まだまだ4Kワークフローを構築するには機材も予算も足りない状況であるので、高性能なHDハンディカムを手に入れた方が償却は早いかも知れない。ただZ100に関して言うなら販売価格が思った以上に安い。筆者が想定した約半分の価格で登場してしまった。つまりHM600シリーズやPMW-160と同等の価格で4Kカメラが手に入ってしまう。次期カメラを検討中のHDハンディカムユーザーが多いことも考えると、Z100はかなり良いポジションを狙えると感じている。後は早く大容量メモリーカードが価格据え置きで登場するのを待つばかりか…。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。