PROGEAR半蔵門のセミナールームでHDライブ配信塾が開催された。120分にわたるハンズオンを含めた長時間のセミナーであったが、アンケートをみる限り概ね好評だったようである。ここではその概要を紹介したい。最初の30分では座学としてライブ配信にまつわる基礎的な情報がシェアされた。日頃業務として行っているノウハウを惜しみなく披露しているのでぜひご活用いただければ幸いだ。
ライブ配信の定義を今一度考える
ライブ配信の定義と必要な知識とその内容
ライブ配信の定義は「今、その場でおこっていることをマルチカメラでスイッチングしながらインターネット回線を通じてその場にいない人に伝達することを言い、視聴者は外出先でスマホで見たり会社や自宅のPCで見る」とまとめられ、そのために必要な技術的要素として映像、音響、ネットワーク、広報の4つのジャンルが上げられた。
ライブ配信に向いているジャンル
ライブ配信はネット動画の中でも巻き戻しも早送りも出来ないライブな映像である点から「今を共有している」という意識が視聴者に働きやすく、今みる必然性が発揮できるイベントに向いている。セミナー、シンポジウム、結婚式、パーティ、音楽ライブ、トークショー、スポーツ、学校イベントなどはライブ配信が頻繁に活用されているジャンルと言える。
テレビとネットのライブ配信における画面サイズの比較
ライブ配信で大切なことは3つある。ひとつめは「テレビである前にラジオであれ」。スマホやパソコンで視聴するという特性上、音だけを聞きながらライブ配信画面をバックグランドに回すという視聴者の行動特性をあげた。音だけでもラジオのような聞きやすさが重要である。2つめは「テレビは40インチ、ライブ配信は4インチ」。パソコンやスマホでの視聴は小さなウィンドウを前提にしており画作りも小さな画面で見られる前提に立つべきという話。3つめの「視聴者の声を聞き臨機応変にやる」ことの大切さで、リアルタイムに視聴者からの反響が得られるライブ配信の特性を活かした番組進行、イベント進行を心がけたいというもの。
ライブ配信プラットフォームのそれぞれの特長
日本のライブ配信の主なプラットフォームとしてはUstream、ニコニコ生放送、YouTube Liveがありそれぞれの特長があげられた。個人のライブ配信ではツイキャスが独特の文化を作り始めているがこのセミナーでは商用利用を前提としたライブ配信なので割愛した。
ライブ配信に使う機材の標準的な接続
ライブ配信はWebカムひとつやiPhoneでも出来るが、機材も安価になってきたのでマルチカメラによるHD配信も一般的になりつつある。必要な機材は図のようなパターンが多い。複数のカメラをスイッチャーでまとめ、複数のマイクや音源をミキサーでまとめる。それらの信号をネットに接続された配信機に渡すために信号はUSB2.0/3.0やThunderboltなどに変換される。変換された信号をライブ配信プラットフォームに送り込むためにはPCによるソフトウェアエンコードで各種ソフトウェアやハードウェアエンコーダーが使われる。
現場で起こるトラブルに打ち勝つために
配信現場でよくあるトラブル
配信現場でよくある4大トラブルがある。ネットワークや配信ハードウェアの問題で「配信が落ちる」「コマ落ちする」こと。現場で急に持ち込まれたパソコン信号を扱おうとしたのに「PCが入力できない」こと。喋っている人の口より音声が早いという「リップが合わない」現象。いずれもシンプルにして機材の接点を増やさず事前チェックを怠らず万が一のバックアッププランを持っておくことが大切だ。
VR-50HDを使用して実践!
座学のあとVR-50HDを使ったライブ配信実演が行われた。トークショーを前提に3台のカメラとパソコン入力によるデモンストレーションでセットに座った演者が話をはじめると講師がまずスイッチング。そのあと参加者のテーブルに設置されたVR-50HDを使って、テーブルごとにスイッチングの体験をしてもらった。録画にはパナソニックAG-HMR10AとローランドのPC用録画アプリケーションVR CAPTUREが使われた。スケーラーのついたVR-50HDの簡単接続を体験してもらうため参加者のiPhoneやiPadをつなぐためのLightning to HDMIケーブルも用意され各自に手持ちのガジェットを接続してもらった。
座学からVR-50HDのスイッチング、録画、接続まで基礎的な内容ではあるが、特別に映像をこれまでやってこなかった人でも用意にオペレーションできることを実感してもらえたようだ。アンケートを見ると配信設定の部分を細かく知りたいという記入も多く見受けられたので今後機会があれば開催したいと思う。