気になるMoVIとは?
初MoVIオペレート。それも船上で!
昨年末辺りから、3軸ジンバルでのバランサー(スタビライズ)として、特にRCマルチコプターでの搭載方法として一般的に広まった物で、簡単に言えばこの部分だけに特化し、切り取った形で小型のカメラを搭載出来るようにしたのがMoVIと言う事になる。この新しいガジェットは色んな方が飛びついた。新しい方法・完璧なバランス等々、色んな理由が挙げられていたが、実は筆者的には好きになれない機材でもあった。
確かにジャイロで常に平行を保つと言うのは面白いのだが、逆に言えばオペレーターがワンマンで映像を作る事が出来ない。常に平行を保つという事は少し考えれば解るがカメラワークが出来ないと言う事だ。もちろんそれが必要ない現場ならアリという事になる。例えば窓越しにカメラをパスしてワンカメで押さえるとか2Fから1Fにカメラを落とすとか要するにカメラをお互いにパスしてワークにする方法ならこの機材は良いと思う。
しかし良くこの機材を手にすると前後左右ロール方向にぐねぐね回しながら確認して「すげー」と言う方もいるが、それは無しだ。理由は簡単、そんなワークで始まる映像は有り得ない。カメラマンなら少しでも安定方向で押さえるのにその確認方法はおかしい。そう言う意味でMoVI否定派だったのだが、先日ある撮影で船上から100m先の船の上での作業をテレ端一杯で納める撮影があり、MoVIでの撮影指定だったので初めて使用してみた。
GH4で4K収録とは言え、さすがにこの重さをキープするのは難しい。そうMoVIの最大の欠点は上下動は人間の腕力に比例すると言う事だ。撮影自体は海が思ったより凪だった為にディレクターの思惑通りの安定した映像が収録できた。確かに面白い機材ではあるが自分が所有したいと思う機材では無かったのだ…。
STEADICAMの導入
見た目のインパクトは確かに強烈だ
この撮影終了後、特に感じたのはどうにもならない上下動の押さえの為に何をすればMoVIが上手く扱えるのかを考えて見ると、単純に背中にしょったアームからカメラを吊すイージーリグと言うのが真っ先に考えられる。既にそれで運用されている方もいっぱい居ると言うのはチョット検索すれば沢山の事例を見る事が出来る。
しかしこのスタイル、自分の感覚では何となく格好悪いのでパスだ。個人的にはやはりSTEADICAM(以下:ステディ)でこの辺をカバー出来ないか、何時もお世話になっている銀一の柳下氏に相談したところ、アームに付けてもあまり意味はないだろうとの事。ともかく一度乗せてみようかという事で、ロケの翌日に銀一に出向きセットアップする事に。既にステディでのアームにMoVIを搭載すると言うのは事例があるので、今回はステージの上にMoVIをカメラとして載せてしまう方法を試してみた。当初の想像ではスタビライズ同士でお互いを打ち消しすぎて意味がないのでは?と言う懸念もあったが、まずはダメ元でオペレートしてみる事に。
Mr.STEADICAMこと、柳下氏の駄目出しとアドバイス
禁断のSTEADICAM+MoVIの競演
まずはその結果から。この2機種の組み合わせは非常に好感触だった。筆者個人の思い込みもあるかも知れないが、一緒に検証した柳下氏も「今後の可能性と期待は大きいと思う」と同じ様に好感触であった。懸念してた打ち消すと思われたスタビライズもそのような事はなく、むしろ筆者のようなステディ初心者にはオペレートを簡単にしてくれるのかも知れない。丁度スポーツモードのオートマ車みたいな感じだろうか?何が良かったかを簡単に書き出してみよう。
- 上下の細かい動きの吸収はアームが担当し左右の細かい振動はMoVIがカバー
- ステージを平行に保つ事をMoVIが制御、ダイナミックな上下動が可能
- ステディのバランスをステージ上でMoVIが補正、強風下でも安定したオペレート可能
- ダッチロール系のワークが簡単に取り入れ可能(但しMoVIの要セッティング)
こんな感じで中々良い結果が出たと思う。もちろんベテランのステディパイロットならこれ位楽勝で出来る!と言われるかも知れない。そこはステディ初心者の思い込みと思ってご指導頂ければと思う。もちろん良い事だけではない、不具合も当然ある。その一つにパン方向が中々思うように動いてくれない事だ。
今回もMoVIのセッティングでパン方向は設定できる範囲で動かなくしたが、それでもやはり気持ちいい動きとは言えない。またこの機能を潰さないとダッチロールは出来ない。この辺のセッティングを販売元と共にセッティング出来ればこの二つの組み合わせは、新しい表現方向が出来ると感じる事が出来た。少なくともMoVIだけ持って走っているのとは訳が違う。
今回のセッティングでは70cm~205cmまでのショットが可能
MoVI+RIGという方法も
MoVIで重さを支えるのに最も簡単な方法は、RIGを使ってショルダースタイルにしてしまう事だ。ここでの注意事項はやはりパン方向のセッティングに限る。コレさえクリア出来れば、かなり自由に動けることが出来る。特にモービル等に座って被写体を狙う時には安定感が全然違う。このままRIGに三脚のアタッチメントも付けておけばこのまま三脚での運用も可能となる。トラックの上や大きい船での甲板なら揺れは完璧に押さえ込まれる。
総評
今回MoVIを色々楽しませてもらい、その良さも十分解ったつもりではあるが、やはり個人的にはこの機材を単体で使う気にはなれない。しかし今回のTESTの様に様々な機材と組み合わせてガジェットの一部としての運用なら非常に意味のある機材だと思っている。この部分については、さらに掘り下げて行く予定だ。
よく考えてみればこの3軸ジンバルシステム自体が単体で機能させようとして開発した物ではないだろう。ベースにRC空撮という物があることを考えればその使い方は自ずと方向が決まってくるはず。単体で「すげーっ!」って使っている方、少し方向を変えてみては如何だろうか?
今回のサンプルを見ればステディカム使いなら上下動と突っ込み具合が有り得ないのが解るかと思う
機材協力:
■STEADICAM(銀一)
http://www.ginichi.com■MoVI(フルフィル)
http://MoVIe.fulfill.co.jp/■VOCAS(Kacchie LLC)
http://kacchie.jp/vocasjp/