多岐にわたる分野で活躍する株式会社シーマ
株式会社シーマは、1961年に設立、大阪と東京を中心にイベントの映像送出から、展示施設向けの映像音響システムの納入など多岐にわたる分野で業務を展開している。2000年には、京都と広島にも営業所を設立し、スタッフは85名。今回、お話しをお伺いしたのは、常務取締役 石丸隆氏、フィールドエンジニアリンググループ マネージャー 藤井邦善氏、システムインテグレーショングループ セクションマネージャー橋本英昭氏の3名。
シーマでは、京都の夏のイルミネーションイベント「京の七夕」の鴨川会場でのプロジェクションマッピングなどの屋外大型プロジェクションマッピングから、モジュラー型リアプロジェクター「MicroTiles」とKinectを組み合わせたインタラクティブシステムなど、幅広い分野での活動を行っている。
また、自社キャラクターを活用し、ブログやカタログ、YouTubeなどを通じて映像技術に関する解説を行ったり、ソーシャルネットワーク上での積極的な情報発信など、映像をより身近なものとして活用してもらうための活動も盛んだ。
今回訪問した本社内でも、ケーブルラックや液晶保護パネルなど、社員による独自の工夫を随所に見ることが出来た。そんなスタッフ間のコミュニケーションやモチベーションアップのための理由の一つとして「社内マイスター制度」があると、石丸氏は語ってくれた。
単管を利用して作られたオリジナルのケーブル棚。ボックス自体がストッパーとなり、引き出した際の落下防止と検品の容易さを実現している
液晶画面保護板にもスタッフのユーモアが
「社員個々が輝くように」をキーワードに、社員の営業力と技術力の向上に努めている
株式会社シーマ 常務取締役 石丸隆氏
石丸氏:活動の一つとして、スタッフの能力を客観的に評価する“シーママイスター制度”を取り入れています。制度導入の理由としては、時代に合わせて、働き方が変化してきたことが大きいです。技術が高度化・複雑化するなかで、仕事の負荷が個に集中しないことを目標にして、スキルバランスの可視化が出来るようにしています。
似顔絵と仕事のモットーが書かれたPRカード
幅広い分野を手がける同社だからこそのアプローチであり、将来的には「業界全体で技術レベルの評価基準を作りたい」ということを熱く語る姿が印象的だった。
cimawiki(映像資料集)とレンタルカタログ
現場のスピードに合わせた機材選択
多くのイベント現場でのオペレーションを行うシーマでは、現在6台のPR-800HDが稼働していると言う。シーマにとって機材選択のポイントはどこにあるのだろうか?藤井氏の意見を聞いた。
株式会社シーマ フィールドエンジニアリンググループ マネージャー 藤井邦善氏
藤井氏:PR-800HDはとにかく、ユーザーインターフェースがわかりやすい。新人でもベテランでも、送出機を触ったことがあれば直感的にすぐに使えます。クリップのサムネイルから、トランジションやループの設定まで、すぐに把握することが出来るので、安心してオペレーションをすることが出来ます。DV-7PRからPR-80、そしてPR-800HDという今までのスタイルを変化させずに正当進化してくれています。
イベント現場で要求されるスピードと確実さを実現するためには、一目でわかるインターフェースが重要であることを再認識させられた。
各営業所合わせて6台のPR-800HDを所有
機器の4K対応について
現場で使われているPR-800HD
現在、実際の現場で全てを4K対応の構成とする機会は少ないとのことだが、相談は多く受けているという。シーマが考える4K対応の方法論についても聞いてみた。
石丸氏:まだまだ使用するのはスタンドアローンでHDというニーズが多いです。すでに、HDはデイリーユース、その稼働率を維持しながら4台組み合わせで4Kという可能性が用意されているのでPR-800HDを選択しました。
レンタル業務・イベントオペレーションという、あらゆる環境を想定した業務を通じた経験がシステム提案などの現場にも活かされている。
マンションモデルルーム向けにプロジェクションマッピング
屋外の大型プロジェクションマッピングも手がけるシーマだが、最近ではマンションのモデルルーム内に設置するタイプのマッピングなども手がけているという。従来のショールームや博物館向けのシステム提案との違いについて、システム設計を担当する橋本氏に聞いてみた。
株式会社シーマ システムインテグレーショングループ セクションマネージャー橋本英昭氏
橋本氏:マンションモデルルーム内に、プロジェクションマッピングのシステムを導入して、立地やアクセスからブランドストーリーまでを1つのコンテンツとしてみせていくことが増えて来ています。話が来てから1~2ヶ月で仕上げることもあり、システム提案の分野でもスピード感が変わって来ていると思います。新しい技術を用いていますが、オペレーションはモデルルームの担当者が行うことになるので、展示用システムなどで培ったノウハウを活かしながらシステム構築をしています。
スクリーンスタンド
これからの可能性
同社の受付にあったマッピング用模型
映像クリエイターから、イメージした演出を実現するための相談を受けることもあるというシーマ。これからの映像演出について考えを聞いた。
石丸氏:今までは、ハード屋さん・ソフト屋さんという風に別々に動いていたものが、演出のためにそれらを結びつけるロジックを担う必要性が出て来ました。シーマだけで実現するのではなく、クリエイターの方々と連携しながら、技術屋として提供出来るロジックを構築して行きたいと考えています。機材に関連した部分では、現場で使用する製品のアートネット対応準備を進めていて、例えば、今までは別々にオペレーションを行う必要があった複数機器間のコントロールも、統一したプロトコルによって制御することが可能になればオペレーションのハードルは上がるけれども、提供出来るソリューションも高度なものにしていくことが可能になります。
今回の取材を通じて
プラダンケース(シーマオリジナル商品)
社員の成長をサポートすること、統一規格の重要性についてなど、映像業界全体の発展も見据えた発言を聞くことが出来た。オリンピックなど大型の国際イベントも控えて、ますます発展するであろう空間演出分野でのシーマの活躍に期待したい。