ALL PHOTO BY NAOJIRO YASUI

赤い衝撃!再び!

HAYASHI_RED01

DaVinci ResolveとBoris Continuumのお話の続きをするつもりだったのですが、ちょっと見逃せない話題が立ち上がったので、今回は先にそれに触れたいと思います。NAB2015にてREDからWEAPON DRAGON CARBON FIBER(以下、CF)とWEAPON DRAGON MAGNESIUM(以下、MG)が発表された。

スペック上大きなトピックは、

  • 将来の8K対応プラットフォーム
  • R3DとProResフォーマットの同時記録
    CFは最大120fps MGは最大60fps
  • 3DLUTに対応
    CFは33グリッド対応 MGは17グリッドまで
  • ProRes単体記録の場合はフレームレート任意
  • HDMI 4K出力はファームウェアアップデートで将来的に対応
ds2015_18_20

というものだ。サイズも現行のEPIC DRAGONよりも一回り小さく軽くなった。8Kを見据えるカメラとしては、驚きの小ささだ。センサーはDRAGONセンサーを継続している。REDはRED ONE(本体)→Mysterium-X(センサー)→EPIC(本体)→DRAGON(センサー)と交互にアップデートしていくのがサイクルだ、といっている。確かにそうであり、今回も順当に進化したアップデートと言える。

そしてアップデート価格が、CFが49,500ドル、MGが34,500ドルで、出荷は2015年夏からとアナウンスされた。

以上が、NABの期間中に現地に飛んだ、REDユーザー仲間であり尊敬するクリエイター、安井治次郎氏に協力して貰って整理した情報である。


さて、ここからが私感たっぷりのコラムになります。WEAPONを今か今かと待ち構えていた筆者の第一報に触れた感想は、「うわぁ…。高いなぁ…」というものでした。個人的にはすぐにもボタンを押して、誰よりも早くオーダーしようと思っていたのですが、想定範囲外の価格に、目論見は外れてしまったのでした。

HAYASHI_RED02

正価でCFは600万級、MGは400万オーバー。行くならCF以外は考えられず、色々買い換えも必要なので、あらあらあら、と。

「将来に8K行くよー」というのと、外部記録機材を使わずともProRes素材にLUTを当てて記録できる、というのが目立った売りであるといえますね。

ds2015_18_20

筆者は、ProRes周りは普通に外部周辺機器を使って処理してしまっている。R3DとProResのパラレル撮影は、番組制作で「120fpsまでのProResがあれば良し、6KRAWはいざって時の保険として、ProResで完パケまで持って行く」ワークフローが考えられて良い感じ。

ProRes単体記録の使い所は難しいかな、という印象です。例えば現場で、RAW+ProResで撮っておけるものをProResだけで記録していいよというのは、年間通してレギュラー番組を廻している制作会社さんならいざ知らず、なかなか使う機会に恵まれないのでは。R3D+ProResはハイバジェットオンラインとローバジェットオンラインの間を適宜使い分ける運用に適していそうです。柔軟なワークフローが考えられますね。


世界的な反響は、「すぐ行くぜ!!」という人。「えええ、この金額は厳しい!」という人。拮抗しています。EPIC DRAGONユーザーで厳しいと感じている人にしてみたら、加えて一番のハイエンドにいたものが突然3番手になったわけですから、これは複雑な気持ちになりますね。8Kセンサーに移行するとき、いやが上にもEPIC DRAGONとSCARLET DRAGONはディスコンになっていく。その後は、CFがEPIC DRAGONライン、MGがSCARLET DRAGONラインという風になっていくのでしょう。

REDは何処に向かうのか?

HAYASHI_RED04

もともと、2007年の頃に恐ろしいほどの価格破壊で4Kカメラを出してきたREDは、瞬く間にユーザーを増やしていきました。「一緒に闘ってくれ!」というREDのスタンスにクリエイターが応え、その相乗効果が盛り上げてきた感があったように思います。イメージを形にしたい人たちにスーパーバジェットで無くても、制作できる術を与えてくれたRED。

そのREDも、今回の展開で少し企業の方向性が円熟の方向に進んでいくのが見て取れます。キチンとした利益率の確保を目指す、という姿勢。企業にはR&Dが必要で有り、その結果としてカメラが発売される。そのR&Dのコストは膨大で有り、それを回収してさらなるR&Dを行うために、販売価格に反映される。当然のこととして、製品は高価にならざるを得ない。

この図式は当たり前で、これまでが性能に対して異常な低価格だったと言えなくもありません。そのかわり、例えばソニーやパナソニックといったメーカーの故障率の低さ、トラブルのなさから比べると、かなりやんちゃなREDでしたが。

今回の新製品発表は、これからも安定してユーザーが大喜びするようなカメラを出し続けるための、大きな舵切りだと筆者は感じています。すぐにWEAPON DRAGONの背中に乗ることは出来ませんが、やはり乗り続けたいと思わせる魅力がREDにはあるのです。

EPIC DRAGONのライフサイクルはまだまだ3~4年はある。その間にWEAPON DRAGONに出来る限り近づき、飛び乗るチャンスをうかがうつもりです。若く猛ったドラゴンは、円熟して穏やかになった。その優雅な振る舞いを愉しみたいと思う。

WRITER PROFILE

林和哉

林和哉

最新技術が好物でリアルタイムエンジンにゾッコン。Unity Technologies Japanの中の人。セミナー講師経験豊富。