土持幸三の映像制作101

txt:土持幸三 構成:編集部

動画編集用PCは、#Craftで

何回か書いたが、僕は川崎市の小学校で映像制作を教えている。子供達はハイビジョンカメラで撮影し、学校のパソコン室にあるPCでグループごとに編集を行う。PCの機種変更が遅かった学校は、つい最近までWindows Vistaで、搭載されている動画編集ソフト、ムービーメーカーはハイビジョンに対応していないため、ハイビジョンカメラで撮影した映像サイズを小さく変換して編集していた。

今年からは晴れてWindows 8.1搭載のノートPCになったおかげで、小さく変換する必要はなくなった。各クラス5~9グループあり、それぞれ1台のビデオカメラにSDカードを差して撮影し、編集の際はSDカードのデータを全部USBに移して、それを各グループ1台のPCに差して動画編集している。ハイビジョンのサイズではあるが、画質を落として非力なノートPCでも編集できるようにしているので、USBから直接読み込んで編集しても子供達は気持ちよく編集ができている。

古いフィルムの時代と違って現在の動画編集はPCで行われるのが一般的になっている。撮影機材や、その周辺機器はすぐに新製品が出て変化が激しい。しかし、その編集を行うPCに関しては、編集ソフト以外はあまり話題にのぼらない。よく「何(どの編集ソフト)で編集していますか?」と聞かれるが、「PCの構成はどうやっていますか?」と聞かれることは少ない。「やっぱりCore i7がイイですか?」と聞かれても、それだけでは目的次第で快適な編集ができないので答えようがない。映像関係の友人達と話していてもPCについては「Macを使っている」「Adobeで編集している」程度で、PCの構成までは話がいかない。

使用するツールは、自らチューンナップ

僕は95年末にアメリカに行ってから本格的にPCを使い始めたが、すべて自作で組み立ててきた。アメリカで日本語のPCは高額だったのが主な理由だが、本で調べたあと、インド系のパーツ屋に教えてもらい、思ったより簡単にWindows 95のPCが組み立てられ、問題なく動いたのでそれ以来、ノートPC以外はすべて自作PCで仕事や動画編集をこなしている。

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自作PCの良い所は、使用する目的が明確であればかなり安価でパフォーマンスが良い(最近ではBuild To Orderも増え比較的安価である)PCであることと、パーツのアップグレードが簡単にできることである。大手PCメーカーの製品は中身を開けた時点で、ほとんどの場合保証はなくなってしまうのでパーツを取り換えるのは勇気が必要なうえ、メーカー独自のセッティングなどがあって、パーツで購入したものが取り付けできないこともある。動画編集用とうたっているPCもあるが、ほとんどあまり意味のない構成になっている。動画編集用のPCで気にすべき主なことはCPU、メモリー、ビデオカード、記録デバイス(ハードドライブ等)だが、だいたいの場合CPUとビデオカードは合格点をあげることができる。

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しかし、メモリーの容量と記録デバイスはなぜかいいかげん?な構成で、せっかくのCPUとビデオカードを無駄にしている感がある。メモリーなんて安価なうえに作業効率をあげるのに効果大なのになぜケチるんだろうと思ってしまう。Adobe Premiere CCとAdobe After Effectsを同時に使うと10Gぐらい使用するが8Gしかない場合が多い。記録デバイスに関してもOSが入っている1つだけなんて本気なの?と言いたくなるぐらいだ。最近ではハードディスクに変わってSSD(Solid State Drive)の性能が上がり値段もかなり下がって来たのでOS用とデータ用に使用できるようになってきているのに、データ用に大容量のSSDや複数のSSDを選択できる道はかなり限られている。結局、自分で容量を増量しようとするとPCを開けてメーカー保証を捨てなければならないので、最初から自作した方が良い。

tsuchimochi_vol07_SSD_HDD

僕が現在使用しているPCの構成はCPUがCore i7 Bloomfield-2.66GHz、ビデオカードがGeforce GTX660、メモリー24G、OS用のSSDが250G、記録のSSDが250Gと500Gにブルーレイドライブがある。記録用のデバイスとして、以前は容量が2テラのハードドライブを4つ使ってRAID10を組んでいたので容量はかなり落ちるが、SSDにした事でスピードは上がり、この構成で4Kの編集ができている。このPCは5年ほど前に購入して、ハードドライブをSSDにしたり、メモリーを増やしたりと少しずつアップグレードしている。

このような事ができる点が自作の大きなメリットだ。これらのパーツを取り付けているマザーボードの基本性能が限界になりつつあるので、さらに4Kでの仕事が増えるであろう来年あたりは全て新しくする予定だが、それまでは愛情を持って使って行こうと思う。自作PCで編集する人が増えて情報交換が盛んになる事を切に願う。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。