txt:岡英史 構成:編集部

EDIUSって何?〜思えば長く使って来たなー

http://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2016/04/NF_vol56_EDIUS8_02.jpg 今回のイチオシ機能、プライマリーカラーコレクション
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「EDIUSって何?」と言われてた頃が今や懐かしい位に色々な所に浸透してきたのはEDIUSを初期から使っている者としては非常に嬉しい。かつては、NLE(ノンリニア編集)と言えばAdobe PremiereやAfter Effects、もしくはFinal Cut Proがプロなら定番ソフトと言われ、プラットフォームは完全にMac OSのみだった。

映像クリエイトはMacしかない!と言われた日から実はMac嫌いになってWin機を自作、オーバークロックしたCPUパワーでカノープス製品DV-STROM(現在のグラスバレー)を実装し、幾多の動画を製作して来たことを今でも思い出す。正直DV-STROMが無ければNLEに移行できずに時代に取り残されていたかも知れない。途中で何回もMac環境に移行しようか迷ったが、Win環境に慣れ現在に至っている。とは言えRexEditは動作こそ非常に軽いが、タイトルやエフェクトに関してはAdobe PremiereやFinal Cut Proには全く敵わないのも事実だった。

その辺りにEDIUSが登場した。当時は正直使いづらくとても業務で使えるソフトではなかったことをここで告白しておこう。Ver.3辺りからようやくEDIUSがしっかり動くNLEソフトになったが世間的には「EDIUS…それ何??」存在だった事も事実。その後バージョンが上がる度に完成度を上げ、ユーザーの期待に応えて来てくれた。Pro 7でHD編集としては一つの完成系に近づいたと感じてた。

4K編集に関してはいち早くPro 7で対応していたが、単純に編集出来ると言うだけでは既に時代にマッチしなかったが、エボリューションモデルのPro 8が登場。中心的なエンジンも一新し4Kファイルと言えどもネイティブで動くのがEDIUSの強みだ。

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エフェクトのフォルダーに入っているプライマリーカラーコレクション。使い勝手の良さはEDIUSならでは

EDIUSで4K 〜ネイティブかつ軽快な作業

EDIUS Pro 8での4K編集は確かにネイティブで動きかつ4Kレゾリューションとは思えない程軽く動く。これは特に速さが命のブロードキャストの現場では最強の武器になる。しかし4Kがスタンダートになってきたのと同時にLog収録も多くなって来たLogはBlackmagic Design DaVinci Resolveで処理が半ば当たり前になっていた。

De-log機能が無かったEDIUSは3wayカラーコレクション等でLogを処理してきたが、ようやく今回のバージョンアップの新機能「プライマリーカラーコレクション」ビデオフィルターを使い、De-logすることが可能になった。今回実装しているカラースペースはCanonが5個、Sonyが5個、Panasonicは1個、それにBT.709やBT.2020等が搭載されている。残念ながらJVCのJ-Logのカラースペースはまだ実装出来ていない。その辺は次のバージョンアップに期待したい。

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今まで3Wayカラーコレクションをこねくり回さないと出来なかった事が一発で決まる。これは快感だ


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プリセットから選ぶだけでしっかりと色が出てくる(ソースはDVX200/V-Log)
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プライマリーカラーコレクション+3WayCCを使うことで思い通りの質感に近づけることが可能になった
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今回のこの実装自体は既に他のNLEでも出来ていることなので正直「やっとキター」と言うのが本音。CP+2016のスニークレビュー時にαバージョンだったのが2ヶ月で製品としてリリースしたスピードは、驚異的なことといえる。開発者の努力を見せつけられた思いだ。プライマリーは前記した通り主要なカメラメーカーのカラースペースが何種類か入っているが、例えば今回カラースペース対応がされていないJ-Log等は使えないのか?と言えばそんな事はない。パラメーターはRGB処理で各々細かく調整できるので楽に追い込むことができる。何と言ってもEDIUSと言えばミドルレンジ映像作家に取っては優しいNLEだ。

まだ筆者を虜にする理由は、山ほどある。MPEG系のファイルならフォーマットやビットレート・フレームレートに関係なく何でも読み込み可能なことが特徴だ。そして何も考えなくても即座に編集始められるGUIの良さが売りだ。今回のプライマリーカラーコレクションに関しても非常に取説が良くできている。どのパラメーターは何がどう動くのかを例題を含めて解りやすい。4KやLog収録が中々垣根が高いと思われてる方には特にお奨め!トーンが変わるというのがよく解るはずだ。

※残念ながら今回のバージョンでは.cubeの入力には対応していない。次回のバージョンアップに期待したい。

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マスク機能にトラッキングが追加

モーショントラッキング

元々EDIUSのエフェクトの中にはマスキングも実装されていて、もちろんキーフレームをポイント毎に打ち込むことでそのフレーム間を補間してくれるため、それなりのトラッキングエフェクトが使用可能。単純な映像ならそれほど苦もなく再現できるが、対象物が上下左右への移動量が多かったり、収録時間が多いとそれなりに手数も増えるために手間が掛かる。その手間数を今回のバージョンアップで自動生成してくれる様になった。

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その方法も非常に簡単で、マスクをしたい対象を選択し、ダイアログからトラッキングの項目を選択し順方向へのトラッキングをスタートさせるだけ。なおこのスタート位置は実際のスタート位置ではなくてもOK。どちらかと言えば被写体が明確に区別出来るポイントを指定した方がより効果がある。もちろんこの位置からの逆方向へのトラッキングも可能なので、そのポイントから前後する事でマスクポイントを確立させることが可能だ。

またこのトラッキングの変換時間が非常に早い。特にHD画質に場合20秒前後のクリップなら2世代前のノートPCでさえ習慣的に生成してしまう位だ。ただし被写体とそのバックグラウンドが微妙な場合(例:白壁に白い洋服等)この自動生成も外れてしまう事がある。今回使用したクリップだと完全に独立している部分は大丈夫だったが、木々に囲まれている部分は誤認識をしてしまった。勿論この誤認識の部分は後から、正しいキーフレームを打つ事により修正は可能だ。

http://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2016/04/NF_vol56_EDIUS8_21.jpg 一度覚えてしまうと非常に便利なGV Browser
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メディアブラウザーからDITツールに格上げか?

今回GV Browserも進化した。このソフトは日本ではなかなか使っている方が少ないのだが、海外ではかなりヘビーユーザーがいると聞く。筆者自身も最初はEDIUSに特化したファイルサーバーだと思っていたが、使っていく内にタグでの種類分けや、必要なファイルを直ぐに見つけられる等、なかなか便利なツールである。今回EDIUSがDe-logに対応したことにより当然GV Browserも同じ様に各種のカラースペースを搭載し、それぞれLog収録したファイルに対応可能になった。 NF_vol56_EDIUS8_25

REC.709を含む、12種類のカラースペースに対応した

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写真左:収録素材、写真右:カラースペース適用(V-Log)
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ただ余程のハイエンドPCを用意しないと4KでLog収録したファイルはスムーズに見ることが出来ない。コマ落ちしすぎてカクカクした映像を見てもイマイチイメージが掴み難いが、EDIUSとGV Browserのプレビューは素材の解像度をそのまま出力しているため、ノートPC等ではさすがにキツイ。マシンパワー依存なのでしょうがないのではあるが…。その部分を解消するように今回のGV Browserはドラフトプレビューを搭載した。これは素材ファイルのレゾリューションを小さくしてプレビューするもの。これにより一世代前のノートPCでもLog収録した4K素材を適切なカラースペースを当てて確認する事が出来る様になった。

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ドラフトモードはフルレゾリューション含めて全部で5種類

総評

今回のバージョンアップでEDIUSに足りないモノと言われてた装備が実装された。元々動作感は他のどのNLEにも軽快で動く。その軽さが相まってミドルレンジは元よりテレビ系のターンキーモデルも含めて広がっていったが、Log収録が絡むとDe-log機能がなかったため、その部分を他のソフトで行ったりとやはり使い勝手が悪かったのも事実。今回.cube等のLUTは入出力出来ないが、Sony、Panasonic、Canonのカラースペースを搭載した事でその使用方法も変わってくるだろう。

もちろんこの他のメーカーのLogファイルであっても直接パラメーターを調整することにより、完全にDe-logするのは厳しいが、よりイメージ通りに近づける筈だ。同時にGV Browserでファイルを管理・プレビューが広く出来るようになり、現場での簡易的DITツールとしても使える。また今回は素材の関係でチェック仕切れていないがSony及びCanonのRAWファイルも扱えるようになった。かなり進化したEDIUS。今後も更に楽しみになってきた。

EDIUSWORLD.COM
http://www.ediusworld.com/jp/

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。