txt:川井拓也 構成:編集部
一脚で簡単に撮れるドローン風映像の擬似空撮は都市部にぴったり!
「どうも、川井拓也46歳です」
DJI Osmoの発売時にこれは「擬似空撮」「擬似スライダー」「擬似ステディカム」になり得る!とPRONEWS Mag Vol.03に書きましたが、この度ついに上下の歩行揺れを機械的に補正する純正オプション「Z-Axis」の登場で「擬似空撮」の完成度が劇的に向上しました!「擬似空撮」はドローンの飛行規制が厳しい都市部にこそぴったりで、特に群衆の頭上をフライオーバーしていく映像が撮れるのは画期的です。ジンバルや光学手ブレ補正のビデオカメラは各メーカーが出していますが3m/5m/7mの一脚の先につけても重量をほとんど感じさせないDJI Osmoの独壇場と言えます。今回はDJI OsmoとZ-Axisを組み合わせた「擬似空撮テクニック」をテストショットを含めてご紹介してきましょう!
「Z-Axis」
「擬似空撮」は本当に「空撮」に見えるものなのか?
OsmoとZ-Axisで撮った映像が本当に空撮に見えるものなのか?これは百聞は一見にしかずなのでまずこちらの動画をご覧ください!
いかがでしょう?見えますよね!上空3mや5mのアイレベルでの主観移動ショットというのはこれまで「ブラタモリ」のインサートカットぐらいでしかお目にかかることがなかったので新鮮です。Osmo X3は20mmのレンズですが、当然ドローンでよく使われているレンズなので主観移動を前提に設計されています。周辺部に流れてもディテールがしっかり活きている絵作りなので4Kの30pで撮るか2Kの60pで撮るか悩みどころです。今回のサンプルはすべて4Kの30pで収録しました。
OsmoとZ-Axisで走るとどんな映像になるのか?
歩行揺れを機械的に吸収するZ-Axisは、Ozmoのカメラ部とグリップ部の間に割り込ませるようにして装着するアタッチメントです。装着はとても簡単で上部にバネの強さの調整ダイヤルがついています。これにより激しく走りながら撮るときは固めに、歩きながら撮るときは柔らかめなどの調整が出来ます。歩き方が雑でバネが伸びきって底にあたってしまうと映像でもボヨンボヨンとなります。すべての上下動を吸収するものではなく、あくまで人間がASIMOのような歩き方で滑らかに歩いた時に発生する微妙な上下動を打ち消してくれるアタッチメントだと理解してください。
「擬似空撮」は比較的ゆっくりとした歩きで行うものなので、ここで走りながら撮ったテスト動画をお見せしましょう!
これは小学2年生のジョギングを後ろから追いかけながらOzmoとZ-Axisで撮っています。スマホは使わずグリップにあるジョイスティックでカメラヘッドを目視でコントロールしています。走りながらスマホを見るのは危険なので子どもの安全を考えノーファインダーで撮影しました。
20mmレンズの広角効果もあり、ものすごい速度で走っているように見えますが、実際はかなりゆっくりとしたペースで走っています。カメラは大人の腰のあたりから前につきだすようにして追いかけています。この時にカメラに振動がいかないように腕は地面から一定の距離にしています。ほぼ映画のステディカム撮影に匹敵するスムーズさを実感していただけると思います。特に急に子どもが曲がって地域センターの裏を抜けるところや止まっているクルマの間をすり抜けるところなどはOsmoのような小さなカメラでなければ絶対にムリなショットでしょう。
擬似空撮の基本的なセッティングはどのようにするのか?
擬似空撮にはOsmoを固定する特殊なシューを使います。これは匠工房が製作したシューでOsmoの軸をずらさずに一脚や三脚に固定することが出来ます。Z-Axisは角度を調整することができるのでバネが地面に並行して動くような向きに固定します。バネの強さは調整ネジでプラスとマイナスにすることが出来ます。風が強い日などは横風で揺らされたりするのでバネが底付きしないように調整します。音声に関してはOsmoの内蔵マイクはほぼ使いものにならない感度と音質なのでプラグインパワーのマイクを使用します。今回は本格的なマイクが間に合わなかったのでソニーのボイスレコーダー用のステレオマイクを装着しました。
擬似空撮の理想は2パイロット体制です。カメラをしっかり安定させて動かす人と、カメラヘッドを操作する人を分けます。ひとりで行う場合はスマホを使うことになりますが、カメラヘッドのコントロールに気を取られて人にぶつかったりすると事故につながりますので、最小限の操作にするよう心がけます。一脚を伸ばして消失点をしっかり設定したらあとは歩きながら一脚自体の回転などで調整したほうが安全です。
コントラストの強い日中などに擬似空撮を行うと露出補正が必要になります。その時は立ち止まって周囲の安全を確かめてからスマホにタッチして露出補正するのがよいでしょう。X3はセンサーが小さいので露出補正にも限度があります。昼の11時から12時くらいの太陽がまんべんなく街にあたっている時間を選ぶなどの工夫が必要になるでしょう。
スムーズな擬似空撮のコツは2つ!「まっすぐ進むこと」、そして「上下に揺れないこと」です。まっすぐ進むというのは撮影する場所の人混みや状況にもよりますが、まるで参勤交代のように一脚を持って真剣な顔でそろりそろりと歩いていると道が自然にひらけて来ます。また歩き方としては能のすり足やASIMOの歩行のように足は動かすけど腰は上下に動かない歩き方がベストです。毎日のように商店街や街を擬似空撮していると速度感覚や歩き方のコツのようなものがわかってきます。最初はドローンのように移動感が重要かな?と思っていたので早足で歩いていたのですがX3の20mmレンズでディテールの多い商店街などを擬似空撮しているとゆっくりのほうが画面左右に消えていく看板やネオンなどがよく見えて面白いと感じるようになりました。
ストリートビューよりスムーズに街を見渡せ、ドローンでは絶対に飛べない群衆の頭上を飛び越せる!ありそうでなかった上空3mの低空飛行は観光や都市計画の映像資料として新しいジャンルを切り開くかもしれません!近いうちに「擬似空撮セミナー」を開催しようと思っています!詳細が決まりましたらまたお伝えします!