txt:岡英史 構成:編集部
カメラを載せる
大判撮像素子のカメラが一般的な価格になり業務レンジでも普通に使われるようになってから、カメラを載せるガジェット、いわゆる特機がいろいろと変化している。これまでカメラの下は三脚と言うのが定番だった。PV等で予算が潤沢なときにドリーに載っかる程度。それでも上に載っているのは三脚なので結局はカメラ+三脚のセットで動くのがミドルレンジのロケでは精々という感じだった。
それが、ブライダルで、シネマXXXと言うのが出てきてから色々なガジェットと組み合わせる様になってきた。それはスタビライザーであったり雲台付き一脚であったり、スライダーの登場だ。特に高機能で低価格の良い製品がLibecやManfrottoから販売されたのは大きい。
わずか50cm程度のバックの中にウェイト以外が全部入っている。ワンマンでの組立は前から後、バラシは後から前!
話を元に戻そう。スライダーにしろスタビライザーなどかつての特機は、一般的になってきた。使い方は、やや?マークが残るものもあるが、カメラを自由に動かして映像に印象を与えると言う演出は同じだ。確かに小型軽量で、しかも高性能というキーワードが揃ったからだとも言える。さらにこの特機が手軽になった理由は、やはりワンパンオペレートする際に出来るだけ労力を減らしたいということだ。労力と言うよりも技術力かも知れない。深度の浅いセッティングのまま三脚でパンすれば、確実に始点と終点で距離感が変わる。それに併せてフォーカスを動かさなければいけない。スライダーはそう言う意味では並行移動なので、その部分は必要がない。良くも悪くもなかなかいい発案である。
そして深度をコントロール出来るカメラはVPの現場でも使われる様になった。そうなると、いかに滑らかに動かすことが大事になってくる。とは言え撮像素子の小さく深度の深いデジに比べると明らかに深度の浅いカメラはセッティングに時間が掛かってしまう。物撮りにしても少し画角を移動するだけでも2~3分のセッティングが掛かる。それを20カット行えば確実に1時間以上はかかるだろう。その部分の補整でスライダーを使うのは良くあること。その時に使う物は長い物ではなく、40cm前後で十分、ちょっとだけ動けば良いのだから。
水平から上下約20cmの可動範囲
Chibi JIB Go!
JIBと言えば大体がアーム長1m位の物で可動範囲は大体上下で2m前後、一般的にMiniJIBと言われている物が多い。これは高さをダイナミックに表現するのに最も効果的だ。それまでは高低差を出すにはもっと大きな機材を使い、ワンマンオペレートをする物ではなかった。MiniJIBと言うジャンルがそれを可能とした訳だが、大きさは持ち運びも含めて「気軽に」と言う意味では少々難しい物がある。
ではそれがもう少し小型化されればどうなのか?幾らアームを詰めてもそれなりの長さがあるので細かい動きは難しい。MiniJIBはそう言う物なのでそれはしょうがない。では更にアームが短いChibi JIBならどうなのか?これはいろんな意味で面白いと思っていたところ、Photo NEXTで面白いJIBが参考出品されていた。それが今回の「KONOVA SUN JIB」だ。
横に並行移動しながら、上下に動く!
このJIBシリーズは通常のMiniJIBとジャンルは同じなのでアーム長90cmものがメインだと思われるが、その種類の中に一際小さい物があった。型番「S400」から想像するに、アーム長40cmと言う事になる。つまり単純に考えるなら上下稼働が40cm+αと言う事だ。またSUN JIBは一般のMiniJIBと違ってアーム自体が二本のトラス構造が表に出ていない。なのでオペレートをはじめ、セッティング中でも指を挟むリスクは確実に少ない。またウェイトを積むリアセクションもカメラ側と1:1では無いので、室内等の狭い場所でも後のクリアランスを余り気にしないでもセットが出来る。この位コンパクトだと全てがワンマンでコントロール出来るが、そうなってくるともう一段動きが欲しくなる。通常のクレーン撮影はあの大きい物を動かす為に大概はトラックレールに乗っているが、Chibi JIBならトラックレール程の大袈裟な物は必要ない。そう、スライダーと組み合わせればX・Y・Z軸の全てをコンパクトに制御できる事になる。
実戦。その実力は?
ホンの少し動かせるのは被写体が小さいほどその恩恵は大きい
スライダーとの組合せのChibi JIBは、スモール感も含めて非常にミニマムながら懐が深い。40cmの範囲で色々動く、ワンマンでしっかりとコントロール出来るのはいろんな映像を想像できる。実はFIX主体の物撮りに威力を発揮する。物撮り、特に小型の物を撮るときにその大きさから画角をイメージし難いことも多々ある。その都度三脚を移動し、高さを合わせ、レベルを出す。このセッティングは地味に時間が掛かる物だが、それが滑らかに直線運動出来ると話が変わる。大袈裟に言えば1cm単位で画角を自由に動かせるという事、つまりチョットだけ動く快感とでも表現すれば良いだろうか?これはカメラマンと言うよりディレクター系の方が意味は解るかも知れない。
ちょうどこのテスト期間中に、伝統工芸品の物撮りを4K収録するロケがあったので現場で早速使ってみた。古い仏像系の撮影が中心の日にChibi JIB+スライダーのセットを持ち込んで使ってみた。まず最初にChibi JIBだけで上下動、特に真俯瞰の映像を中心に画を作って行ったが、仏像自体が5cmの物から30cmの物まで高さにバラ付きがある為、その度に色々調整をしなければならない。ここにスライダーを咬ませることにより、確実にセッティングの時間が短縮できる。それはロケ時間の圧縮になるので結果的に全体が余裕出来るので見えなかった物が見えてくるので結果的に良い物が撮れる。
真俯瞰から並行移動できるのは中々の快感だ
ではスライダーとの組合せの場合、どれでも良いのかと言えばそんな事はない。少なくともJIB+カメラ+ウェイトの重量を支えられるだけの耐荷重がある事が必須条件。今回はローラーがレールに対して垂直方向で支えている物(Libec)と、樹脂ローラーで左右からクランプしてる物(Manfrotto)を比較してみたが、上からの重量をダイレクトにレールに押さえつけてるよりも、大型ローラーで横からクランプしている物の方が動きがリニアに感じた。
総評
かなり良いこと尽くめのシステムだが、それでもやはり不満は残る。まだβ機種なので細かい部分の不具合?は既に解決方向なので敢えて書かないが、カメラのレベルを出す為に三脚部分を調整しなければならない。一応ヘッド取り付け部分にボール形状が在るが50mm程度。これはフィールドスコープ等の雲台で使うサイズなのでビデオヘッドには小さすぎる。せめて75mmあるとこのシステムはかなり化ける事になるはずだ。また完全にDSLR系でFIX前提なら大型のスチル用自由雲台も取り付けが可能な様に、3/8inchネジも台座に在るのでそれを使うのもアリだ。
ここの部分が75mmだと非常に使いやすいのだが…
ここのアームの伸縮で微調整が効くが、500g位のアンクルウェイトをリアアームに巻くと更に調整簡単