土持幸三の映像制作101

txt:土持幸三 構成:編集部

創立60周年式典で披露する映像として申し分のない作品

前回前々回に渡り書いた、川崎市の小学5年生による、自分が通う小学校創立60周年記念式典に向けて自分達で企画し、地域の方々にインタビュー、撮影、編集までこなした作品の発表会が開催されたので行ってきた。発表会は父兄はもちろん、地域の方々も大勢観に来ていた。発表は各教室で、グループごとに子供達の簡単な説明のあと、大型テレビによって上映されるのだが、廊下に設けられた大型テレビではメイキング映像やNG集、映像制作の様子を寸劇にして見せたりと、来場者が楽しめるよう工夫されていて、廊下を歩く父兄も笑顔で鑑賞していた。

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60周年に向けて

僕も大学時代に何回も経験あるが、人に自分が創った作品を見せることは非常に緊張し、様々な質問に答えられるように準備も必要だ。子供達は自分の作品を見せたあと、緊張しながらも質問を受け付け、さらに父兄などにも感想を聞いていた。中には実際に出演もしているインタビューを受けた方が、作品を観た子供達の質問に答えていた姿も見れた。やはり現代の小学生は人前で話をしたり、質問したり、という事が僕らの頃よりも数段うまいと思ったし、感想もポジティブな意見や素朴な疑問が多く、下級生にしてみれば近い将来、自分達も映像を創るんだという意欲がうかがえて良かった。

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映像を見せる前に自己紹介

作品のクオリティに関しては、今回、編集ソフトを例年のムービーメーカーからVegas Proに変更した事が大きく表れていた。変更理由は、今回のインタビュー撮影が重要になることをふまえ、主に音編集機能アップと、複数カメラ使用によるタイムラインに二つ以上の動画を重ねておけるようにしたかったことの二つだった。

その効果はてきめんで、去年までは音が聞こえない作品が多かったが、今年はだいぶ減った。実はマイクのオンオフを勝手にできないように、つまようじを隙間に詰めて、物理的にオンオフが出来ないようにしたのはよかったが、マイクケーブルをカメラの外部マイク端子への差し込みが不十分で、音がマイクの音だったり、カメラで録音された音だったりという事も複数あった。子供の中には、ケーブルやUSBなどを差し込むのが苦手というか、壊したくないという思いからか、しっかりと差し込まない子供も多い。この辺りは僕の撮影についてくれたボランティアの方々への注意喚起が不十分だったと思うので、今後の反省点となった。

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宣伝ポスター

しかし、最終的にはこの問題もアフレコを教えたことによって、編集ソフト上で録音し、映像を観ている人には全く気付かれないクオリティで完成されていた。さらに複数のカメラによる動画の切り替えも、タイムラインに動画を重ねることによって、子供達に編集ポイントがわかり易くなったのか、スムーズに引き画から寄りの画への切り替えが出来ていて、観ていて気持ちがよかった。また、タイトルや字幕、トランジションの調整能力が上がったのと選択肢が増えたことによって、映像がさらに魅力的になって印象が残るものになっており、創立60周年式典で披露する映像として申し分のない出来であった。

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廊下ではメイキング映像上映

このクオリティは、子供達の頑張りももちろんだが、先生方の努力と映像制作授業にかけていただいた時間は相当であったあろうと容易に想像できる。当然、先生方の多くは動画撮影、ましてや映像編集の経験はない先生がほとんどだが、校長先生の好意でVegas Proの解説ムービーを購入していただき、それを見ながら編集作業を勉強していただいたうえ、僕が講師を務めた時間以外でもいろいろとやりくりをして時間をつくり、子供達に教えていただいたおかげて、このクオリティが実現できたと思う。小学校での様々な問題が取りざたされる昨今、このような先生方の目に見えない努力を感じることができて、僕は先生方に盛大な拍手を送ろうと思う。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。