土持幸三の映像制作101

txt:土持幸三 構成:編集部

アイデアを具体化して撮影、編集を経て発表するという体験

今月から川崎市の中学校で映像授業が始まった。小学校と違い、僕が講義するのは月に1度、2時間。その時間は1年生から3年生まで学年をまたいで参加し、普段の授業では見慣れないスポーツや芸術など、様々な分野の講義・実習に生徒が接する時間を設けているらしく、外部からの講師も大勢参加している。廊下で会うと大きな声で挨拶してくれる生徒がいる、印象の良い中学校だ。

僕の講義には映像制作に興味を持つ1年生から3年生までで約25人が5人ずつ5つのグループに分かれて参加している。実は昨年も講師を受け持ったのだが、講義回数が少なく、ポイントだけの講義でなかなか彼等のアイデアを固めることができず、結果、出来上がった作品は中途半端な終わり方をしたものが多くなってしまった。

今年はこの反省をいかし、講義ごとに進まなければいけない項目を明確にして作品を最後まで仕上げられるように工夫した。昨年の授業の後で映像に興味を持ってくれて放送部に所属し部長にまでなった生徒がいるとのことで、昨年参加してくれた生徒の思いに答えられず無念な思いが強かっただけに嬉しかった。

やはりカメラには興味深々

いつも教えている小学生と違い、中学生は自分のアイデアをある程度明確に持っているので、いかにアイデアを発表してもらうか、せめて個人のアイデアをグループ内で出せるようにして欲しいと思い、講義にのぞんだ。自分のアイデアが具体化して撮影し、編集を経て完成、発表する体験を彼等にも味わってほしいからだ。

今回、生徒に創ってもらう作品は、川崎市が行うかわさきPR映像コンテスト「かわさき、ええぞー!」に応募することになった。募集テーマは「“Colors,Future!いろいろって、未来。”多様性は、あたたかさ。多様性は、可能性。川崎は、1色ではありません」。このテーマに沿った作品を30秒以内のCM部門、または1分から3分以内のストーリー性のある作品向けのストーリー部門から選んで応募する。

事前に映像授業担当の先生がコンテストの内容を紹介。グループ内で話し合ってもらっていたので、まず現時点でのグループのアイデア、まとまっていないのであれば断片的なアイデアでも良いので発表してもらった。

個人でアイデアを考える

発表してもらった内容はテーマに適合しているか微妙だが、ゴミ問題を中心に以前の川崎と現在との違いを表現するグループが多く、あまり知られていない南武線沿線の街を紹介するというアイデアもあった。ゴミ問題といっても様々な問題があるので、ゴミの捨て方なのか、再利用なのか、処理の仕方なのか、清掃活動についてなのかを整理し、各々でそのアイデアを実現して撮影するには何が必要で、何を調べなければならないか考えてもらった。

個人で考えたアイデアをもう一度グループで発表した後、アイデアの変更は全く問題ないことを告げるた。すると30秒のCM部門に応募を考えていたグループがストーリー部分に変更したり、その逆もあった。またストーリーの内容を変えて明快なものにしたりと、アイデアを具体化すると様々な問題を解決していかなければならないことに気付いてもらえたようだ。そして、担当の先生による次の授業の時に絵コンテが描けるようにして欲しい旨を伝えた。

撮影の流れを体験してもらった

次回の僕の講義まで約一ヶ月もあるので、興味を持ち続けてもらうために撮影の様子を簡単に体験してもらった。監督の役目やカメラマン、録音の役目などを説明して、実際に体験してもらうと緊張のあまりミスを連発していたが、撮影の面白味は充分わかってもらえたと思う。残念ながら編集ソフトを使っての映像編集までは見せられなかったが、彼らの興味が撮影だけにとどまらず企画、絵コンテ、編集にまで連鎖してもらえるように担当の先生や川崎市、映像のまち・かわさきの方々と協力して彼等の映像制作をサポートしていきたい。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。