txt:岡英史 構成:編集部

Nitro(窒素ガス)と聞いて…

50xHDシリーズのブリッジングテクノロジー以来の新型ビデオヘッド

Nitroと聞いて内燃機の出力を上げるためのものと想像するのは余程の車好きだろう。筆者もその1人で、今年のNAB Showで初めてこのヘッドの説明を見た時に、性能云々よりもまずその名前だけで、欲しい!と思ってしまったくらいだ。簡単なインフォメーションはすでにNABでのレポートで書いたが、今回は実際に現場に持ち込んでの試用レポートというかたちで書いてみたい。ただし今回お借りしたものはNABでのデモ機より僅か前にでき上がってる、言わばα機と言うことを最初にお断りしておく。

実はこの三脚自体は1ヶ月以上前にお借りしていたのだが、7月は展示会などのレポートもありこの時期にまで遅れてしまった。決して、暑くてやる気が起きなかったんだろ?と言うことでは…まぁその辺は想像にお任せする。

Sony純正フルオプションのFS7と簡素なEA50迄同じ動きをトレースできる

話がそれたが、販売時期がチョット遅れてしまっているのも確かだが、今回実践で使ってみた感じ、ズバリ結果を言えば、ミラーレスカメラでもしっかりとカウンターバランスが取れる唯一のビデオヘッドと言って良いだろう。

NABでのレポートで、MAXなFS7がしっかりバランス取れているのは確認した。同じように中型軽量機種のEA50でもまったく問題ないのは確認していたのだが、それ以下のサイズ、特に1kg前後のカメラでもしっかりとバランスが取れるのは非常に便利だ。

この突き出たハンドル部分がカウンターバランスの調整ノブ

これは従来、油圧(グリス)での粘性やディスクの摩擦をスプリングの作用でバランスを取っていたので、特に1kgぐらいまでの軽量なものに対応するのは非常にコストが掛かり、それに伴った価格では採算が取りにくいと言う話を良く聞く。筆者も含め撮影を生業にしてる方なら、多少高くてもしっかり動く三脚は欲しいが、実際はそういうニーズだけでは小型三脚の分野では厳しいのだろう。

このNitroTechは、今までのカウンターバランスのトルクを油圧ではなく窒素封入されたピストンを使うことにより数字上は1gからバランスが取れる計算になる(あくまでも机上計算でしかないが)。窒素封入ピストン使用と聞くと、その価格が気になるところだが、このパーツ自体は汎用品にもある種類なので高機能の割には部品単価は抑えられているらしく、このヘッドも予価はかなり押さえて想定されている。

軽量コンパクトヘッドの真価を問う

プレートはワンタッチで取り外しができ、最近の流行に乗って上抜きで脱着可能。RIGを組んだDSLRではこの機構は非常に便利だ

NitroTechの一番の特長は、そのコンパクトなヘッドに集約できる。絶対的に大きなカメラを載せることはできないがFS7をMAXと考えれば、業務用ハンドヘルドカメラならほとんどのものを乗せられる。実際運用して脚の高さをいつも通りの高さでセットすると、VFの位置が若干下がっている。カメラ自体は同じなので絶対的な三脚の大きさと言うことになる。

その動きは、カウンターバランスは前記した通り軽量なDSLRからFS7クラスのカメラまでしっかりとバランスを取ることができる。チルトロックとカウンターバランス、ドラックダイヤルは全部左側に集約されているので、パン棒を振りながらの微調整も可能だ。ドラックに関してはまだ製品版ではないので評価には値しないが、βテスト機の前のα機としては今までの安価なManfrottoヘッドを使ってる方なら、その動きにビックリするはずだ。

下から窒素シリンダーが出てくるのではなく、上のローラーが上下してカウンターバランスを取る

またフラットヘッドを採用しているので、同社のスライダーSKU MVS060Aとの組合せもバランスが良い。組み合わせる脚はいまのところカーボンモノチューブ、アルミモノチューブ、ツインチューブの3種類を予定している。このヘッドの使い道で脚部分が変わってくるが業務用ハンドヘルドを使用するならセットアップの早いツインチューブ、大判撮像素子カメラなら高低差の大きいモノチューブでのセットをお勧めしたい。

総評

見た目以上にコンパクトなヘッドはロケ撮に行く時、特に公共機関(電車・飛行機)を使う際は、チョットの大きさで持ち運びに左右されてしまう。飛行機を使うようなロケはグラム単位で軽さが関連してくるので、泣く泣く一回り小さいヘッドを持って行った方も多いだろう。NitroTechならワンマンでのロケ規模で持って行くようなカメラなら、この一台で問題はないはず。そろそろ製品版も出て来る頃なので、もう一度レポートしたい。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。