txt:土持幸三 構成:編集部
三日間の映像制作講座
今年も夏休みに茨城県行方(なめがた)市へ専修大学ネットワーク情報学部の学生と「なめがた子ども放送局~テレビ番組をつくろう~」と題する映像教室の講師として伺った。茨城県は地元の民放テレビ局がなく、インターネットでの放送や番組制作に力を入れているそうだが、行方市では防災無線の補充もふまえエリア放送を行っており、そこで放送するローカルな番組制作を専修大学や吉本興業などと行うという、おもしろい取り組みを行っている。
川崎市での小学生向け映像教育は5年生・6年生が対象だが、行方市の場合は夏休みということもあってオープン、つまり低学年生でも参加できる。正直言って、低学年生に映像制作ができるのか?その前に講義を理解してもらえるか?と不安があった。内容としては3日間で2分程度のストーリーをつくって撮影、編集を行い、短編動画として最終日の午後に保護者に上映会を行うというもの。
やはりゼロからストーリーを創っていくのは、小学生だけでなく誰にとっても非常に難しいので、下準備?が重要になってくる。今回のような短期集中の場合、最後まで動画を完成させるには映像制作に興味を持ってもらい、彼等がロケハン時にどれだけ物語を想像できるような提案ができるかにかかってくる。
霞ヶ浦ふれあいランド
会場となったのは霞ヶ浦大橋のたもとにある霞ヶ浦ふれあいランド。その中から「水の科学館」とその周辺にロケ場所をしぼり、全員で館内と周辺を歩いた。歩きながら、僕が気になった場所で考えられるストーリーを話していく。「ここに宇宙人がやってきたら?」「これ、秘密会議をする場所としていいんじゃない?」「あの橋から向こうは別の世界があるかも?」などと言って彼等の想像力の感度を少しでも高める努力をした。「水の科学館」だけあってSFっぽい話を考えている子も多く、ロケ場所を見ながら「こういう話にしてもいいか?」などの内容的なことから撮影方法まで質問も多く出た。
映像制作開始
絵コンテを並べて物語を創っていく
ロケハンが終わり、高学年と低学年がある程度均等になるようにグループを分け、ロケハン場所の写真を液晶テレビに流しながら、まずは一人一枚の絵コンテを描いてもらった。あの場所でこんなシーン、こんなことが起こったら楽しいだろうなというものを描き、描き終わったら僕に一人ずつ絵の説明をしてもらった。
今回の参加者は5年生から2年生までだったが、この一人一枚の絵コンテの時点では低学年、高学年の差は全く感じられず、いつもながら、それぞれが僕等では考えられないようなアイデアを出してきて感心してしまう。
初日はグループ内のそれぞれが書いた絵コンテを5年生が中心となって一つのストーリーにまとめていく作業までを行った。この5年生たちが優秀で、下級生の意見をうまく取り入れて僕へのプレゼンも完璧にこなし、翌日の撮影に必要な物もキチンと誰が何を用意するかまで決めてくれた。この絵コンテ作成がうまくいくと一安心で、あとはプロ仕様のカメラと編集ソフトを使って楽しんでもらえばよい。
やはり二日目の撮影は楽しんでもらえたようだった。カメラがプロ仕様で大きく重いので大学生のサポートが必要になるが、教えておいた同ポジなどのテクニックも使いながら撮影を終わらせ、早いグループは午後からさっそく編集作業に入った。編集ソフトはVegas Proを使用し、パソコンが得意な子はショートカットもすぐに覚えて作業を進めていく。
宇宙人か?
三日目は編集作業で用意した音楽や効果音を使用し、午後の上映に向けて寸前まで作業をおこなった。このあたりの様子を見るとやはりクリエイティブなことに没頭するとプロも小学生も同じだなと思う。時間ギリギリまでねばる。上映した作品を見た保護者は一様に驚いた様子で、小学生がここまでの映像を創れたことに驚きを隠せないようだった。
僕が今回、素晴らしいと思った一つは「特に映像に興味があるというわけではないが、何でもチャレンジしてみようと思った」と話してくれた児童がいたことで、またまた子供に教えられたと痛感し、自分を恥じたのだった。