txt:岡英史 構成:編集部

BIRTV2017

すでに9月特集でBIRTV2017のことは、お伝えしたが、まだまだ足りない!今回は個人的視点かつ特集をブラッシュアップするという意味で再度BIRTVを取り上げてみたいと思う。さて、海外の放送機器展では日本から一番近い中国(北京)で開催されており、その存在は10年くらい前から知ってはいたがどうも気乗りがしないというのが本音だった。その理由の一つとして、アジア諸国の製品はコピーものというよりバッタものが多い印象があり、そのような中での放送機器展はあまり良いイメージがなかった。

実はXF305の中国プロモーションに、スイッチャー侍こと小寺氏と共に北京には出向いており、その時の印象からいろいろな思いが交錯していたが、やはり言葉が全然わからないのが一番のネックだった。そんな中で今回は、中国語OKのプロ機材ドットコムの長から通訳+現地でのアテンドを申し出て頂き、小寺氏もそれに賛同するかたちで久々の炭火兄弟での訪中となった。とはいえ今回初の中国放送機器展は7年前に初NAB show参戦と同じような感覚で、正直初日はどこに何があるのかを把握するのが精一杯。今回は初参戦ということで、期間も初日から2泊3日の短期決戦であるため流し見的な部分はご容赦頂きたい。

Panasonic

今回のBIRTV行きを決めた大きなポイントは、AU-EVA1の実機登場の噂意外他ならない。初日はPanasonicブース自体がどこにあるかもわからず右往左往したのだがようやく二日目にしてブースを発見。日本人スタッフにお願いし、実機を触りまくった。

NABでは文字どおりベールに包まれて展示され、続くCineGearでその概要の展示、Panasonicお膝元での関西放送機器展(以下:KBEE)ではようやく最終的なデザインともいえるモックの展示と、今回の演出は面白かった。実際可動している実機はでき上がったばかりのβ機以前の機種と思われるが簡単にVFを覗いたところ、ノイズやバグがあるわけでもなく、非常に完成度の高い実機展示だった。

もちろんマウントはアナウンス通りのEFマウントであり、今回はCanon CN-Eレンズが付いていたがガタもなく、しっかりとマウントされていた。EFレンズでのAFやAEの追従性を確認したかったが、それはまた別の機会でレポートしたい。今回同時期に出てきたCanon EOS C200が色域にこだわっているのに対して、あくまでもハイレゾリューションからの切り出しで、4Kでの質感を狙うEVA1はどちらを選ぶかがかなり面白い選択だろう。

Sony

Sonyはメインと思える8号館に展示。初日すぐに発見できたのは、人の流れが方向づいているからだ。こことPanasonic(3号館)の展示会場は非常に洗練されており、他の日本メーカーも、ほぼこの2つに集約されているといって良い。Sonyブースの展示は、特に新製品があるわけではないので既存の製品のバージョンアップに留まっていた。

その中でも小型スイッチャーであるMCX500を小さく綺麗にワンパッケージ化し簡易伝送と組み合わせた展示はなかなか面白い。Sonyとしては大型のシステムでこのようなパターンは、NABをはじめ各展示会場では目にするが、やはりCATV等の小さい放送局が多い国では小さいパッケージでの運用というのは理にかなっている。またアジア地区限定の小型セミショルダーカメラ(中身は民生機ハンディカムにショルダーボディを併せたもの)展示が中国らしい。

Canon

カメラブースはEOS C200にはじまりEOS C200に終わるという感じのレイアウト。KBEEやQBEEとほとんど同じカメラレイアウトとガジェットの組み合わせだ。大型ドローンと200Bを組み合わせてジンバル部分をコントロールできるレイアウトは、疑似空撮体験っぽくて個人的には面白いと感じた。

C200と組み合わせているほかの補機類(リグやモニター、ガンマイクなど)をしっかりとそのメーカーや品番まで展示しているのは、このカメラをセットアップする上でもわかりやすく良い展示だ。

JVC

NABから一貫してHM200を使用しての簡易中継システムがメインの展示。さすがに韓国のKOBA showもそうであったが、アジア圏の小規模伝送の現場は非常に多い。日本で少ないのは、日本の電波法にも関わってくる部分でもあるのだろう。さらに日本国内ではまだサービスが始まっていないネットワークスイッチングシステムの実践展示が目を引く。実際はネットワークを跨ぐことによる遅延の処理が一番のキーポイントになるが、同じシステム内で一番遅延しているTCに、全てのソースを同期することにより、映像のズレを防ぐもの。このシステムがしっかり可動すれば特にENGでのロケやオープン収録がかなり画期的になると想像できる。日本でも早めの可動を望みたい。

HDAVS

E2CAMというものをご存知だろうか?このメーカーを筆者は今回はじめて知ったが、中国国営放送局でのスタジオ系カメラヘッドの約半分のシェアを誇っているメーカーだ。メディアにはiVDRという規格を使い、その中身は2.5inch SSD(またはHDD)を使用して記録する。フォーマット自体はPanasonicのP2互換。

このメーカーの面白いところは中国製品?なのに社長は中国から日本国籍(帰化)を持った中国人で、しかも本社は東京の錦糸町にあり立派な日本企業ということだ。今回の展示は4Kハンドヘルドをメインに、HDから4Kにシステムを移行したスタジオでのソリューションだ。このハンドヘルドカメラが秀逸で、中身の撮像ユニットを変えることでHDから将来的には8Kユニットも想定しているという。同時に4KのENGショルダーカメラも展示していたが、撮像版がRGBGの4枚を搭載していることでハイクオリティーな4K収録が可能となった。もちろんマウントはB4マウントなので、既存のENGレンズを使えることも特長だろう。

Saramonic

マイクおよびマイクアンプ周辺の機材を専門に扱っている中国メーカー。ワイヤレスも十数種類のものが展示してあったがこれらはデザインがどこかでよく見たものばかり。実際の性能は国内では使えないので除外して、注目したいのはマイクとカメラを繋ぐためのマイクアンプだ。

大小様々なものがあるが、基本はXLRで受けたものを3.5mmのステレオジャックでアウトプットするもの。つまり民生機やDSLRに業務用のマイクを取り付けることができる製品だ。機能的にはマイクGAINやピークリミッターアッテネーターなど、簡易ミキシングの機能を全て小型のボディに詰め込んでいる。音質も変なノイズもなく十分及第レベルだ。

Falcon Eyes

LED照明に特化した中国メーカー。LED初期の、安かろう悪かろうから随分進化し最近のLEDは演色性にも優れ照明として十分に現場に持ち込める機材になった。このメーカーもその内の一つで日本では馴染みのないメーカー名だが、プロ機材ドットコムが日本では代理店になり販売してるものと聞けば直ぐに思い出せる方も多いのではないだろうか?

今回の新製品は砲弾型LEDを並べて直接光を当てるのではなく、筐体サイドから間接照明的に当てることでデュフューズされた光を当てることができるパネルに、今までのように基盤に配置するのではなくフレキシブルな防水加工されたものにLEDチップを配置したもののそれぞれ大型機種を展示していた。バイカラーや輝度調整はもちろん、同じ形式の照明なら一つのリモコンで全てをコントロールできる優れものだ。これらは秋以降でプロ機材ドットコムで購入が可能なので興味のある方は、東日本橋ショールームでデモ機を見てほしい。

総評

中国の機材展というと、パクリ製品ばかりでまともなものを探すことに苦労すると勝手に思っていたが、今回の参加でその考えは完全に払拭された。確かにどこからどう見ても某メーカーの製品?というコピーものも多いが、それは昔のように見た目だけのコピーではなく、中身や性能まで完全コピーされているレベル。つまり100%互換品だ。でもコピーじゃんと思うだろうが、ワイヤレスなどのスクランブルまでコピーしているのは、良い悪いは別に技術としては凄いと素直に思ってしまった。そしてその手のメーカーの中には、完全コピーの技術力を買われて大手メーカーのOEMを作ったり、そこから独自のデザインや機能を盛り込んで高性能なオリジナル製品をリリースしている。

また会場自体も参加している人達は冷やかしや遊びで来ている感じは見られず、非常に真剣に製品を見ている印象が強かった。コピー文化の中国といわれているが、その中にはしっかりとした技術と方向性を持ったメーカーも沢山あることが今回のBIRTV参加で一番の収穫だろう。…とはいえ、会場のトイレの汚さだけはどうしても慣れることはできなかった…。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。