txt:岡英史 構成:編集部

エヴァ初号機発進ー!

まさにそう言いたくなる登場だったPanasonicのAU-EVA1。昨年のNABでひっそりと展示ブースに登場し、その時はまさか最終的にこの形になるとは思わなかったほど。最初の登場時には白のジョーゼットの様な物で薄っすらとシルエットを出した展示で、レンズに赤のラインをさり気なく見せていたので多くのメディアがEFマウントか?!と書き立てていたが現場的にはあえての演出だろうと予想していた。まさかのEFはCanon CINEMA EOSシリーズと被ることは有り得ないだろうと言うのが筆者的な予測だった。

EFレンズがフルコントロール出来る

その予測が見事に裏切られたのはCineGear2017で、そのシルエットそのままNABで見た時と同じ物だったのは正直驚いてしまった。そこからDVX200ユーザーでもある筆者的にはこのEVA1の存在は気になり、とにかくこの機種が展示してあるだろうと思われる放送機器展にはできるだけ顔を出してその進化ぶりを見届けてみようと思った程。国内の大きな展示会は関西・九州・北海道と行き、海外はEVA1目的の為だけに中国(北京)のBIRTVにまで出かけた。特にこのBIRTVでの収穫は大きく、初めて動くEVA1のVFを覗いて殆ど想像通りの性能に興奮した程だ。

IDX社製バッテリーも動作可能

この縦位置グリップは筆者的にはEVA1に限らず全ての機種でNGだ

コンパクトで低めの筐体はステディ等のスタビライザーに載せやすい

ファーストインプレッション

DVX200と比較するとそのコンパクトさが良くわかる

もう既に発売後の機体である為に本番で使っている方も多いはず。なので細かい仕様と言うよりもザックリ手に持った感覚を第一にこれから購入予定としている、特にミドルレンジの方々の参考になれば幸いだ。

まずこのボディデザインとサイズ感、グリップの位置やLCDの大きさ等、全てがどこかで見たことある感じだ。最適解を求めると結果そうなるのだろうが、C200とFS5を足して2で割ったと思って間違いないが、それぞれの良い所を上手くデザインに取り入れている。どちらかと言えばバランス感とホールド感はFS5に近い感じと言えば良いだろうか?積極的にハンディで振り回しても安定感はある。とは言えこの縦位置グリップは所謂ハッセルスタイルとでも言うのか筆者的には体の前で構えるスタイルがいまいち慣れず、この辺は完全に好みだろう。

この縦位置グリップやトップハンドルは勿論取り外し可能なのでスタビライザーや特機に載せるときにはかなりコンパクトになるので、MoVi等のケージで囲まれてる機材でも余り苦労なく搭載が可能なはず。EFレンズ(24-105/f4.0)と比べるとそのボディのコンパクトさがわかると思う。

気になるEFレンズのコントロールだがこれは概ね及第点をあげられる。さすがにC200の様なAFの速さは無いが、それでも実用的なAFと言って良い。4Kのピント合わせに慣れない方ならワンプッシュAFを多用した方が後で泣くことが無くなるはずだ。AE(及び絞り)は以前の展示会で触ったときには無段階の様な滑らかさで動いたと記憶していたのだが、今回のデモ機ではCINEMA EOS同様に段階ステップでの動きだった(※AEはVaricam LT同等だがレンズに拠る)。このために微妙な絞りの上下はEFレンズではできなかったが、この辺を追従するならZEISS LWZ.3の様なマニュアルレンズを付けるべきなのかも知れない。この辺は、また次の機会で検証してみたい所だ。

筆者はDVX200を所有しているが、一番の難しい所はメニューの階層の深さだ。基本Sonyカメラをオペレーションする事が多い方だとPanasonicのメニューは中々慣れ難いが、EVA1のメニューはこの辺がかなり使いやすくSonyのメニュー階層と何となく似ている部分がある。FS5からのスイッチでも多少の慣れで目的の項目にアクセスはしやすいはずだ。

スイッチャー現場でも何の問題もなく馴染み入れることが出来た。スイッチャーは勿論Roland V-60HDを迷うことなく投入

スイッチャー現場投入

ENG現場にはやや不向きかと思えるEVA1だが、丁度返却寸前にスイッチャーを入れたマルチカムの現場に投入してみた。結果から言うと何も問題はない。この時は他のカメラがS270J×2台とDVX200の3カメの中に混ぜているので色併せ的にはSony vs Panasonicと言う感じで黒味を中心にあわせれば意外と違和感はない。EVA1にはISO800モードとISO2500モードの2種類が搭載されているが、DVX200との組合せではISO800モードでの色味がジャストな感じで揃うことが出来た。そこから黒をSony寄りに若干調整すればほぼ良い感じに揃えることが出来た。今回はスイッチャーにV-60HDを使用し、スイッチャーでのカラー調整も随分時短に役立ったのは確かなので、通常のスイッチャーではもう少し頭を悩ませるのかも知れない。

ピントを探るピーキングが非常に優れものだ

今回本線はHDだが、内部収録は4Kで後でクロップでの置き換えを考えたカメラ配置。DVX200も同じ様な立ち位置なので両者をほぼ同条件で比べると絶対的な明るさはDVX200の方がほんの少しだけ明るい。しかし解像感はEFレンズとS35センサーの大きさのおかげか、EVA1の方がスッキリとしている。丁度DVX200にコントラストを足した様な感じに似ているのかも?

EVA1のLCDは見にくいと言われるが、これも慣れではないかなと個人的には思えるほどで純正LCDはそんなに悪くはない。HDの時にも同じ様にモニターが見えないと色々なカメラが言われたが、4Kになった昨今もやっぱり同じ事だと思う。4Kに携わった事が少ない方ほどピントの問題を大きく言うのは中々面白い現象だ。

話を戻すと、EVA1をスイッチャーに混ぜても要するに使い方だと思う。勿論マルチカメラの現場なら同じカメラで揃えるのが基本だが、今回の様に(演奏会)明かりが安定してる舞台ではEVA1は入れやすい。

先月に続いてのV-60HD今回は6chの音声をエンベット入力

総評

一部ではGH5の焼き直しとか、AF105の上位バージョンと言われているEVA1だが、筆者の感じ方はちょっと違う。GH5はあくまでも写真ベースでの筐体や味付けなので単体で使うならとにもかくにも、このような現場ではまず無理。AF105にいたっては既に過去の遺物と言っていい。

では何か?と問われれば、やはりVARICAMの最下層モデルと言う事で落ちつくのではないだろうか。レンズ交換式のDVX200というのも間違いではないが、ココを兄弟機種にするよりはVARICAM兄弟の末っ子的なポジションがしっくり来る。DVX200とは従兄弟って距離感がピッタリ当てはまると言うのが今回の感想だ。

良くも悪くもPanasonicぽくないEVA1だが、それは逆に考えれば色々な使い方が出来ると言うことだ。特にDVX200ユーザーはEVA1を買い増ししての2台体制にすることをお勧めしたい。この2台を持っていれば大体の撮影に対応でき、よりバジェットの大きい現場でVARICAMを使うときにもV-Log等の設定に迷わないはずだ。Sony贔屓の筆者でもこのEVA1は所有したいと素直に思っている。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。