txt:土持幸三 構成:編集部
地元密着型ドキュメンタリー番組をつくる
3月後半の春休み期間に茨城県の行方市へ専修大学ネットワーク情報学部の学生たちと行ってきた。学生たちの休みに合わせて映像教室を行って今回で3回目となる。行方市は独自の防災対応型エリア放送、なめがたエリアテレビを開局しており、専修大学とも協力して様々な地元密着のコンテンツを発信している。
今回は地元の麻生高校演劇部が参加する茨城県県東地区高等学校演劇祭を中学生がドキュメンタリーとして撮影、その素材を自分たちで編集し、10分程度の番組にするというもの。撮影は、実際の会場で行われる前日リハーサルと演劇祭当日の2日間。特別参加の地元高校演劇部OG・OBで構成される劇団も取材、撮影する。
仕事柄、下北沢や中野近郊で演劇を観ることが多い筆者に比べて、行方の中学生は演劇を観たことがないという。さらに午前中の講義が終わったら、午後からは会場に向かって撮影開始という強行軍だ。
まずはいつもの映像授業のように、出来上がったものを誰が見るかを考えてもらい、「わかりやすい映像」とは何かを話し合ってもらった。引き画(ルーズ)とアップが組み合わされた映像のわかりやすさを理解してもらった後、番組の構成を考えた。本番前日の緊張した様子や、当日の舞台を撮影し、両日ともインタビューをすることにし、二日間での変化を見ることが出来るようにした。インタビュー内容を考えるのは難しいかと思っていたが、初めての観劇という事もあって、短い時間で中学生たちの質問は決まっていった。
二台のカメラを使ってインタビュー
昼食後、会場に向かい、いよいよ撮影。手持ちには厳しい4Kビデオカメラと手持ち出来る小型ビデオカメラの二台体制でのぞむ。専修大学の福冨教授と学生はこの映像授業のドキュメンタリー撮影を含め、照明・録音も含め中学生たちの撮影のサポートもやっていただいた。
緊張したリハーサルも撮影
取材対象の高校生はリハーサル前でも緊張が手に取るように感じられたので、OG・OBからまずインタビューを開始。演劇に興味を持ったきっかけや、練習内容、一番難しかったシーンの事など、中学生は初めてとは思えない堂々とした様子で質問をして逆にこちらを驚かせた。緊張していた高校生のリハーサルがはじまった。セリフがつまるたびにコチラの胸が締め付けられるような独自の緊張感の中、撮影している中学生も、初めて見るリハーサルに顔がこわばっていた。
こちらが見ても明らかなほど、うまくいっていないリハーサルが終わり、中学生の方からインタビュー内容を変えた方がいいという提案を受け、質問数を減らし、答えやすいものだけに変更。憔悴し、自分たちの不甲斐なさに涙したであろう高校生たちが、インタビューに現れ心配したが、どうにか答えてくれた。明日の本番がどうなるか、ドキドキする思いで初日が終わった。
演劇祭当日は高校生の芝居がどうなるか、また質問を変更しなければならないか心配しながら撮影した。しかし、「昨日、帰って猛練習したんだろうなぁ」と思うほど高校生の演技は良くなっており、セリフがチグハグだったのが修正され、話しの流れもスムーズだった。終わってからのインタビューでも明るく質問に答えてくれて、筆者も中学生インタビュアーも一安心だった。
初めての編集でも作業はスムーズに進んだ
その後のOG・OBの撮影も済まして二日間にわたる撮影は終了。三日目はいよいよ編集。まずはインタビューの内容を確認したあとリハーサルの様子をじっくり見て、役者と演出者との最終確認や、四苦八苦している部分を抜いてつなげていく。やはり編集が進んでいくと、撮影の時には気付かなかった失敗や、「こうすれば良かった」など多少の後悔を口にする中学生ではあったが11分にまとまったドキュメンタリー番組に満足した様子だった。完成した時の控え目ながらも誇らしげな顔が印象に残った。