txt:岡英史 構成:編集部

4Kハンドヘルド戦国時代

光学25倍レンズはマルチに使える

この原稿を書いてる時点で既にDVX200・Z280・XF705・HC550と各社4Kハンドヘルド機をラインナップしてきたが、量産4Kカメラの一発目って何だろうと思って改めて資料見たらPMW-F55が2013年2月、とは言えこのカメラはミドルレンジが簡単に所有出来る物ではなくそこから遅れる事約9か月でPXW-Z100が登場した。

※良く調べたら量産第一号はJVC HMQ-10、意外とJVCは新フォーマットにはいつも一番乗りだ

丁度この年のInterBEEはZ100をお借りしてPRONEWSチャンネルでも4K映像をアップさせて貰った記憶がある。その後は民生機や小型業務機で4K収録出来るものがあったが、やはりレンズワークをするとなるとどれもイマイチなのは扱った方なら感じているだろう。なのでAG-DVX200が登場した時はこぞってこの機種を使い、筆者も即購入しそこからの3か月間はカメラご指名(人間じゃないのが悲しいが)であっという間に駆け抜けたのを思い出す。

そして今年の2QにSonyからPXW-Z280というハンドヘルドENGとして全てを組み入れたスーパーハンディカムが登場したが、ここから更に業務用途としてリーズナブルにしたZ190を登場させてきた。今回もいつも通り実践現場に投入してみたのでその感想を踏まえてレポートしたい。

Z280とZ190の組み合わせはスモールパッケージでの現場には最強だ!

1/3inch×3枚の意味

Z100が登場した時期にある技術者に「なぜ単板なのか?明るさも踏まえて3板の可能性は?」と質問したことがあるのだが、その時の回答はHDでもプリズムに3枚の撮像素子を綺麗に並べるのは至難の業で、4Kの解像度は更に難しいと言われた。そしてその新たな回答として大判センサーという事になったのだが、センサーが大きくなるとレンズの制約がかなり出てくる。ワイド側はともかくとしてテレ側に至ってはワンボディの中に収めるのは難しい。Z150等に入っている1inchセンサーと言うのはその辺のジレンマを上手くバランスさせていたがそれでもENG的な取材には厳しいのが本音。

その回答としてSonyが用意したのは全ての要求を満たした1/2inch×3枚のZ280で、その解像度や明るさは今までの4Kハンドヘルドの常識をひっくり返すものだった。接近戦の取材ならこの機種は言う事なしだが、業務レンジではもう少しテレ側が伸びてほしい、できれば価格ももう少し抑えた物をと言う声にも応えて、この時期にそうそうと出てきたのがZ190だ。レンズ周りは殆ど同じ(実際は大きく違うが)とした場合センサーが小さい方がテレ側にシフトするのは既にお分かりだと思う。そのため、Z190はテレ側光学25倍と言うコンデジ並みの倍率を手に入れる事が出来た。ここにさらにHDモード時は4KからのHD切り出しによる高精細な2倍デジタルエクステンダー機能により50倍の高倍率ズームになる。国内での劇場ならこの倍率でアップが抜けない所は無い。もちろん、飛行機や鉄道系の撮影ならZ190一択と言っても良いだろう。

ワンマンオペレートでの武器

25倍ズームレンズに4chオーディオ録音

Z190は4K記録可能で、25倍の高倍率ズームが大きな特長だが、実はもっとミドルレンジには有効な武器がある。先ずは4ch独立の録音だ。Z280と同じくインテリジェントシューからのワイヤレスレシーバーでの音声2ch分と本体のXLR端子2ch分で合計4chの音声が入力できる。25倍ズームの主な活用で舞台収録があるがPAからのステレオ2ch入力とオーディエンスの2ch入力を本体で収録できるというのは後の編集時間が大幅に変わる。

そしてもう一つの武器として可変NDがある。可変NDの良い所は丁度良い露出を探すのではなく、明るさを変化させずに深度を一定に保てる部分だ。例えば部屋の外から中に入る時に絞りで調整してしまうと深度も思いっきり変わってしまうが、NDなら絞りは一定のままなので画のトーンは変わらない。この武器はSony機でしか使えない物だが、意外とそれに気づかない方もいるのではないだろうか?

更にZ280のメディアは高価なSxSを使うが、Z190はSDカードで4Kを収録可能だ。今回、SDスロットを3スロット装備し、その中の一つはユーティリティスロットと言う位置づけだがここでサイズの小さいプロキシーファイルを収録が可能となっている。撮って出しの現場で4K収録のサイズは現場編集では中々厳しい物があるが、このプロキシーの小さいサイズならHD画質で十分処理が出来る。またIP接続により本体のWEBコントローラーにPCやタブレットからアクセス出来、カメラのリモートコントロールが出来るのもZ280共々ワンマンオペレートでの武器になるはずだ。

総評

NX5Rよりやや大きい筐体だが、三脚的にはManfrotto Nitrotech N8クラスで十分対応可能だ

前記したがZ280、XF705、HC550、DVX200と、4Kハンドヘルドが出そろったが、では何を選べば良いのか?正直どのカメラも一長一短なのは当たり前の事でオールマイティに100点というカメラは存在しない。なので筆者の場合、まず自分のメインの仕事にどれだけ合っているか、もう一つは「見た瞬間に決めたカメラ」これに限る。とはいえ、Z190には光学25倍の武器がある。これを生かせる現場の方なら迷うことなく選んで良いはずだ。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。