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(1)「カーブ」の話
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図01_01
DaVinci Resolveには「カーブ」の種類だけでもカスタム(YRGB)、色相vs色相、色相vs彩度、色相vs輝度、輝度vs彩度、彩度vs彩度の6つが搭載されている(図01_01)。
前回までに解説したカラーホイール、そして今回の「カスタムカーブ」は、おもに「プライマリ」と呼ばれる最初の全体的な調整に使われるのだが、色相vs色相などの他5種類のカーブは「セカンダリ」として部分的な細部のカラー調整に使われるツールだ。
(2)カスタムカーブ
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図02_01
カスタムカーブの初期状態(デフォルト)は右上から左下への直線。図02_01は、グラフのどの部分が映像のどこの明るさ(ハイライト・ミッドトーン・シャドウ)に対応しているかをおおまかに表したものだ。
カーブの基本操作は、グラフの線上をクリックしてコントロールポイントを追加し、そのポイントを上下にドラッグして曲線を描く。コントロールポイントを上にドラッグすれば明るくなり、波形モニターやパレードスコープの波形も上に伸びる。反対にコントロールポイントを下げてカーブを下に曲げれば暗くなる。
ちなみにコントロールポイントの取り消しは、目的のポイント上で右クリックする。Photoshopで言うところの「トーンカーブ」と基本的には同じ機能なのだが、とても大きな違いが1つある。それは「Y:輝度(ルーマ)」だけを独立して調整できることだ(図02_02)。Yは白線で表示され、RGBは赤緑青の各色の線で表示される。
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図02_02
(3)「彩度」の変化に注意
Yカーブだけを個別に操作せず、YRGBがリンクされた状態でコントラストを上げる処理をすると「彩度」も同時に上がってしまう。前回、前々回に学んだプライマリーホールのマスターホイールを使った明るさ調整でも、実は同じ原理で彩度が上がっていたのだ。
これはカラー調整を考える上では重要なことで、単に「彩度が上がれば色鮮やかで華やかになって良いね♪」という話ではない。彩度が上がり過ぎるとカラー(色調)が飽和してしまい、色の濃淡といった階調やディティールがどんどん失われてしまうのだ。
図03_01は「YRGB」がリンクされた状態でカーブ操作をしている。
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図03_01
図03_02はリンクを外して「Y」だけを独立して操作したもの。
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図03_02
カスタムカーブを見ると、ともにコントラストを上げる調整である「S字」カーブ(ハイライトを上にドラッグし、シャドウは下げる)を描いている。ふたつの画像を見比べれば、ベクトルスコープを検証するまでもなく彩度の違いは一目瞭然だろう。
(4)RGBカーブも補色関係で動作する
ここまではYカーブの話だったが、次はRGBの各カーブについて。
RGBカーブでは上下のコントロールポイントの動きが「補色」の関係になっている。例えばRカーブの場合、上にドラッグすれば「R:レッド」のカラーが増え、下げれば補色である「C:シアン」が増える。同様にGカーブは「G:グリーン」と「M:マゼンタ」、Bカーブは「B:ブルー」と「Y:イエロー」の補色関係にある。
パレードスコープのRGBそれぞれの波形の高さをよく観察して、その高さ(量)に合わせてカーブを上げたり下げたりする動きがカーブの基本的な操作だ。
(5)監督の指示はコントラストを上げて、夕景の雰囲気を抑えること
図05_00の撮影日は薄曇りの午後だったのだが、夕景シーンにしたいということで色温度を7000Kに設定し撮影した。監督のグレーディング指示は、全体に「モヤッ」としているのでコントラストを上げてスッキリさせ、さらに夕景の色(赤~アンバーっぽい色調)を抑えたいとのこと。
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■01-まず「Yボタン」をクリックでYRGBのリンクを切り、Yカーブのみでハイライトとシャドウの各ポイントを決める
これはプライマリーホールのマスターホイールを使った明るさ調整時の「コントラストの拡張」と同じ効果になる。左下端のシャドウ部コントロールポイントを波形モニターの下端を見ながら、少しづつ「右」にドラッグしてシャドウポイントを決める。同様に右上端のハイライト部コントロールポイントを波形モニターの上端を見ながら「左」にドラッグしてハイライトポイントを決める(図05_01)。
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図05_01
■02-そしてカーブにコントロールポイントを追加してコントラストを上げる
図05_02を参照しながら、シャドウの真ん中付近にコントロールポイントを追加して少し下げ、ハイライトの追加コントロールポイントは少し上げる。この操作によって、Yカーブがゆるい「S字カーブ」を描き、全体のコントラストが上がり映像がクリアな印象になる。
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図05_02
■03-次にコントラスト調整の終わった現在のノードを右クリックしてシリアルノードを追加する(図05_03)
この追加されたノードに次のカラー調整を行う。このように別ノードに別の調整を行うと、再調整が必要になった時に作業の切り分けができて便利だ。
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図05_03
■04カラー調整では、まずパレードスコープを分析する
波形の上端(ハイライト部分)の並び方を分析するとRチャンネルのハイライトが飛び抜けて高く、その下端のシャドウもやや持ち上がっている。またBチャンネルはハイライトが少し低く、ミッドトーン(中間調)もやや下がっていることが見て取れる(図05_04)。
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図05_04
■05-RボタンをクリックしてRカーブをアクティブにする
Rチャンネルのシャドウを下げたいのだが、シャドウのコントロールポイントは左下端に張り付いているため、これより下には下げられない。こんな時は右方向にドラッグすることで、パレードスコープの波形の下端をさらに下げられる。
パレードスコープ上端のハイライトは、映像も確認しながら少しづつコントロールポイントを下げてゆくことで、赤の色調を徐々に取り除くことができる(図05_05)。
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図05_05
■06-Bカーブに切り替えて、右上端のコントロールポイントをほんの少し左方向にドラッグしてハイライトを上げる(前述、Rカーブのシャドウ調整と同じ考え方)
最後にミッドトーンにコントロールポイントを追加し、わずかに上げる(図05_06-1)。
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図05_06-1
これで監督の指示通りにコントラストを上げて、アンバーっぽい色調を抑えることができた(図05_06-2)。
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各カーブの動作に連動して、波形モニターやパレードスコップが動く様子を観察するには、図05_00をダウンロードしてDaVinci Resolveを実際に操作して見てはいかがだろう?わずかなカーブ操作でもコントラストやカラーが大きく変化することを実感してもらえると思う。
今回はカスタムカーブだけの解説だったが、次回は特定の色相を素早く分離して、色や彩度、明るさを調整する他のカーブを紹介したいと思う。
WRITER PROFILE
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