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txt:土持幸三 構成:編集部

「かわさきキネマサークル」での映像制作ワークショップ

筆者は小中学生に映像制作授業を、一般向けに映像制作ワークショップ、俳優向けの演技ワークショップを行っているが先日、小学校の映像授業を行う際にボランティアで手伝っていただいている「かわさきキネマサークル」が主催する一般向けの映像制作ワークショップの講師を務めた。「かわさきキネマサークル」はシニアが中心ではあるが「かわさき市民ニュース」など、多くの映像作品を制作している市民グループである。

今回はいつものワークショップとは趣向を変え、いままで挑戦した事がないワークショップを行ってみた。いつもは、映像の基本を講義してグループに別れ、それぞれがテーマを決めてグループごとで機材を持ち撮影、編集という形をとっているが、今回は初めて俳優を呼んで、参加者に俳優を演出してもらう形をとった。

単純に一般の方が俳優を演出することはないので面白そうだと思ったのと「かわさきキネマサークル」の方々含め、自然だったり何かの行事だったりを記録する撮影が主で、物語を撮影するという事を参加者に体験して欲しかったのである。

参加してもらう俳優は3人、参加者は約15名なので3グループに別れていただいた。ただし1日で基本の講義から絵コンテ、撮影、編集までこなさなければならないので脚本は筆者があらかじめ用意しておいた。それと普段はビデオカメラで撮影をするのだが、今回はすべてのグループがミラーレスカメラを使って毎カットごとにレンズを替えて筆者が主に撮影を担当し、演出に集中していただいた。レンズの選択肢も演出の一部になり得ることも体験してもらいたかったからである。

レンズの特性を説明する

参加された方の中には初心者はじめ、映像を撮影するよりも脚本の方に興味がある方もいて、レンズの特性とかはハードルが高いかなと心配したが、カメラをプロジェクターにつないでレンズを交換したりフカンから下からあおってみたり、いくつかのアングルを見せると、ある程度違いを理解していただけたようだった。2分程度の脚本は、ある程度、解釈にゆとりを持たせたものにし、グループでの絵コンテ作成は、それぞれ個人で最低1カットは自分が考えたカットを入れることを条件とした。

グループで絵コンテ制作

正直、初めて会う高校生から70歳まで、年齢の離れた参加者が上手く話し合って絵コンテを仕上げてもらえるか心配していたが、グループごとに脚本から想像した3人のキャラクターや状況をキチンと吟味し、1カット1カット丁寧に仕上げていたのには驚いた。描いてもらった絵コンテシートの枚数はかなりのものとなっていた。

撮影開始

普段は絵コンテが終了したグループから撮影となるが、今回は絵コンテを終えるのに各グループであまり差は出なかったので他のグループの演出がよく見れて参考になったと思う。同じ脚本でも演出によって大きな違いがでることも感じていただけたのではないだろうか。俳優陣もグループが変わると演出が変わり、セリフは同じでも言い回しや立ち位置等、変更点は多かったので苦労したかも知れないが、よい経験になったのではないかと思った。

時間の制限で編集に充分な時間を取れなかったのは残念だったが、ほとんどのグループがある程度の形まで持っていく事はできた。

グループによって演出は大きく変わる

今回のような俳優を使って映像制作のワークショップを一般向けに行う事はあまりないので、もしかしたら参加者が困惑するかもしれないと思ったが、終了後のアンケートでは概ね好評だったようで、「かわさきキネマサークル」の活動にも参加希望者が増えたとのこと。これから様々な環境での映像制作が増えていくことが予想され、今回のような老若男女が参加できるワークショップが出来たことが筆者にとってとても嬉しい事だった。ワークショップ参加者の今後に期待したい。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。