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txt:土持幸三 構成:編集部

日光の強さをコントロール可能なNDフィルター

季節は春を過ぎて初夏へと移っているが、日差しが強くなり外での撮影の場合、厄介なことが多くなる。撮影のときは、その場所の明るさによってカメラのISOを変えて対応することが多いと思う。しかしながら日差しが強く、ISOを一番低くしても、シャッタースピードをある程度早くしても自分が撮りたい露出で撮れない事がおこるからだ(動画撮影時、筆者はシャッタースピードを早くすることを好まない)。

日光の強い時に人物を背景から浮きだたせる為にNDフィルターを使う

簡単に言うと露出、つまりF、Tストップをコントロールすることは被写体を背景からどれだけ浮き立たせるかということ(逆に言うと背景をどれだけボケさせるか)で、以前にも書いたが演出に関係する、映像における重要な要素の一つになる。このような場合、日光の強さをコントロールする為に使われる代表的なものはレンズの前に取り付けるNDフィルターだ。NDとはニュートラル・デンシティの略で色に変化を与えず均一に減光できるフィルターのことだ。

フィルム撮影の時代は感度ISO25など日差しが強い場所を想定したフィルムもあったがデジタルになった今、だいたいのカメラの設定ではISO100程度が限界でフィルム代わりと言えるセンサーは光に敏感になっている。それでNDフィルターを使う事になるのだが、NDフィルターには多くの種類(濃さ)がある。だいたいのNDフィルターの商品パッケージにはフィルターファクターという番号が記載されており、ND2とかND4というふうに書かれている。このフィルターファクターの数字が2であれば光を1/2に、4であれば1/4に減光します、ということ。光の量が1/2になれは1絞り、1/4なら2絞りぶん光を減らすことが出来る。少し難しいが、上に出したISO100の感度をISO25と同じようにするにはND4を使いレンズに入る光の量を1/4に減らせば同じ感度になる。

ND8が筆者のおすすめ。(W)は広角用に枠が薄い

筆者のおすすめはND8だ。このND8は3絞りぶん減光でき、よほどの強い日差しでない限り撮影者が意図する絞りを狙えるので筆者の使い方には合っていると感じるが、一応より強力なND32もフィルターケースの中には入れている。

様々なフィルター径がある

ある程度の業務用ビデオカメラになるとこれらのNDフィルターはカメラ内についているケースもあるが、一眼レフやミラーレスカメラでは昔から変わらずレンズの前につける方式で、それぞれのレンズのフィルター径に合わせてNDフィルターを購入することになる。ズームレンズ一本ならそのレンズに合わせて購入すればよいが、筆者のように単焦点レンズを多用するとなると、メーカーの違う複数のレンズがあり、レンズによって違うフィルター径に合わせてフィルターを用意することになるが、これだと多くのNDフィルターを用意しなければならない。

これには一応の解決策があって、一番大きなフィルター径に合わせてNDフィルターを購入し、小さなフィルター径のレンズにはステップアップリングを使いフィルター径をそろえればNDフィルター一つで全てのレンズに装着することができる。ただNDフィルターは日本のメーカーのものでも安いものは2000円程度からあるのでそれぞれのレンズに揃えることをおすすめする。一般的に一眼レフ等のレンズに使うフィルターはフィルター径に合せる丸型のフィルターだが、レンズの前にフィルターホルダーを付けて四角形のフィルターを差し込むスタイルのものもある。

筆者が使っているフィルターケース。撮影の内容によっては様々なフィルターを使う

NDフィルターの良し悪しは冒頭に書いたように色に変化を与えず均一に減光できるかどうかにかかっている。要するに値段の高いものほどこの機能に優れていると思ってもらえると良い。だから聞いた事のないメーカーの極端に安いNDフィルターはおすすめできない。最近では、可変式のNDフィルターも多いが筆者はあまり好きではない。高価である事と、どれだけ光を減光できるのかが正確にわかりづらいからだ。また、新しいものとしてミラーレスカメラのセンサーにセンサーサイズに合わせたNDフィルターを装着するフィルターもでてきている。

これからの季節、NDフィルターを上手く使って撮影を楽しんでもらいたい。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。