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txt:土持幸三 構成:編集部

未来の会社を舞台にした短編動画制作を振り返る

川崎市のある会社に創立50周年の記念に、さらに50年後の未来の会社を舞台にした短編動画を制作して欲しいという依頼を今年の始めに受け、打ち合わせを重ねて先日、二日間の撮影を行った。今回は少人数ながらも演出部・撮影部・録音部・制作部とそろっていたので、改めて撮影前の準備、香盤表の作成、作品のイメージつくりを振り返ってみたい。

香盤表とは撮影場所の都合、俳優のスケジュールや衣装メイクのつながり、天気などを考慮して撮影順番を決めて表にしたもので、撮影時にとても有効なものなので筆者は必ず作成する。

香盤表は非常に重要

今回、一番の難関は50年後の会社をどう表現してみせるかという事。まずはいくつかのスタジオをロケハンしてイメージを膨らませて脚本に仕上げたのだが、実際の俳優たちを視聴者が見て50年後と感じられるかどうか、これが一番の課題だった。

50年で人の見た目はどう変わるのだろうか?逆に50年前の映像などを見てみたが、会社内の施設などの違いはあっても、服装においてはスーツなど、大きな変化は見られず、女性の髪型やメイクにはある程度の変化が見られたので50年後の服装、メイクの参考にした。

物語のある映像には脚本なり絵コンテなりがあって、演出家が演出して俳優が演じるのをカメラで撮影するのだが、カメラで撮影するのは俳優だけではない。撮影するローケーション、セットなどの背景に加えて小道具、持ち道具などで物語の雰囲気をサポートする。さらに俳優の衣装、メイクもある。

派手なメイクでも違和感はない

初日の撮影では50年後の未来の会社を表現するためにメイクはあえて現代とは違う派手な形にしてもらった。このスタジオをロケハンした時に撮影監督と話して、全体的に青色を強調し少し暗めで撮影することにしていたのでメイクアップアーティストと前もってイメージを共有し、派手でも映像では、ある程度落ちつくことを確認しておいた。

筆者は脚本・演出を担当し、短編などでは予算の関係もありロケハンも最初に自分で周りを確かめて決め、小道具の調達なども行うので、それらの積み重なってきた作品に対するイメージを他のスタッフと上手く共有をしないと思ったような映像にならないことが起こる。このイメージの伝えかたを俳優、撮影監督、録音、メイク、制作、助監督など、各役割りに合わせてキチンと伝えられるかが作品の出来を大きく左右すると思っている。

シーンの色合いや明るさを事前に決めておく

初日はスタジオの使用時間が限られていたのでギリギリまでかかったが、香盤表通りに終了することが出来た。二日目は天気に左右される危険性があったので天気と香盤表を見ながら撮影順番を変えたりして臨んだ。二日目は現代の会社のシーンで主人公の普段の様子に加えて50年後にタイムスリップする不思議な出来事が起きる作業場のシーンが撮影の難所だった。

このタイムスリップする作業場は一階だが外光はあまり入らない。冒頭のシーンも同じ一階なので脚本の順番通り冒頭のシーンを先に撮り、終わったら作業場を撮影して三階の社内シーン撮影に移動したかったが、三階は昼間のシーンなので暗くなると困るため作業場のシーンをいくつか残してまず三階へ上がって撮影し、明るいうちに三階を撮り終えて一階へ降り作業場の残りを撮影した。

この作業場で登場するキャラクターは不思議な老人。ここでもメイクが良い感じで効いていた。暗い中で人物が浮かび上がるようにかつ不気味さも欲しいと伝えていたのだが、メイクアップアーティストが良い仕事をしてくれたと思う。メイクをする前と後を比べて欲しい。俳優にはヒゲを伸ばしたままにして欲しいと伝えておいた。

衣装とメイクで俳優の雰囲気は全然変わる

このように撮影は俳優やカメラ、録音だけでなく撮影場所、大道具、小道具や持ち道具、衣装やメイクも重要な役割を果たす。メイクひとつで印象が大きく変わる場合も多いのだ。また演出者はどのような雰囲気にしたいかを上手く現場スタッフに伝える必要があるので、映像制作の総合的な知識が必要であると思う。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。