プロ仕様の設備や調理器具を完備した2対のキッチンで、2人の料理人が同時に料理を競いあったり、複数人で同時に料理をしたり、そしてその模様をリモートで撮影して配信できる―そんなクッキングスタジオが2023年10月1日、東京・西麻布にオープンした。

「Tokyo D Kitchen Studio」は、レンタルキッチンスタジオとしても利用することができる、一般社団法人日本割烹道協会が運営するクッキングスタジオだ。2階にメインとなるキッチンスタジオ、1階に「捌きどころ」として下処理用の勝手場も有している。それぞれ、収録・配信が可能な最新の撮影設備を完備しており、そこに導入されているのがキヤノンのリモートカメラだ。

なぜ、キヤノンのリモートカメラを導入したのか、どのような使い方をしているのか、日本割烹道協会理事・事務局長の中谷完氏に話を聞いた。

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一般社団法人 日本割烹道協会 事務局長 中谷完氏

Tokyo D Kitchen Studioとは

Tokyo D Kitchen Studio

――日本割烹道協会はどのような協会でしょうか?

中谷氏:

日本割烹道協会は、テレビ番組「料理の鉄人」でも活躍した日本料理「くろぎ」の料理人である黒木純氏が創始した、割烹文化の発展、継承のための様々なサービスを提供する一般社団法人です。料理人のプロモーション事業として、スタジオでの料理人のアピールなども行っています。

黒木氏は、料理の鉄人で多くの料理人とライブでの戦いを経験したことで、その緊張感や臨場感が料理人にとって大事なものだという思いを抱いたという。そういった経験ができる場所を作りたいというコンセプトで作り上げたのがこのTokyo D Kitchen Studioだ。


中谷氏:

ダブルキッチンによって同じ条件で対戦型の競い合いができ、料理人の勉強の場としても活用できる。そんな場所ではありますが、切磋琢磨する姿を世界中に配信したり記録に残したいという思いもあり、カメラも設置することにしました。
さらに、その映像を大画面で見られるように240インチの大型ビジョンも設置し、インターネットに同時配信できる設備も完備したことで、様々な利用ができるクッキングスタジオになりました。

この大型ビジョンは、単に撮影映像を映すだけでなく、遠隔地と接続しての交流も想定しているという。食材の産地とそれを料理するキッチンを映像で繋ぐことで、生産者と料理人がコミニュケーションをとる、料理番組を配信しながら視聴者と交流する、今後の複数拠点化でも同様の設備を揃えて双方向の交流を実現するなど、様々な使い方を想定しているという。

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ダブルキッチンを有する2階のメインキッチン
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壁面に設置された240インチの大型ビジョン

――どのような方がTokyo D Kitchen Studioを利用できるのでしょうか。

中谷氏:

ターゲットは、映像のプロフェッショナル、インターネットで活躍している配信者、マーケティングで活用したいと思っているプロの人などです。プロ用の厨房や調理器具が開放されているレンタルキッチンスタジオはあまりなく、これまで、テレビ番組やCM撮影でも使われてきました。こうした幅広いニーズに対応できるというのがTokyo D Kitchen Studioの強みです。さらに、スタジオがある西麻布は、表参道や六本木、広尾といった海外からの旅行者も多いエリアで、インバウンドのユーザーもターゲットにしています。外国人向けのイベントなどもどんどん企画していく予定です。

今後は、日本割烹道協会として様々なイベントを検討中とのこと。「包丁料理人おいり」として知られる河本友介氏による包丁研ぎ講座、料理人としての所作を学ぶためのコンテンツ、プロの料理人同士の対決イベントなど、どれも観応えがありそうだ。

複数台のリモートカメラを駆使して料理人の動きを余さず捉える

そんなTokyo D Kitchen Studioでは料理の様子を様々な角度から捉えるために複数台のリモートカメラを設置している。「今までにない画が欲しかった」と中谷氏。そうした理由から天井に複数台のリモートカメラを設置した。

採用したのはキヤノンの「CR-N300」(以下「N300」)。1/2.3型CMOSセンサーを搭載し、4K撮影に対応したリモートカメラだ。光学20倍、デジタル20倍のズームにも対応し、HDMI、IP、USB、3G-SDIの接続に対応する。

「Tokyo D Kitchen Studio」に導入されているカメラとコントローラーの接続図は下記のとおりだ。

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「Tokyo D Kitchen Studio」に導入されているカメラとコントローラーの接続図。

1階の捌きどころに2台、2階のメインキッチンに5台、計7台のリモートカメラが設置され、それらすべてが1か所の制御卓からコントロールできるように設計されている。

コントローラー「RC-IP100」からリモートカメラの制御はすべてLANケーブルで行われるが、PoE+に対応するHUBを経由することで、N300への電源も同じLANケーブルで供給できるよう、無駄のない系統に仕上がっている。


――「CR-N300」を採用した理由はなんでしょうか?

中谷氏:

オーナーがずっとキヤノンファンだったというのもありますが、最終的にキヤノンを選択したのは「信頼と愛着のブランド」という認識があったからです。当協会では以前からキヤノン製のハンディカメラを使用しているので、そうした長年の信頼からキヤノンを選択しました。とはいえ、もちろん、画質や使い勝手をテストしたうえで、やはり「キヤノン」という結論に至った訳ですが。

画質と使い勝手を最優先しての導入であることは大前提だが、前述の通り、今後世界進出も考えていることから、グローバルでのビジネス展開をしているメーカーだったことも選定のポイントだったようだ。

中谷氏:

センサーサイズの大きい上位モデルもありましたが、N300でも照明を当てれば十分な画質だと感じました。工事の段階で実機を持ち込んで比較テストを行い、画角も含めて撮影エンジニアが実際に照明を動かしてテストを行い判断しました。
また、料理中は料理人の動きが多く、そうした画を撮ろうとすると1台の高画質のカメラで追うのではなく、複数台で撮影する方が思い通りの撮影ができます。コスト的にもN300がニーズにマッチしました。

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実際に撮影されたマルチ画面。上からの画を天井のリモートカメラで撮影。手元のアップだけではなく、引きの画もあわせて押さえられ、料理人の動きがよく分かるようになっている。

導入した結果、基本的には想定通りに利用できているという。ズーミングなどで操作の練習が必要という認識はあるそうだが、トータルで「使い勝手がいい」とのこと。

2階メインスタジオでの料理中の撮影は最大5台のリモートカメラで多角的に撮影でき、結果として取れ高もよい。教材の撮影にも使っており、中谷氏曰く、特に包丁の所作では、通常は手元に注目しがちだが、実は立ち方や肘、肩の使い方が重要なポイントであるため、複数の角度で撮れるのはメリットが大きいそうだ。

最大で4Kでの撮影ができるため画質にも問題がなく、動画の容量としても適度なサイズだという。邪魔にならない範囲で天井に照明を設置して明るさも確保できように工夫したそうだ。

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照明は必要に応じて移動、調整ができるよう効率的に設置されている。

Tokyo D Kitchen Studio1階の「捌きどころ」には、天井に2台のリモートカメラが設置されている。

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天井に2台のリモートカメラが設置された1階の「捌きどころ」

一方、運用する中で課題も見えてきたという。

中谷氏:

被写体が料理人1人だけならいいのですが、イベントで料理人の動きを複数の人が見学している場合など、撮影の内容によってはカメラの画角に見物人が入り込んでしまうこともあるため、現状ではハンディカメラを追加して撮影することもあります。カメラの組み合わせによっては色合わせや音の同期で苦労することもあります。
また、リモートカメラはその名の通り、リモートでオペレーターが複数台をコントロールできるのですが、やはりオペレーターの熟練度がある程度必要になる印象です。とはいえ、スタッフの人数は最小限に抑えられるので、そういった点で、トータルコストが抑えられたことは間違いありません。

今後の展開次第では、もう少しカメラの台数を増やすことも検討しているという。

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CR-N300を操作する中谷氏。

N300自体は屋内用のカメラではあるが、料理中の油はねや火や蒸気などの比較的過酷な環境の中でも、現時点で問題は起きていないという。ただ、キッチンでの使用を前提とすると、レンズ部に汚れが付着する可能性があり、そういった際のアラートや自動掃除機能があれば、より使い勝手が向上するのではないかと、中谷氏は期待を込めて語った。


Tokyo D Kitchen Studioは、N300で撮影した映像を全世界に配信できるシステムを構築したことで、海外で割烹料理人を育てるなど、今後も魅力ある日本の文化をボーダレスに発信していくだろう。

Tokyo D Kitchen Studio

所在地:〒106-0031 東京都港区西麻布2丁目21−12
(東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線 表参道駅A5出口から徒歩9分)

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