北海道・小樽市、石狩市に跨がる石狩湾新港にて開催されている野外フェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO」(以下:RSR)。今年2年ぶりに開催されたRSRのステージ収録でキヤノンのリモートカメラ「CR-N500」「CR-X300」が採用された。RSRを初回開催の1999年から主催している株式会社ウエス コンテンツプロモーション制作チーフディレクター 高崎晃氏に、フェスステージ収録にキヤノンのリモートカメラを導入した経緯やその印象について伺った。

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株式会社ウエス CREATIVE 1 コンテンツプロモーション制作チーフディレクター 高崎晃氏

――RSRについて教えてください

高崎氏:

RSRは、日本初の本格的オールナイト野外ロックフェスティバルとして1999年に初開催され、今年で22回目となりました。小樽市、石狩市にまたがる石狩湾新港の広大な草原にて、毎年草刈りをして、電気を通し、水道を引き、ステージやテントを設営しています。その様子は「一年で2日だけ出現する小さな街」のようでもあります。
2020年、2021年は新型コロナウイルスの影響で開催中止となりましたが、今年は8月12、13日、817日ぶりに開催され、出演者43組、延べ48,100人の来場がありました。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2022 in EZO

10月9日にスペースシャワーTVで放送予定(11月3日リピート放送)

――CR-N500、CR-X300を採用した経緯を教えてください

高崎氏:

今年は、ステージ数、動員人数もコロナ前よりも抑えて、参加者にはマスクの着用、声援の自粛をお願いするなど、特別な形での開催となりました。
私はフェスのライブをどのように収録するか、予算も含めて統括する立場ですが、今年のような状況で、以前と同じようにステージ上でカメラクルーが動き回るというのは、感染対策として難しいのではと考えました。
また、以前は有人カメラと無人の固定カメラで収録していたのですが、固定カメラの役割を無人でもパン、チルト、ズームできるリモートカメラに置き換えることで、有人のカメラと同等に効率よく予算を抑えられるという観点から最適だと考えました。

CR-N500
CR-X300

――各ステージにCR-N500、CR-X300をどのように配置したのでしょうか?

高崎氏:

今年は「SUN STAGE」「EARTH STAGE」「Hygge STAGE」の3ステージがありました。SUN STAGEではCR-N500を1台、EARTH STAGEではCR-N500を2台、Hygge STAGEではCR-N500とCR-X300をそれぞれ1台設置しました。CR-X300はステージを引きで撮れる、屋根のない場所に配置しました。
SUN、EARTHはそれぞれリモートカメラコントローラー「RC-IP100」を1台ずつ、HyggeではCR-N500、CR-X300それぞれに1台ずつ計2台で運用しました。

各ステージのカメラ配置図

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SUN STAGE※画像をクリックして拡大
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EARTH STAGE※画像をクリックして拡大
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羊文学(8/12 EARTH STAGE) PHOTO BY 山下 聡一朗(RSR公式サイトより引用)
EARTH STAGE背景に溶け込んでいるが、壁沿いにCR-N500のブラックモデルが設置されている
※画像をクリックして拡大
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Hygge STAGE※画像をクリックして拡大
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LOSALIOS(8/13 Hygge STAGE) PHOTO BY 山下 恭子(RSR公式サイトより引用)
Hygge STAGEにはCR-N500のホワイトモデルを設置
※画像をクリックして拡大

――実際にリモートカメラで運用した印象はいかがですか?

高崎氏:

今回CR-N500、CR-X300に期待したのは、メインカメラの1つとしての活用でしたが、期待以上の活躍をしてくれました。
画質については他の有人カメラとスイッチングしていても全く遜色ないきれいさでした。そしてカメラがパン、ズーム、チルトの動きができることで、空からのパンダウンのような「時間をもたせられる映像」にも多く使いましたし、事前にプリセット登録すればカメラの動きを呼び出せますし、映像のバリエーションは以前の固定カメラとは比較にならないほど豊富になりました。
そういったアングル操作が、ステージ上であまり目立たなく設置できる無人カメラをリモートで制御できるのはとても助かりました。

EARTH STAGE上に設置されたCR-N500
リモートカメラコントローラRC-IP100でCR-N500を操作

高崎氏:

今回、各アーティスト毎に、リモートカメラも含め移動可能なカメラについては、本番前に設置位置を打ち合わせして撮影しました。人数が少ないグループですと、ステージの背面にカメラを設置するとリモートカメラでもどうしても目立ってしまう場合があるのでステージの上手や下手端に設置することもありましたが、ズームも含めアングルが自由に動かせるので全く問題なく使うことができました。また、Genlockに対応しているので他のカメラとの同期も問題ありませんでした。
それぞれのステージで実際にリモートカメラを運用をしたビデオエンジニアやテクニカルディレクターなどに聞くと、他にも以下のような印象がありました。

  • コントローラとのタイムラグがなく操作しやすく、慣れることで1人で2台のカメラを制御できた
  • 電源がPoE++だったので、配線が少なくて助かった
  • 防水仕様のCR-X300は野外フェスではありがたかった
  • 夜のシーンの画質も既存カメラとほぼ変わらないクオリティだった
  • アーティストのバックショットやドラム、キーボードなどの映像を、以前の固定カメラではできなかった様々なバリエーションのアングルで撮影できた
Hygge STAGE上にはCR-N500のホワイトモデルを設置

――今後、追加して欲しい機能はありますか?

高崎氏:

内蔵SSDやSDカードなど、本体での映像収録ができると良いですね。バックアップという意味もありますし、収録後の編集でカットの差し替えなどもあるので、それぞれのカメラ映像が本体に収録されていると楽ですね。今回は別途レコーダーを繋いで対応しました。

Hygge STAGEでは引きカメラとして屋外対応モデルのCR-X300を採用

――今後、キヤノンのリモートカメラを活用してみたい場面はあるでしょうか

高崎氏:

ステージの天井や、逆にローアングルなど、有人では無理だったり目立ってしまうような場所に設置してのステージ収録もしてみたいです。また、屋外対応のCR-X300は雨が降ってもそのまま使い続けられることを考えると、より多くのステージでメインカメラの1つとしての運用も検討したいと思っています。
ライブハウスでの配信、収録でも、目立たせずに配置ができて、複数のカメラをリモートでワンマンオペレーションできるのはとても魅力的だと思うので、そのような運用も検討したいと思います。