アオリ撮影の魅力[大判カメラのススメ] Vol.02メイン写真

こんにちは!写真、撮っていますか?

すほいです。

前回は大判カメラの魅力についてかいつまんで書かせていただきました。
今回は機構的な特徴ともいえるアオリ撮影の魅力についてつらつらと書いていこうかと思います。一席お付き合いください。

アオリ

下から見上げて高層ビルを撮ると上に行くほどすぼまって写ったりします。例えば都庁広場から都庁を見上げて撮ると、パースのついたデフォルメがかったような写真になったりします。

Vol.02 大判カメラのススメ説明写真

人間の目は脳内で補正をかけるので、そこまで気にならないですが、カメラという機械の目を通すと一目瞭然です。そこで、意図的にレンズの光軸とフィルムの面を動かすことでその辺りの補正を行い、歪みのない写真を目指していく技法全般を指します。

歪みを補正する他に、ピントの合う範囲を広げたり、逆にぼかしたり、建築や商品撮影で主に使われる技法ですが、チルト、スイング、ライズ、フォールという基本動作から様々な表現を得ることができます。

アオリと大判カメラ

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アオリ撮影自体は大判カメラの専売特許ではありません。ベローズやチルトシフトレンズを使うことで、同様の効果を得ることができます。一方で、イメージサークルの広い大判カメラは、他のフォーマットに比較してより自由度の高い撮影が行えると言えるでしょう。

アオリの原理や法則についてはわかりやすく解説されているサイトや書籍があるので、ここでは、私が撮影した作例をご紹介しましょう。

フロントチルト

ピントの合う範囲を広げて、パンフォーカスを目指す場合によく使われる技法。
大判カメラはよくボケるので、絞り込みだけではパンフォーカスにするのは難しく、この技法は大変便利です。

アオリ撮影の魅力[大判カメラのススメ] Vol.02説明画像
Vol.02 大判カメラのススメ説明写真
フロントチルトでピント面を調節した例

バックチルト

バックチルト補正では長方形を台形にするような形の変形が生じます。 これを応用することで、パースの修正を行ったり、強調するかのような写真が撮影できます。

アオリ撮影の魅力[大判カメラのススメ] Vol.02説明画像
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補正前
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補正後

逆チルト(フロント)

いわゆるミニチュア撮影。前述の一般的なチルトと異なり、ピント面を極端に制限することでボケの強い印象的な撮影ができます。スマホのカメラにも似たような機能が搭載されていますね。

アオリ撮影の魅力[大判カメラのススメ] Vol.02説明画像
Vol.02 大判カメラのススメ説明写真 Vol.02 大判カメラのススメ説明写真

フロントライズ(レンズを上方向にずらす)

レンズ面を上方向にずらす(ライズ)とカメラ本体を高い場所に持って行って撮影した写真と同じような写真が撮影できます。要は見上げて撮る必要がないため、パースのつくのを抑えた写真が撮れます。逆にレンズ面を下げる場合をフォールといいますが、個人的にはあまり使わない機能です。

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フロントスイング(レンズ面を左右に傾ける)

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補正前
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補正後

カメラの正面から見て斜め方向に広がる面にピントを合わせる際に用いられます。作例ではすりガラス越しに直接撮影しましたが、補正していない写真と違って、ピントの合う範囲が大きく異なるのがわかるかと思います。

以上、アオリ撮影について紹介してきました。正直、私も色々勉強中なのでいつもアワアワしながら撮影していますが、その試行錯誤もまた、楽しいものです。

デジタル補正とアオリ

Photoshopによる補正やスマホカメラで似たようなことができると言われてしまえばその通りなのですが、大判カメラ(特にビューカメラ)を導入すると光学的なアナログ補正でアオリ撮影に関する大体のことができてしまうので、写真の勉強にも丁度良いかと思います。電気も使わないので、ある意味SDGsです。全ての操作をマニュアルで完結させる必要があるので、機械の操作が好きな御仁にもおススメです。

アオリまとめ

アオリ撮影はあくまで撮影技法のひとつなので、必ず使わなければならないものではありません。ただ、使えれば表現の幅が広がることは間違いないです。大判カメラに限らず、他のカメラを使用する際にも応用が効いてくるかと思います。 折角便利な機能がデフォルトであるんだから使わなきゃ勿体ないよね☆彡 というのが当方の見解です。

以上今回はここまでです。次回、「君は大判ポジフィルムを眺めたことはあるか?」でお送りします。


すほい|プロフィール
1985年、福岡県生まれ。東京造形大学卒業。卒業後なんやかんやあって医療系のお仕事をしている。基本的にフィルムもデジタルもメーカーも問わず使う雑食人間。撮影はストリートスナップが中心。大判カメラと出会って以来、大判カメラを色んな所に引っ張り出して撮影をしている。「黄昏屋」という個人サークルで大判カメラに関する同人誌を作っている。