皆さん大判カメラのこと、ご存じでしょうか?
フィルムカメラ好きな諸兄でも馴染みがない世界かと思います。今回から大判カメラの魅力についてのコラムを数回に分けて紹介をしていきます。深いようでやっぱり深い大判カメラの世界。そんな世界の魅力が少しでも伝われば幸いです。
まずは、大判カメラとは何ぞや-という話ですが、
大判カメラ
4×5インチ(102x127mm)以上のシートフィルムを使用するカメラの総称です。フィルムの規格は4×5、5×7、8×10、11×14、それ以上と多種ありそれぞれのフォーマットにあったカメラが存在します。35mmや中判カメラと異なり比較的シンプルな構造をしたカメラが多いのが特徴です。カメラ自体が大きく、重いので三脚使用が前提のカメラです。
種類
大判カメラは大きく分けてビューカメラとフィールドカメラの2種類に分けられます。
ビューカメラはスタジオでよく使われているカメラで、1本のレールにレンズ部とフィルム部の板が乗っかっている構造をしています。非常に大きく重いので、持ち運びは難しいですが、アオリの操作やレンズの自由度が大変高いです。
一方フィールドカメラは、折り畳むことができる大判カメラで、携行性に優れたカメラと言えます。レンズやアオリ操作はある程度犠牲になりますが外でバリバリ使いたい人にはこちらがおススメです。金属や木製などいろいろな材質が使われています。
画質
大判カメラの一番の特徴は何といってもフィルムの大きさです。最小フォーマットの4×5ですら35mmカメラと比べて約15倍の大きさがあります。中判と比較しても圧倒的な大きさです。大きい分画質にも余裕があるので、かつてはポスターや大伸ばしの撮影にも使われていました。
アオリ
大判カメラの機構的な特徴の一つがフィルムとレンズの面をある程度自由にずらすことができる点です。これを活用することで、ピントの範囲を調整したり、対象物のゆがみを修正したりいろいろ表現できます。ニコンやキヤノンのシフトレンズの元祖ですね。大判カメラではカメラ自体にそういう機構が備わっています。
コスト
大判カメラを使う上で一番ネックになるのがフィルムの値段と仕入れ先です。
フィルムを買うだけなら、某家電量販店や通販サイトで取り扱っているので、それらを活用すればいいだけの話ですが、昨今のフィルム高騰の煽りを受け大判フィルムも絶賛値上がり中です。
2023年2月現在、4×5判でモノクロ1枚100円前後、カラーリバーサルで1枚1,000~1,500円くらいでしょうか。つまり一枚撮る毎にそれだけのお金が飛んでいきます。より大きなフォーマットではそれ以上のお金が…そこが一番のネックです。
カメラやレンズに関してですが、高級ブランドを求めないのであればおおよそ10万円で一通りのものを揃えることが可能です。これを高いととるかは人それぞれとは思いますけど、個人的には高騰し続ける他のフォーマットカメラと比べればマシかなという感想です(需要がないだけかもしれませんが)。
ちなみに今でも新品で大判カメラを買うことが可能です。海外メーカーが中心になりますがイギリスのIntrepid社やアメリカのK.B.Canham Cameraなど精力的に大判カメラを作っているメーカーもあるので、中古を漁るのが嫌な人はこちらを利用するのもアリかもしれませんね。
大判カメラで撮影する意義
ここまで大判カメラの概要について書いてきました。ここまで読んで気づいた方も多いと思いますが、大判カメラはシンプルな構造が故、すべての操作をマニュアルで完結させる必要があります。アオリ以外の便利な機能は特にありません。不意にフィルムを露光させてしまうこともままあるので、絶対に失敗したくない人には向かないカメラかもしれません。
自分は機械をガチャガチャ操作するのが大好きな人です。大判カメラで撮影する意義なんて大仰なことを書きましたけど、要は「なんかメカメカしくて弄るのが楽しいから大判カメラ使って楽しい写真生活送ろうぜ!」というところから始まって、「大判カメラで撮影するの楽しい!ピントグラスいつまでも眺めていられる!長時間露光もアオリも楽しい!現像した後のネガとかポジとか眺めるのが楽しい!!」となり「折角撮影したんだから本にして残したい!!!」と撮影ハイが変に捻じ曲がった結果大判カメラを色んなところに持ち歩く人になり同人誌を書くまでにいたりました。現在進行形で肩と腰と財布に多大なダメージを受けていますが、楽しければOKの精神で今日も大判カメラを持ち歩いています。
大判カメラの魅力はいろいろです。大フォーマットもそうでしょうし、機械的な魅力ももちろんあるでしょう。ここまで見た目には触れていませんが、蛇腹カメラの独特な風貌はカッコいいとも言えますし、木製カメラの高級感には何とも言えない魅力が詰まっています。それらすべてをひっくるめて、楽しい魅力に溢れているのが大判カメラなのかもしれません。
いろいろ書き連ねましたが、文章で説明するより実物を操作してもらうのが一番かもしれません。お友達に大判カメラユーザーがいなければ各市町村のワークショップで触れる機会があるかもしれません。兎に角一度操作してみてそこで何かしら魅かれるものがあれば、ぜひラージフォーマットの世界に足を踏み入れてください。
次回「君、被写界深度を操作したもうなかれ」アオリ撮影の魅力について書ければと思います。
すほい|プロフィール
1985年、福岡県生まれ。東京造形大学卒業。卒業後なんやかんやあって医療系のお仕事をしている。基本的にフィルムもデジタルもメーカーも問わず使う雑食人間。撮影はストリートスナップが中心。大判カメラと出会って以来、大判カメラを色んな所に引っ張り出して撮影をしている。「黄昏屋」という個人サークルで大判カメラに関する同人誌を作っている。