6月28日にBlackmagic Design東京オフィスにて、映像クリエイターである田中裕治氏を招き、BMCC6Kの素材の魅力やDaVinci Resolveを使ったルック作りや合成やバレ消しについて、システムファイブの山本隆太氏(通称:やまもん)と語っていただきました。今回はその模様をお伝えいたします。

田中氏は2018年よりVPを中心に企画、撮影、編集、グレーディングまでワンストップで行うスタイルで活動を開始。近年ではWebドラマ、WebCF、映画にも活動の場を広げ、その時々で撮影部、照明部、ポスプロ、制作部など個別のスキルを活かした形でも活動中されており、直近では岩井俊二監督作品「檸檬色の夢」「キリエのうた」においてVFX、制作部業務を担当。また認定トレーナーとしてはVANTAN DESIGN INSTITUTEにてカラーグレーディングの講師を担当。その他制作会社や個人クリエイター向けにカラーグレーディングを中心にプライベートレッスンなども行われています。

直近の作品制作

田中氏:

最近関わった作品についてお話ししますと、去年公開された岩井俊二監督の「キリエのうた」では、VFX、例えばバレ消しや背景の差し替えなどをすべてFusionで担当させていただきました。また、「檸檬色の夢」という作品も同じく岩井監督のもので、こちらでは映像修正を行いました。真ん中の「花束」という作品はサヘル・ローズさんの初監督作品です。

山本氏:

(「花束」には)LUNA SEAのSUGIZOさんも参加されているんですね。

田中氏:

はい、そうです。非常に豪華なメンバーが揃っています。こちらの作品では、グレーディングやFusion、Fairlightの作業も担当しました。ただ、この映画は通常の劇場公開とは異なり、上映方法が特殊ですので、ぜひ公式ホームページをご確認いただき、次回の上映情報をチェックしていただければと思います。

「ホロスコープ」MVの撮影

田中氏:

「ホロスコープ」というMVなんですが、「キリエのうた」で路上ミュージシャン役で一緒に出ていた、橋本桃子さんのMVを作らせていただきました。

田中氏:

撮影はBMCC6Kフルフレームを使用して編集はDaVinci Resolveで行いました。フルフレームで撮影しており、レンズはDZOFILM Vespid Prime Retroというちょっと特殊なものを使ってましてレンズにオレンジの琥珀色のコーティングが強く入っています。そのため、レンズフレアも強めで、色が付いてギラッとした感じになります。しかし、フレアがキツすぎて硬かったので、それはマットボックスで少し調整しました。その組み合わせでジンバルと手持ちを併用して撮影しました。

山本氏:

手持ち部分はDaVinciで後で修正したんですか?

田中氏:

そうですね。ジャイロデータを使ってDaVinciで手ぶれ補正しています。125mm、100mm、25mmレンズを使用しました。MVを撮るときのテーマとしては、叶わなかった恋を追い続ける女性の歌なので、そこから星占い、ホロスコープをテーマにロケ地を探して、本をテーマにしたステンドグラスの入っているツリーハウスをロケ地に選びました。

山本氏:

すごく素敵な場所ですね。

田中氏:

伊豆の細野高原で撮影しました。昼過ぎからテスト撮影を始めて、夕方から夜にかけて撮影を行いました。

山本氏:

じゃあ、夕方のめちゃくちゃ「おいしい」時間で撮れたんですか?

田中氏:

正直にいうと「おいしい」時間はちょっと逃しました(笑)。その辺はDaVinciをうまく使ったので。

山本氏:

RAWのいいところですね。

田中氏:

星空の合成もがっつりいれました。さすがに星を撮るのは難しかったので。女性が思い出の場所で昼寝していると夢の世界に入るという構成にしました。彼女がそこで男性を追いかけ、最後ハッピーエンドを迎えるという脚本を考えました。脚本といえるほどのものではないですが、そういったテーマで構成を考えて撮影しました。

フルフレームセンサーがもたらす解像感とボケ

田中氏:

この映像を撮る際に、まず脚本を書きました。そして、それに合うレンズとカメラを選ぶわけなのですが、僕は元々ずっとPocket Cinema Cameraシリーズを使ってきていて、今でも愛用しています。実はミラーレスカメラは持っていないんですよ。ミラーレスは必要な時に借りればいいかなと考えています。だから、自分の所有しているカメラはBlackmagicだけなんです。それくらい長く使ってきました。昨年、フルフレームが登場したので、最初に(ブラックマジックのWebサイトで)素材をダウンロードして触ってみました。その時に「なんじゃこりゃ!」と驚きました。同じ6Kなのに、ここまで(Pocket Cinema Cameraと)解像感が違うのかと。

山本氏:

そうですよね。皆さん同じことをおっしゃいます。私も同じことを思いました。以前は6K Proモデルも十分綺麗だと思っていましたが、BMCC6Kのフルフレームを見て驚きました。

田中氏:

本当に驚きました。僕、「うわぁ」って言いましたもん。解像感が高くて、画に深みや密度が増し、立体的に色が重なってるみたいな感覚があって、これはぜひ触ってみたいと思ったんです。そんな時にちょうどこの企画があったので、カメラをお借りして撮影しました。フルフレームセンサーなので、今まで以上にボケを生かせます。もちろん、これまでもレンズでボケを生かすことはできましたけど。また、冒頭のこの画のようなカリッとした画でもわかるように、解像感の高さや色の密度が格段に上がりました。

山本氏:

会場にいる方はぜひPCで見ていただいた方がいいです!全然違います!

田中氏:

Macのディスプレイは解像感が高いので、そのディスプレイでこのMV見るとわかりやすいかもですね。(BMCC6Kの特徴は)この解像感の高さ、画の密度や色の密度の高さと、ボケ足ですね。例えば、この画は125mmの手持ちですごく遠くから撮っています。

田中氏:

反対に、こういう柔らかい画も、まぁこれはポストプロダクションでも結構いじってるんですけど、自在に作れます。

山本氏:

ポストプロダクションでいくら手を加えても、元の質感が良くないと限界がありますね。

田中氏:

はい、こういったところが実際に使ってみて素晴らしいと感じました。(Blackmagicのカメラに比べて)ミラーレスカメラは僕の印象ですけど、どうしても硬いイメージがありますね。カリッとした現代的な画というか。

山本氏:

流行っているカメラだいたいそんな感じですよね。

田中氏:

レンズもそういう傾向がありますね。これは4K放送とかいろいろなことを鑑みての流れだと思いますが。

山本氏:

そうですね。各メーカーが出しているミラーレスカメラは基本的にスチル写真が撮れるカメラで、スチル撮影に向けた色を作っているから、どうしてもパキッとした色が出てきやすいイメージですね。

田中氏:

それは住み分けだと思います。僕はそういったカメラは必要に応じて借りればいいかなと思っています。案件ごとにカメラが用意されていることも多いので、そういう場合はそれを使うだけなんですが、自分の所有するカメラとしては、今のところBlackmagicが一番良いと思っています。

山本氏:

Blackmagicは非常に柔らかい画が出てくるんですよね。

田中氏:

かつ、今回のBMCC6Kで、この解像感が非常に高いです。特にカリカリに絞ってもいないのに、この解像感が出るのはすごいです。(BMCC6Kの魅力 対談シリーズで)井上卓郎さんがシャッタースピードを上げて解像感を上げる手法を教えてくれましたが、それも使っていません。パッと撮ってもこのくらいの解像感が得られます。ポストプロダクションでシャープネスを加えなくても、こんな画が撮れるのが魅力です。柔らかい映像からカリッとした解像感の高い深みのある映像までさらっと撮れてしまう。

山本氏:

非常に自由度が高いですね。

シンプルでレスポンスの良いUI

田中氏:

あとは、僕が気に入っている点として、モニターが大きいことですね。みなさん普通は5インチくらいの外部モニターを付けることが多いと思います。7インチだと大きすぎるということで、5インチのモニターを使ってると思うんですがそもそもこのカメラには5インチのモニターが標準で付いているので、追加のモニターは必要ありません。それに加えて、このカメラのUIはシンプルで、操作のレスポンスも非常に特筆すべきレベルで良いです。

山本氏:

最新のiPadくらいのレスポンスですね。

田中氏:

そうです。まったくタイムラグなく操作できるので、現場でパパパッと撮影する際には非常に便利です。運用が大変だと思っている方も多いかもしれませんが、実際には非常に楽です。(ミラーレスカメラの)小さいカメラモニターを見ながらメニューを操作する時間よりも、このカメラではサッと設定できるので効率が良いです。

山本氏:

あくまで個人ユースに近い方が使う分にはあの小さいタッチパネルでも気にならないと思いますが、(プロの)現場で素早く操作したい場合にタッチパネルを使っている方はどれだけいるのでしょうか。

田中氏:

なかなか使わないですね。ボタンに割り当てて操作することが一般的です。

山本氏:

それかキーで操作するかですよね。言われるまで気づかなかったんですが、、タッチパネルで操作してもこんなに気にならないカメラはBlackmagicだけかもしれないですね。

田中氏:

ほかにないと思いますね。タッチパネルの触り心地もいいんですよ。硬くなくて指に優しいんです(笑)。

カメラセッティング

田中氏:

カメラのセッティングとしては、こんな感じで一般的な組み方です。

山本氏:

あまりごてごてしていないですね。

田中氏:

そうですね。時間がなかったので、シンプルなセッティングにしました。むしろこれ以上必要ないので、これで十分です。レンズもこのシリーズは25mmから125mmまでサイズがほぼ一緒なので、はじめに125mmのレンズでバランスを取れば、他のレンズを付け替えても同じバランスで運用できます。NDフィルターはTiltaのバリアブルNDをマットボックスに入れて使いました。

田中氏:

このレンズは相当クセが強いかと思ったんですが、使ってみるとそうでもなくて扱いやすかったですね。琥珀色のコーティングがされているからなのか、スキントーンがすごく綺麗でした。結構日本人に合ってるんじゃないかと思います。色白の方でも血色よく映るんです。Blackmagicのカメラもスキントーンが綺麗に撮れるので相性よかったなと思います。
マットボックスは借りたんですが、リグとかはもともと(BMPCC用に)持っていたものなので追加コストはほとんどかかっていないです。今、機材が高いので、そういう点でも、汎用性が高くてメリットですね。

山本氏:

Blackmagicのカメラってオートフォーカスがないからハードルが高いんだよね、っていう方いらっしゃるんですが、意外とやってみたらできるというか、カメラマンを育ててくれるカメラなので全然入門で使っていいよって言うんです。カメラワークがうまくなると思うんですよね。

田中氏:

その通りだと思いますよ。うまくなるのもそうだし、表現の幅が広がります。今回実は、意外とピンがきてないところも多いんです。夢の世界の話なのでピンを絶えず動かしながらふわふわさせて、大事なところだけピンを合わせてます。そういうところもマニュアルフォーカスのいいところですね。対話シーンで前ピンから奥ピンへフォーカス送るのも表現としてよくありますが、そういうのも楽にできます。あとオートフォーカスだとバカっと(フォーカスが)動いちゃって、後からポストで直せない(笑)。

山本氏:

映画でもずっとバチピンきてるのあんまりないですもんね。

田中氏:

ミラーレスカメラだとレンズ小さいものを選ぼうとする傾向がありますが、それって意外とフォーカスやりづらいんですよね。シネレンズだとある程度筒がでかいので、手のサイズとコレ(フォーカス送りの動作)が合うのでやりやすいんです。そういう組み合わせをちゃんと抑えておけば、僕は結構好きな運用ですね。

山本氏:

今って安くてもいいシネマレンズが増えてきてるので、選択肢が増えてきてますよね。

ポストプロダクションは全てDaVinci Resolve Studioで

田中氏:

ポストプロダクションはDaVinci Resolve Studioですべて作業しました。編集、カラー、今回VFXの要素とバレ消しの要素、2つがあってFusionを使っています。さらに言うと、実はMVの前後に鳥のさえずりや僕がフォーリーで足音作って、環境音を入れたのでFairlightもちょっと使っています。

山本氏:

音までやってるんですか!?一人ポストプロダクションですね。

田中氏:

普段は自作のデスクトップで作業してます。RTXの3090でAMDの5950、そしてメモリが128GBでやってます。それがあれば、基本的に何でもできるんで安心です。
こちらが編集画面です。今回はオープンゲートで撮影しました。これには理由があって、オープンゲートだと縦構図の要素も出てくるんです。星をテーマにした話なので、空は絶対に入れておきたかったんです。寄っても空が入るようにするために、オープンゲートで撮る意味がありました。これ16:9だと空が切れてしまうんです。撮れたとしても人物が小さくなりすぎちゃうし。オープンゲートのままのアスペクト比で、特に拡大したり切り取ったりはしていません。

山本氏:

最終的には16:9ですか?

田中氏:

そうですね。両サイドの白い帯はDaVinciで足しています。オープンゲートは端っこになればなるほどボケが生きるので、奥行きが出やすくなります。縦の空間も使えますし、奥行きの空間も強く表現できます。この作品は思い出の話でもあるので、レトロな感じにするのにもうまく噛み合っています。そういったところでこのカメラを選んだ理由です。

グレーディングのノード構成とルール

田中氏:

これが今回のノード構成になります。基本的には、僕は基礎的なやり方をずっと踏襲しています。具体的には、(ノードグラフの)最初の4セクションでカラーコレクション、ノーマライズしてREC709にします。その後、後段のノードグラフでセカンダリーグレーディングを行います。パラレルノードでノードを組んでるところは色や明るさを抽出して調整します。この辺にはエフェクトやLUTを入れていて、カラースペース変換とLUTを使っています。最後にフィルムグレインを加えています。これがノーマライズだけの画で、こちらがカラースペース変換を入れただけの画です。これでも十分に深みがあって良い画だと思います。
今回は露出がアンダーだったので、その辺を調整しました。ホワイトバランスは元々暖かめにしたかったので、普段ホワイトバランスはCSTの前に入れるんですが、今回はあえて後ろに入れました。ルック寄りのホワイトバランス、つまり暖かみのある画を作りたいという意図です。あとは空や肌を抜いたり、グロー、ハレーション、フィルムルックのLUTを入れたりしています。難しいことはそんなにやっていません。基本的に他のカットも同じノード構成で作業しています。

山本氏:

Blackmagic Cinema Cameraを使いこなしている方は、皆さんすごいことをしているのかなと思って話を聞くと、意外と「そんなにやってないですよ」という方も多いです。それでもすごい綺麗な画が出てくるから、実際はそこまでいろいろやらなくてもいいですよ、みたいな感じで。

田中氏:

確かに、一見ノードが多いので、たくさんのことをやっているように見えるかもしれませんが、実際には使っていない効果をオフにしてるノードも多いので、そんなにやってることは多くないです。基本的な操作だけです。僕のいつものルールとして、ノーマライズして、セカンダリーで色や明るさを分離して、エフェクトを追加して、最後に光の向きや強さを調整して視線誘導するという流れです。難しそうに見えるかもしれませんが、少し理解すれば簡単に真似できると思います。
今回、星がテーマなので青系を意識される方が多いかもしれませんが、思い出の中のお話ということで、暖かみのある感じにしたかったので暖色系に振ってみました。こういう画はBlackmagicのカメラは本当に得意ですね。

山本氏:

ノード構成がルール決まっていて全部一緒っていうのはすごいですね。真似してみたいな。

田中氏:

他の作品をやるときも基本的に全部一緒です。もちろんちゃんと撮れているっていうのが前提になっちゃうんですが。あと講師業をしているので、ルール付けしておくと生徒にも教えやすいんです。このルールはBlackmagicのDaVinci Resolveの公式トレーニングブックに書いてある通りなんですよ。

バレ消しテクニック

田中氏:

この撮影のときめちゃくちゃ時間がなかったんですよ。さっきお見せした画はすでにバレ消しが済んでるもので、実は夕日の感じを出したかったので、ここにライト(NANLITE NANLUX Evoke 900C)を外につけています。そして、これめっちゃ重いんですよ。このテラスみたいなところに伸ばしてるので。シーンごとに外したりとかできないんです。時間もなかったんで、最初にもう全部、ライティングも全部セッティングして、消せばいいやっていう前提で取りました。現場で、「これはすぐ消せるから大丈夫」と言って、撮った素材になります。で、これを実際に消していこうと思います。

山本氏:

バレ消し実践ですよ。これ、なかなか見られないですからね。

田中氏:

Fusionを難しく考えている方もいると思うんですけど、実はそんなに難しくなくて、各ノードにエフェクトがいろいろあって、そのエフェクトさえある程度覚えたら、その組み合わせでいかようにも設計できて、後からずらすとかもできます。Fusionは電子回路図みたいな感じで全体が見えるので、セクションごとに分けて「ここ違ったな」と入れ替えたり、修正したりするのが楽でいいですね。

山本氏:

Fusionを使える方が、(Fusionは)そんなに難しくないよって言ってくれると、すごく安心しますね。

田中氏:

この素材はBRAWなので、ここのカラーマネジメント設定で、「DaVinci YRGB Color Managed」を使えば、そのままカラースペース変換でRec.709になるんですけど、今回はあえてそうしませんでした。理由は、バージョン19のパブリックベータ版なんですけど、僕が作業してた時は18だったんです。18だとFusionページに行くと色が変わっちゃう問題があったので、使ってなかったんです。
今回のやり方を説明します。このライトを消したいので、ライトの部分だけ画を止めて1枚のスチルを作って、その画を追従させる感じで作業しました。これはどんな素材でもできるわけじゃなくて、例えば自然環境だと風が吹いて木が揺れていたらできないです。今回はそんなに木が揺れていなかったのでできました。

山本氏:

比較的動かなくて固定されている被写体ということですね。

田中氏:

そうですね。看板やナンバープレートを差し替えたりオブジェクトがあるとやりやすいです。逆に空とかの空間を処理するのは難しくなります。あとは、手前に人が動いていたりすると難しいですが、いろいろ組み合わせてやると良い感じになります。
じゃあ実際にやっていきます。まず、使うノードが決まっているので、先に設計図を組み立てます。プラナー(平面)トラッカーとペイントノード、マットコントロール、ポリゴン、マージですね。このノードを使って作業していきます。プラナートラッカーは平面を捉えてトラッキングするものです。大体真ん中ぐらいのフレームでトラッキングの開始ポイントを設定して、平面を見つけてトラッキングします。それが終わったら、150フレを基準にしていたので、タイムストレッチャーノードで150フレ目で画をフリーズフレームにします。そしてペイントノードでライトを消していきます。ペイントした部分はフリーズフレームなので動きません。その部分をポリゴンノードで囲ってあげて、マットコントロールノードでガベージマットを調整します。やること決まってるのでペイントのところは気を使いますけどあとは決まったボタンを押してるだけです。ここで、プラナートラッカーでCreate Planar Transformを押すと、さっき取ったトラッキングの動きを変形ノードとして吐き出してくれるんです。このノードをマットコントロールノードに繋げてマージさせると動きを追従してライトを消してくれるんです。
他にも、ファンタジー的な演出で空にキラキラがぶわーっと上がって夜に暗転して、その光の粒が消えると占星術の魔法陣みたいなのが空にでてきたり、星空も星の素材を使って合成しています。動きはさっきのプラナートラッカーを使って合わせています。編集はカット割が頭にあったので並べるだけでしたけど、カラーとFusionで作業自体は2日かかってないくらいですね。

クリエイティブの自由度を高めてくれるツール

田中氏:

ある程度でいいので、(DaVinciの)全部の機能をできるようになってくると、脚本を書いた時に自由度が増します。

山本氏:

思い描いていたものをちゃんと形にできますね。

田中氏:

それを実現してくれるソフトだし、導入する金額も安いので特に個人で使いやすい。カメラはBMCC6Kのフルフレームで撮影して。そんなにいろいろ触ってなくてもこれだけ深みのある画になってくれるので、僕は好きですね。

山本氏:

説得力がありすぎる。

田中氏:

レンズは25mmをメインで使いました。理由は現実感のない画角、人間の見た目の40-50mmから外した歪んだ世界を表現したかったんです。寄るときは100mmや125mmでガンっと行って、またそこも現実感のない世界にしてって言う感じですね。

田中氏:

今月号のビデオサロンさんから、全6回の連載企画で、このMVをどう企画したか、どうやって脚本を考えたか、どう機材を選んだか、ライティングやカラー、Fusionをどうやったかなど事細かに解説しています。実は今、ドキュメンタリーも撮っていて実際の撮影はこの後から始まるのですが、そのドキュメンタリーでのワークフローとこのMVとの事例を合わせて書籍として出します。今年の年末とかになるとは思うんですけど、ちょっと気にしといていただけたら嬉しいです。

山本氏:

個人的に楽しみにしてます。めっちゃ見たいです。では、そろそろこの辺で失礼致します。田中さん、ありがとうございました。

田中氏:

ありがとうございました。