BMCC6Kの魅力いよいよ最終回!
システムファイブの山本隆太氏(やまもん)がさまざまなゲストとBlackmagic Cinema Camera 6K (以下BMCC6K)の魅力を伝えてきたこのシリーズも、とうとう最終回!今回は、長年のブラックマジックデザインのユーザーでもある伊納達也さんをゲストに、BMCC6Kに最適なレンズなどについて掘り下げます。
山本氏:
「BMCC6Kの魅力 対談」ということで、今回最終回となっております。ちょっと名残り惜しいですけれど、だいぶ掘り下げたかなということで最終回にふさわしいゲスト伊納達也さんに来ていただきました。
今日は、おそらくレンズの話が8割ぐらいじゃないかっていうぐらい、レンズの話を掘り下げていきたいと思います。BMCC6Kは、Lマウント対応なのでどんなレンズがいいのか、みんな気になってるところだと思いますので、必見の内容かなと思います。それでは、みなさんすでにご存知かと思いますが、自己紹介からお願いいたします。
伊納氏:
伊納と言います。栃木県に住んでおりまして、ビデオグラファーとして広告やドキュメンタリー作品なんかを作っています。ブラックマジック歴はURSA Miniから入って、BMPCCシリーズをずっと使ってきたって感じです。
山本氏:
ブラックマジックのカメラ歴はまあまあ長いですよね。
伊納氏:
そうですね。BRAW(が開発される)前からなんで。
山本氏:
今回フルサイズをね、あの例のセールの時に…
伊納氏:
そうなんです。フルフレームモデル(BMCC6K)が出た時に、いいなと思ったんですが、BMPCC6K Proをガンガン使っていたので、なかなか購入に踏み切れずにいたんですけど、ちょっと(セール時の)価格で背中押されてしまって、セールで買いました。
既存のブラックマジックカメラとの違い
山本氏:
BMPCC6K Proは、内蔵NDフィルターがあったりっていうとこで非常に使いやすいかなと思うんですが、6K ProからBMPCC6Kのフルフレームに変えてみて、画質だったり、使用感だったりとか、その辺りの印象っていかがですか?
伊納氏:
厳密には比べてないので、本当にそうなのかわからないんですけど、印象として、すごく色がよく出るようになった気がします。色味の違いを感じつつ、やっぱりアスペクト比がオープンゲートにできるっていうので、また全然違う雰囲気を出せるようになったなと思っています。
山本氏:
いろんな表現をされる方がいらっしゃるんですけど、ちょっとシルキーになったね、とおっしゃる方や、色のりが良くなった、シンプルにフルサイズになったからなのか画質が良くなったように見えるっていう方もいらっしゃるし、BMPCCシリーズとかその辺を使っていた方からすると、今回のフルフレームって画質めっちゃ良くなった、比較するとすごく違いが分かるっていう方が多い印象ですね。過去出ていただいた方は、ほぼみんな同じようなことおっしゃっている感じがします。
これちょっと余談なんですけど、あの特価セール、我々のせいで速攻なくなったらしいですよ。
伊納氏:
そうなんですか(笑)。
山本氏:
伊納さんが、すごいセールが来た!みたいなXのポストをなさってて、僕もそれに便乗するような形で呟いて結構拡散されたじゃないですか。
伊納氏:
でも、僕はちゃんとツイートする前に自分でポチってからツイートしました。なくなったらイヤだから(笑)。
山本氏:
ワールドワイドで(セールを)やっていたらしいんですけど、僕らがすごい勢いで拡散させて、日本がとんでもないスピードで売れたらしくて。日本市場は何なんだ、みたいな話になったって話も聞きました。今日はあの「枯らした」コンビでお送りしていきます。
レンズ選びについて
伊納氏:
結局BMPCC6Kがすごかったっていうか、僕がすごく気に入っていたのは、シグマの18-35mmがあったからっていうところがあるんです。そのレンズとすごく相性が良くて、僕はドキュメンタリー的なものを作るで、1本で被写界深度の浅さもありながら、ある程度の焦点距離のレンジが稼げるっていうので、あれを1本持っておけば、ほとんど撮れちゃうなみたいな。
最初は、ミラーレスマウントになったらいいなって呑気なこと言ってたんですけど、実際(BMCC6KがLマウントに)なってみたら、現代のミラーレスのレンズってどんどんボディに依存しているんです。例えば歪曲とかも、ある程度ボディで修正すること前提に作られていたり。この辺にもミラーレスマウントありますけど、フォーカスがバイワイヤーで物理的には中のレンズに繋がってないっていうことがあって、対応している純正のカメラとの相性はいいんですけど、ブラックマジックはあんまり補正とかがボディ内でかかるマシンではないじゃないですか。
山本氏:
そうですね。だからDaVinci Resolveで後から補正かけるって考え方ですよね。
伊納氏:
そうなってくると、マニュアルフォーカスのバイワイヤーだから、リニアで動くのかノンリニアで動くのが、動かした量とちゃんとリンクしてるかどうかっていうのがレンズによってバラバラだから、これ選ぶの大変だぞっていう…買ってから苦しむことになりました(笑)。
山本氏:
伊納さんとお話しして、確かに!と思ったものの、意外とこれまで対談された方、誰もそこ触れなかったです。
伊納氏:
みんなレンズ何を使ってるんですかね?
山本氏:
このLUMIXの純正レンズだったり、シグマを使っている方が多いんですよ。初回の井上卓郎さんは、すごくいいレンズなんだけど、結構このレンズ歪みあるんだね、でもそれをそのまま使っても、まあまあ味あるし、シーンによってはDaVinciの補正が非常に優秀だから、ちょっとかけてあげれば全然いいよね、みたいなお話をされていて。歪みに関しては言及されていたんですけど、フォーカスのリニアノンリニア問題に関しては、誰も今回の対談では言及していた方いらっしゃらなかったです。
2人目のDIN FILMさんは、NiSiのAthena Primeを使っていて。完全なマニュアルレンズだったら、まあ関係ないですからね。
伊納氏:
そうですよね。結局、問題になるのはそのノンリニア/リニアのフォーカス問題、それからもう1つは、歪曲とかの歪みのことろ。これはまあ後でやればいいんで、ある程度無視していいと思うんですけど。
山本氏:
電子接点がなくなると、もうひとつ弊害あるんですよね。
ジャイロスタビライザーのメリット
伊納氏:
3つ目が、そのまさに今おっしゃった電子接点のあるなしです。僕はこのBMPCCやBMCCのすごく好きなところってジャイロスタビライザーがあることなんですよ。ジャイロスタビライザーって、本体の中にあるジャイロセンサーの傾き情報を記録しておいてメタデータでそれをDaVinciで補正に使えるっていう手ブレ補正に使うものなんです。あれむちゃくちゃ精度高いし。
僕は、現代のミラーレスカメラのこのボディ内手ブレ補正って良し悪しだなと思っているんです。効きすぎると、広角レンズで歪みが出てしまうモデルも結構ありますし。歪まなかったとしても、スポットライトとかの、フレアというかゴーストが入ってきた時に、画は止まっているのに、それだけ揺れているみたいなことが結構あるんです。
ドキュメンタリーで手持ち撮影することが多いと、その辺は綺麗に撮りたいって思う中でジャイロスタビライザーは後でかけるから、そういう歪みの問題がない中ですごい自然に効くのでむちゃくちゃいいなと思っているんですね。
ちょっと前置き長くなりましたけど。その時に大事になるのが焦点距離の情報なんですよ。いろいろ実験してみたんですけど、ここ(本体の設定)に収録の時に焦点距離のミリ数が入っているか、いないかでジャイロスタビライザーの効き方って多分変わってくるんです。
これは収録時に入れないといけない情報ですけど。マニュアルレンズ、特にシネレンズやオールドレンズを使うと電子接点がないから、それを手動で入れなきゃいけない。ちゃんと準備ができる撮影ならいいんですけど、ドキュメンタリー的な作品でガンガン(レンズを)変えていくみたいな時だと、入れ忘れて後で入ってないって分かって、もったいないことになることが結構あったんです。
山本氏:
ドキュメンタリーは、リアルタイムにどんどん撮っていかなきゃいけないから、なかなかそんな時間ないですよね。
伊納氏:
ズームレンズだと、純粋に回しちゃったら変わってくるじゃないですか。それが反映されないことになっちゃうんで。
山本氏:
ああ、あるある。
伊納氏:
いわゆる映画的な作品でカメラを据えてセッティングして撮る場合はいいんです。あとコマーシャルもそうですね。RUN&GUNスタイルでガンガン手持ちで回していくとか、レンズをどんどん変えていくような作品に使う場合は、やっぱり電子接点ありがブラックマジックカメラにはいいと思っているんです。そうなると選択肢が案外ないんですよ。
山本氏:
そうですよね。電子接点があって、その上でリニア/ノンリニア問題も一緒に出てくるから。伊納さんの困ってらしたっていう話を事前にちらっと聞いてたんですけど、確かにLマウントっていっぱいあるようで実はそんなに(選択肢がない)。これはLマウントに限らずミラーレスマウント全体として多分おきることだと思うんですけど。
焦点距離の入力/非入力状態でのジャイロスタビライザーテスト
焦点距離を入力していないジャイロスタビライザーをかけた状態
伊納氏:
50mmのレンズです。本来はもっと揺れてるんですけど、抑えられてるけど、ちょっとまだ揺れが残っている。同じレンズで焦点距離を入力してやってみると…
焦点距離を入力していないジャイロスタビライザーをかけた状態
伊納氏:
テイクが変わるので厳密には同じではないんですけど。やっぱりだいぶ抑えられてると思うんですよね。そういう意味だと、やっぱり焦点距離の入力は影響があるんじゃないかっていう仮説を持っています。
山本氏:
多分メタデータ情報を読みに行ってそれを参考にやってるんじゃなかろうかと。そうでない場合はAIがおそらく見て判断している感じはしますね。
伊納氏:
まず、マニュアルフォーカスのリニア感や応答性を大事にするなら、シネレンズ。手に入れやすいものが出ているので、それもありだと思うんですね。あとはオールドレンズ的なものに行くか。もしくは電子接点を重要視するならミラーレスマウントのLレンズ、最新レンズでデフォルトの状態で、このフォーカスがリニアなものを選ぶっていうことが基本的にどちらかっていうのが1つの大きな選択肢になるかなと思います。
ちなみにいろいろ触ってみて、ブラックマジックカメラにつけて、フォーカスがリニアだったのはシグマだとここにある28-70mm F2.8 DG DNはリニアに動きました。
山本氏:
これはCだから、アートレンズじゃないので比較的コンパクトですね。
伊納氏:
コンパクトで比較的今の最新レンズの中ではお手頃なので、気軽1本使うならその選択肢はいいのかなと思います。
山本氏:
引きじりに28mmっていうのが足りるんであれば、いいと思いますね。
伊納氏:
というのが今のところ見つけているやつで、シグマレンズのいわゆるDGDNのミラーレスマウントになってからのレンズで、現状僕はこれ以外はまだ見つけられてないんです。リニアな挙動のやつは。
山本氏:
デフォはでもそうかもしんないな。
伊納氏:
単焦点系はやっぱり結構ノンリニアだったんですよ。ノンリニア具合は全然違うんですけど。あともう1個見つけたのはこれ。LUMIX S PRO 24-70mm。これは噂を聞いていたんですけど触ったことなくて。さっきやってみたら、リニアに動きました。やっぱり映りもすごくいいし。ちょっとでかいですけど、これはむっちゃありだなと思いました。あとトルク感も結構あるんで。
山本氏:
このレンズ、LUMIX使いに聞いても、まぁ僕もLUMIX使いですけど、いいレンズだと思います。
伊納氏:
ブラックマジックのユーザーって結構これ(Blackmagicのカメラ)以外にもミラーレス1台持ってる人が結構多いと思うんです。そういう場合にもLUMIXと共有するのは、ありかもしれないですね。この辺は選択肢としていいのかなと思いました。
個人的な感想で言うと、1番そのノンリニア具合がでかかったのがLUMIXの単焦点のf1.8同士のシリーズ?
山本氏:
ああ安い方。50mmのf1.8とか。
伊納氏:
コンパクトなやつですね。あれは結構ノンリニアだったんで。あれの24mmとかで撮ってたら、手持ちで追いかけるみたいなのは厳しいなと思いました。
山本氏:
そうかも。僕も50mmでやったことありますけど、ムズっ!て思ったんですよ。
伊納氏:
ミラーレスマウントのレンズ、Lマウントのレンズを使うならその辺もしくはご自身でいろいろ触ってみてリニアな挙動のものを探す必要があるかなと思います。
山本氏:
そうですね。撮る作品にもよるとは思うんですけど。そんなにがっつり追い込む必要がないようなもんだったら、全然ノンリニアでもいいですし。
伊納氏:
そうですね。最近出たシグマの28-45mm、むちゃくちゃいいレンズだと思っていて。18-35mm使った人間からすると、あれ1台だけでやりたいなみたいな気持ちはすごいあったんですけど。若干ノンリニアだったって感じで。まあ、許容してもいいけど(もっと)厳密だったらなって、微妙なラインではありましたね。
山本氏:
あれはシグマさんに話をあの聞いたところ、うちは結構、頑張ったんですけどっておっしゃってましたけど(笑)。
伊納氏:
今、基本的に2択と思われがちだと思うんですよ。いわゆる最新Lマウントレンズでノンリニアなものを探すか、マニュアルフォーカスのシネレンズにしちゃうとか。あとはフォクトレンダーっていう手もあって。僕もフォクトレンダーは好きなので、VMマウントのフォクトレンダーをマウントアダプターで変えるっていうのは1つあるかなと思ってます。
ただそれでも焦点距離は入らないので、自分で入力しなきゃいけないっていうこと、その手間だけちゃんとできる現場ならそっちでいいのかなとは思ってます。
山本氏:
そうですね。RUN&GUNスタイルみたいな使い方をしたい方は、やっぱり電子接点使ってパッと(撮る)。あと僕みたいなめどくさがり屋とかね。
伊納氏:
そうなんです。その2つしかないのかなと、毎晩考えながら布団に入っていたんですけど。思いついたんですよ、その2つ以外の選択肢!通販みたいになってきたな(笑)。
山本氏:
立場逆(笑)。
伊納氏:
でも、このレンズもう販売してないんです。シグマの一眼レフ時代のアートレンズ。
山本氏:
ああ、なるほど!
伊納氏:
いわゆるあのDG HSMシリーズ。あれはそもそもフォーカスがバイワイヤーじゃないんで。電子接点がEFマウントを使えば、マウントアダプターを使えば入る。
山本氏:
そうですね、あのシグマのL to EFの変換みたいなやつですね。
伊納氏:
というのが、1つ僕の中で答えとして見つかったんです。
山本氏:
なるほど。まあ、新品では見つからないかもですけど、結構世に出回ったレンズではあるから中古は出回ってますよね。
伊納氏:
あと、みんな結構ミラーレスに従って(レンズを)手放してるんで手に入りやすいっていうのもあります。
山本氏:
お手頃かもしれないですね。L to EFのマウントアダプターもそんな高くないから。
伊納氏:
3~4万円くらいですね。今の最新レンズの方が、スペック見たらいいんですけど、この時代(のレンズは)歪曲とかその辺のボディ内修正が入らない前提で作ってるレンズだと思うんです。だから歪曲とかの性能は昔のやつの方がいいんです。でかいですけど。
山本氏:
ああ、なるほどね!ボディ内で補正をかけるから、その分画質の方に振ってるけど。
伊納氏:
シグマさんも、そういう風に公言していて。今、設計がだんだんそういう風になっていってるんですけど。でかい分、素の画がいいので、そういう意味でもありなのかなと思う。特に今、僕が使ってるのは、24-35mmのズームレンズという、シグマアートレンズ史上5本の指に入るほど売れなかったレンズらしいんですけど(笑)。
今あえてこいつがいい!っていうね。これシネマレンズにもなってるやつですから。フルフレームもカバーして、24-35mmという非常に狭いレンジなんですけど、単焦点並みの写りの良さという。
山本氏:
伊納さんの用途にはめちゃめちゃ刺さりますね。
伊納氏:
買えないレンズの説明をこれだけしてもしょうがないんですけど(笑)。
オープンゲートが撮れるということが非常に大事なんですよ。オープンゲートでアスペクト比が16:9から3:2に変わると、やっぱり焦点距離の見え方が結構変わりますよね。写真をメインに撮影されている方が動画撮影すると、焦点距離の感覚が全然違うっておっしゃる方が多いです。あれって上下クロップされる分だけ、35mmレンズ使っている、でも50mmに感じるってことがあると思うんです。それがやっぱり16:9とオープンゲートで全然変わるなと思うんです。僕、28mm好きなんですけど、多分16:9での28mmが好きなんだと思うんですね。
オープンゲートで28mmで撮ると、こんなワイドだったかなって感じになった時に35mmにするとちょうどいいなと思うんです。
オープンゲートで16:9の焦点距離の感じに対応するのに、この20-35mmはちょうどいい、という意味で気に入ってるんですよ。
山本氏:
なるほど〜。もう面白すぎて、飲み行きたいです。
伊納氏:
ただ、ここまで言ったんですけど、落とし穴がまだあるんです。僕、これが出た時に、喜んでシグマアートレンズの28mmの単焦点を買ったんですよ。あれは結局DG HSMの1眼レフ用のシグマアートレンズの中の最後発のレンズなんです。ということは、1番現代に近いレンズ性能をしていながら、フォーカスはリニアに動いて電子接点がある、そして映りは最高にいいと。もうこれしかないと思ったんですけど、これフォーカスの角度むっちゃ狭いんですよ。だから5m先から1m先ぐらいのレンズのピントの動きを2mmぐらいで表現しなきゃいけないです(笑)。
5Dとかの頃から一眼動画やってる人間からすると、なんか昔懐かしいなって気もするんですけど。まぁ、その感覚に戻ったっていう気はちょっとしますね。
山本氏:
いや、それ僕できる気がしないな(笑)。
伊納氏:
慣れたらいいんですけど。その辺は気をつけていただかないと。ミラーレスレンズやシネマレンズに慣れてると、あれこんな狭かったかなってなります。
山本氏:
最近のこういうレンズって、ある程度マニュアルで動画撮ることも考えられてるから、フォーカスの回転角も結構広めですもんね。
伊納氏:
そうなんです!そんな時に、まだ出てくるんですけど(笑)。
その時に僕は気が付いたんですよ、もっといいレンズがあったと。なんだと思います?もう答えがここに置いてあるんですけど。
山本氏:
そうですね、ずっと気になってたんですけど(笑)。それがこのツァイスになると。
伊納氏:
はい、電子接点がありつつ、マニュアルフォーカス前提だからフォーカスの角度が広い!これはですね、カールツァイスのMilvus、あとOtusの2つのラインですね。
山本氏:
めちゃくちゃいいレンズじゃないですか!
伊納氏:
これは最高です。いわゆるフォクトレンダーを作ってる長野のコシナが作っていて、電子補正前提じゃない光学性能で電子接点がEマウントならついていてマニュアルなんで、フォーカスの角度も非常に広い。
山本氏:
Milvus/Otusはむちゃくちゃいいっすよ。
伊納氏:
むっちゃ綺麗じゃないですか。やっぱり画にもMilvusだな、Otusだなみたいな雰囲気も出てくるし。
山本氏:
画の説得力がワンランク上がる感じがします。
伊納氏:
僕のような用途ではってことですけど、マニュアルフォーカスでRUN&GUNするならMilvus/Otusが最適なんじゃないかという結論に到達しております。
山本氏:
カメラより高いじゃないですか(笑)。
伊納氏:
でもMilvus/Otus、結構中古で出回ってるんです。Otus20万円台で買えますよ。
山本氏:
もうそんなんで買えるんですか。高級レンズのイメージでした。
伊納氏:
4、50万しましたからね。Otusなんかは、いわゆるツァイスのスプリームのちっちゃいやつとかを買うなら、4、50万で手に入るならって言って動画用途で使う人も多かったんです。
山本氏:
多かったです。そうか、もうその話は結構前なんだ。
伊納氏:
あれ出たの、もう10年前ですよ。
山本氏:
そうですよね。僕、8年前ぐらいに初めてラスベガスのNABに行った時にもMilvus/Otusと、ちょっとカメラ忘れちゃいましたけど、確かソニーのFS7とかだった気がするんだけど、その辺との組み合わせがもう最高だよ、みたいなこと言われたんですよ。
伊納氏:
オールドレンズのリハウジングしてる海外メーカーなんかも、Milvus/Otusのリハウジングを積極的にやっていたって話がよくあるように、いろんな用途に人気だったレンズなんで。
山本氏:
そうですね。電子接点がついていてAFも使えて、マニュアル操作でもめちゃくちゃ操作感が良くて、勝てるレンズある?みたいな感じだった記憶あるし、実際にすっごい画がきれい!もう、そんな値段で買えるんですね。
伊納氏:
ちなみにこのMilvus/OtusはニコンFマウントとキヤノンEFマウントの2モデル出ていたんですけど、ニコンマウントだけがここに絞りのリングついていて、しかもそれをデクリックできたんですよ。だから動画用だとニコンマウント買ってデクリックしてEFマウントに変換する人は結構いたんです。残念ながら、それだと電子設定が効かなくなるのでBMCCに使うならEFマウントがおすすめです。
山本氏:
このカメラを使ってRUN&GUNスタイルで撮りたいっていう方は結構いらっしゃるんですよ。ただやっぱり難しい。筋肉は全てを解決するみたいな方もいらっしゃいますけど。そんな強靭な肉体があればブレんよ。みたいなことを言ってる海外クリエーターの方を見たことありますけど、俺には無理だなと思います。
伊納氏:
やっぱりジャイロスタビライザーは便利なんで、有効活用したいなと思いますね。
山本氏:
そうですね。でもそれ(ジャイロスタビライザー)はDaVinci Resolveでやるんだって話ですけど。カメラ買ったらDaVinciついてきますからね。DaVinciにカメラがついてくるって考え方もありますけど。
伊納氏:
そういう意味で、その辺りの一眼レフ時代のレンズとかはありかなと思ったりします。
山本氏:
いろんな選択肢があるし、今後もLマウントのレンズってもっと増えていくでしょうし。リニアかノンリニアかまだ試せていないのでわからないですが、ちょっと暗いけど「LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3」*が今月発売になるんです(*現在発売中)。S9っていうちっちゃいカメラ用に作られたレンズなので、このカメラと合うかどうかはわからないですけど。写りは良かったんで、屋外で取るんだったら選択肢になるかもしれない。届いたら試そうかなと思ってます。シグマもLマウントレンズ増やすって話を聞いてますし、(BMCC6Kが)Lマウント対応っていうのはわりかし嬉しいなと思います。
伊納氏:
やっぱりLマウントになったことで選択肢は確実に増えているので、それはありがたいなと思います。
山本氏:
意外と忘れがちなんだけど、LマウントからEFに変換して古いレンズが使えるので、そうすると本当に(使えるレンズが)無限大になっていくんで、ありだと思いますね。EFレンズこそ多分世の中に資産が死ぬほどあると思うので、皆さんもチェックしていただければなと思います。
伊納氏:
みんなEFレンズ手放し始めてるから、ちょうどいいなって思ってるんです。
山本氏:
そうなんですよね。キヤノンとしてもEFのサポートをやめることはただちにはないと思うんですけど、おそらくEFマウントを採用したボディを出すことはないと思われるんですよね。フラッグシップ機もRFでR1出ましたし。R5もマーク2が出てもう盤石でしょう。RFの24-105mmのF2.8のレンズとかめちゃくちゃいいんですよ。伊納さんの用途に合うかは別としてああいうレンズがLにも来ないかなと思ってるんですけど。
山本氏:
LUMIX純正レンズって16-35mmのF2.8がなくてF4しかないんですよ。なんでやねん!って感じなんですけど。
伊納氏:
でもこれ完全に盲点でした。これさっき見た感じだけですけど、むちゃ良さそうだったんで、先にこれを知っていれば、こんな周りくどいことしないで普通にこれを買っていた気がします。
この僕LUMIXのS Proシリーズは50mmも好きなんですよ。50mmはF1.4で、同じくらいでかいんですが、写りはやっぱりすごくいいです。あれも1回ちょっと試さなきゃですね。あれ使えたら本当はいいんですけど。
山本氏:
レンズ選びは沼ということですね。ちなみに前回対談させていただいたShumaさんは、オールドレンズ使っていましたね。オールドレンズ最高って言ってました。
伊納氏:
その回観ました。オールドレンズいいと思いますね。僕もライカのRシリーズ持っていて、それBMPCC6K Proと組み合わせると、むちゃくちゃ色のりがレンズが良くて、後で触れるんですごく良かったんですけど…オールドレンズってセットで揃えようとするとむちゃくちゃ大変なんです。特にライカのRシリーズって長いこと売っていたレンズなんで、年代によってコーティングが違って色変わるんです。それを揃えて合っているものを探すみたいな作業で1年ぐらいレンズがなかった時代があって、使いたいレンズが揃えられなくて結構大変だったんです。
山本氏:
オールドレンズって型式が揃ってりゃいいってわけじゃないですからね。
伊納氏:
1カット1カット、テイストが違うプロモーション的な映像とか、そういうものだったらいろんな特徴のあるレンズ使うのがいいと思うんですけど、一貫したシーンを撮らなきゃいけないときに苦労することがあったので、その辺もやっぱり沼る理由だなと思います。
山本氏:
そうなんですよね。カメラ揃えても、同じカメラで撮ったとしてこのシーンは24mmで撮りたい、このシーンはちょっと寄りたいから50mm使いたいというようなときに、24mmと50mmでメーカーとか特色が全然違うレンズ使うと、あれ?みたいになりますね。
伊納氏:
そうですよね、僕もそれが課題で。シグマはシャープでカリカリなんで、このシグマの24-35mmをMilvus/Otus組み合わせると、傾向は若干変わってくる。でもまあ、2カメで会話してるシーンをこっちからとあっちから抜くみたいなのじゃないから、例えばこれだったら100mmマクロなんで、これ使う時はもうクロースアップになってるんで、そこの画がテイスト違うのは、あまり問題ないかなと使ってるんです。
山本氏:
そういう用途だったら、そうですね。
伊納氏:
多分Shumaさんのオールドレンズの使い分けも、そういう場面ごとの使い分けだと思うんです。そういうことをうまく考えないといけないなと思いますね。
山本氏:
本当にレンズって沼だけど、この沼にはまっちゃうと楽しすぎて一生お金がたまらなくなるっていうね。
伊納氏:
そのライカのRの比較映像があります。これ配信で分かるかわからないんですけど。
ライカR 比較動画
伊納氏:
よく見ると50mmと28mmは緑のところが青っぽく見えて、90mmと35mmはちょっとアンバー寄りというか暖色っぽく表現されてるんですよ。こうやって見るとあんまり気にならないんですけど、同じものを撮っていて切り替えたりする、結構思うことがあったんです。
山本氏:
これ自分で編集していると一番分かりますね。
伊納氏:
多分(完パケを)見てる人は、もう圧縮とかされているし気づかないのかなとも思いますけど編集してる時はわかりますね。オールドレンズは年代とか、そういうところを気にして集めなきゃいけないなとは思います。
山本氏:
こだわり始めるとね。特にオールドレンズの場合は保存状態によっても変わっちゃうので、完全に揃えるのはなかなか難しいと思うんですけど、ちょっと意識するといいポイントかもしれないですね。
レンズ選び まとめ
Blackmagic RAWについて
山本氏:
レンズの話だけ一生していても、このカメラの魅力の話で全くなくなってきちゃうので、カメラの話もしていきたいんですが。BRAW(Blackmagic RAW)についてはどう思われますか?
伊納氏:
もう世の中、全てのカメラでBRAWで撮れるようにして欲しいぐらい、僕はBRAW信奉者ですけど。なんなら神棚にBRAWって書いて飾りたいぐらい好きですけどね(笑)。
山本氏:
BRAWはRAWなのにえらい軽いじゃないですか。もうProRes別になくてもいい、みたいな。
伊納氏:
処理も速いし、容量もそんなにでかくならない。僕なんてURSA Mini 4.6Kから使ってたんで。(当時の記録媒体が)CinemaDNGだったんで、むちゃくちゃ大変だったんすよ。
山本氏:
しかも当時のCinemaDNGだから当然PCも当時の環境じゃないですか。
伊納氏:
もう一生レンダリング終わらなかったですよ(笑)。今使っている編集用PCはMacbookのM1 Proで、これで4Kとか6Kとか編集できちゃいます。
山本氏:
走らせるぐらいだったら8Kでも普通に走りますよね。
伊納氏:
その軽さが1つあるのと、僕はやっぱりドキュメンタリーこそRAWで取るべきだと思うんです。なぜかと言うとホワイトバランスがちゃんと撮れていない状況で撮る場面って結構多いんですよ。
山本氏:
もちろん設定とか撮影前に当然やるんだけど移動して、部屋が変わったりとか移動してる時にホワイトバランスがバンって変わっちゃう。でもオートホワイトバランスはやっぱり使えないから。
伊納氏:
ミックス光(?)のところも結構あるし。最近のドキュメンタリーの撮影で、お店の中で撮影して、準備している外の様子とかもすぐ追いかけて撮りに行っちゃったりする。暖色と日光で全然(色が)違うものを後で直すことができる、しかも手軽に変えられるっていうのがBRAWの便利さだなと思います。
山本氏:
そうですね。井上さんとお話ししたときに、カラーマネージメントで一発戻して、そこからちょっといじるだけ、みたいなグレーディングのやり方を聞いて、目から鱗だったんですよ。それまでは、全部手動でニュートラルに戻していかなきゃいけなくて。そういうやり方をする時もあるんだけど、もうカラーマネジメントでポーンで、LUT当てることもなく1発で戻っていくのが「うわ、すげぇ!」と思いました。あれをやりつつもRAWだから、ホワイトバランスを変えたり自由自在にできるし。
僕、どことは言わないですけど、とあるメーカーさんのlogのガンマカーブが苦手で。LUMIXやBRAWはわりかし思った通りにいくんですが、そこのメーカーさんのやつ本当に苦手でうまくできないです。
伊納氏:
私も全く同じ感想です。どこのカメラか分からないですけど。LUMIXとBRAWだけは自分でうまくできるっていうのあります(笑)。
山本氏:
そんなにグレーディングうまくはないんで、勉強中の身ですけど、自分の頭の中で思い描いたこういう風に持っていきたいっていう、ざっくりとした設計図を落とし込めるんですよね。
伊納氏:
わかります。グレーディングうまくない人ほどブラックマジック使った方がいいと思うんですよね。
山本氏:
パッとLUT当てるもしくはもうExtended VideoのLUT当てるだけでも結構エモい。
伊納氏:
そうですよ。Extended Videoプラスちょっとそこに味付けするぐらいで、全然上質な画になるんで。
やっぱりカラーグレーディングをマスターしてる人じゃなくても、最初から綺麗な画にたどり着きやすいカメラだなと思いますね。
山本氏:
ブラックマジックのカメラ全般に言えますけど、現代のミラーレス一眼というものに慣れているほど、こいつジャジャ馬だと思うんですよ。だって手ブレ補正は後からジャイロで、撮っている時に本当に大丈夫かなってなるし、フォーカスだってマニュアルフォーカス大前提。オートフォーカス使えない。
私も普段LUMIX S5IIを使いますけど撮影をサポートしてくれる機能がとにかく多すぎる。それに慣れちゃうと(BMCC6K)持った時に本当に使えるかなってドキドキしちゃうと思うんですけど。初めて動画のカメラ触るような方が触っていきなりうまくはいかないけど、ミラーレス一眼で普段撮ってる人なら、多分ちょっと練習したらそれっぽくは撮れますよ。意外と自分で思うほどはきっと難しくない。僕は結構難しく考えがちなんですけど、そんな僕でも使えないことないなと。今は全然普通に使っているので、いろんな方に触って欲しいと思いますね。
伊納氏:
やっぱり現代カメラの中でもこのメニューのシンプルさは、最高です。必要なことが網羅されているけど、それ以上の複雑な、「このカメラにしかない設定」みたいなのがあんまりないじゃないですか。本当にシンプルで分かりやすくて使いやすい。やっぱりUIはブラックマジックが最強だと思ってます。
山本氏:
そうですね、ほとんど迷わないですよね。(あのメニュー)どこにあったかなみたいなの、どこのメーカー使ってても大概あるけど。あとこの液晶のこのサイズ感。
伊納氏:
それですよ!これサイズが外部モニターみたいなもんじゃないですか。
山本氏:
Video Assistがくっついてるようなもんだから(笑)。
伊納氏:
このカメラ、一見でかく見えるけど、結局モニターも5インチぐらいのがついてると思ったら、あとは僕だったらマイク系つければそれで済むので。
山本氏:
普段の撮影はそれで撮っていらっしゃる感じですか?
伊納氏:
そうですね。普段はここにマイクつけて、あとロッドで後ろにVマウントのちっちゃいバッテリーつけて。今日ロッドは置いてきちゃったんですけど、あと上にマイクつつけるか、あとその横のサイドハンドルをつけるのが好きなんで、それぐらいです。
山本氏:
伊納さんも使ってらっしゃいますけどSmallRigとか、TILTAはちょっと高級になりつつあるけど、でも比較的手を出しやすくてお手頃でかっこいい。ブラックマジックのカメラは、リグもいろんなメーカーから出ているから。
伊納氏:
モニターを上につけなくていいのがいいですね。外部モニターで結構でかくなっちゃうから。
山本氏:
結局モニターを上につけると、バランスも悪くなっちゃうし結構めんどくさいと思うことが割とある。とはいえ3.5インチではさすがにフォーカスの山が見えない、みたいな。
伊納氏:
そうなんですよね。やっぱりマニュアル前提のカメラだから、モニターがでかいっていうのはすごく理に叶っている作りだと思います。
山本氏:
初めてフルマニュアルで撮った時に結構小さめのカメラだったんですよ。外部モニターは一応持っていたんですけど、トラブルがあって外部モニター使えなくて、しょうがないからカメラの液晶モニターと撮った後にすぐチェックするっていうやり方でやりましたけど、めちゃくちゃやりづらくて。俺マニュアルフォーカスまだ早いんかなと思ったんですけど。その後、社内で同じようなことをやってみたんです。全然できるやと思って。ここ(液晶モニター)大きいの大事ですよね。
伊納氏:
そうだと思います。なかなかこの(ブラックマジック)カメラ以外、このサイズのモニターが付いてるカメラないので。
山本氏:
本当に迷わないし。現代のカメラって、いろいろできすぎるんだよね。ボタンの割当てとかも自由自在にできるじゃないですか。スチルを前提にしているからってことだと思うんですけど。
これBMPCC 6K Proなんですけど、普段こんな感じです。上にマイクつけてロッドで、今は写真だとパッドつけているんですけど、そこにVマウントつけたりなんかもしてます。
山本氏:
やっぱりね 使い慣れてるだけあって、フルフレームになったからといってボディのデザインとかが大きく変わってないのもまたいいですね。同じような運用で使えるから。NDフィルターだけは別途用意しないといけないですけど。
伊納氏:
PYXIS 6Kも出たし、またいろいろ用途によって選べるようになったのもいいですよね。実物見たら思ったよりコンパクトでした。
Blackmagic PYXIS 6Kについて
山本氏:
せっかくPYXISの話題が出たので、その話もちょっとする、センサー自体は実はBMCC6Kフルフレームと同じなので、出てくる画は一緒なんですがCFxpressのスロットがデュアルスロットになっているのと、12G-SDIとリファレンスTCのインがある。あとイーサーネットの端子がついているから、ネットワークに繋いだり。
伊納氏:
バッテリーも大きくなります。
山本氏:
ソニーのUバッテリーですね。FX6とかあの辺と同じバッテリーを使ってる。これだったらVマウント運用じゃなくても十分使えるんじゃないかと思いますね。こう見るとかっこいいな。
伊納氏:
いいですよね、かっこいい。あとこのEVFとかモニターとか新しく出たやつがUSB-Cで繋がるのがいいっすね。
山本氏:
PYXIS Monitorはディスプレイポートの技術を使ってるらしいです。
これ(Blackmagic URSA Cine EVF)めっちゃいいんですけど、まあまあいい金額するんです。PYXISを使おうと思ったらこれがないといけないのかと思っていたところに、PYXIS Monitorっていう素晴らしいものが出てくれたんで。
伊納氏:
これと比べるとだいぶお手頃な感じで。
山本氏:
手を出しやすくなったと。ガチるなら、URSA Cine EVF欲しいですけど.多分PYXIS Monitorでも十分使えるんじゃないかと思いますね。
伊納氏:
USB-Cってことは、別のバッテリーそっち側にいらないってことで、それは非常にいいですよね。そういう意味で、やりたい映像によって形を選べるようになったのがとてもいいなと思います。
伊納氏:
今BMCC6Kで撮っている作品の映像あるのでお見せします。
うちのスタジオの周りのお店をいろいろ撮ってドキュメンタリーするっていうシリーズをずっとやってるんです。その最新版で、新しくできたカフェを追いかけていて、その撮影素材です。
これがシグマの28mmの単焦点とフォクトレンダーの40mmと、このMilvusの100mmが混ざってる状態です。
山本氏:
この辺の質感がすっごい映画っぽいですよね。
伊納氏:
この辺もExtended VideoのLUTにプラスアルファでちょっと色をいじってるだけです。この(カフェの)中側は暖色の照明で外側がまだ朝の感じなんで、色温度が全然違うんですよ。それを設定変える間もなく、どんどん撮って後で調整してるって感じです。
山本氏:
こういうカットの繋ぎ方だったら、要は切り替わった瞬間のところだけ使わなきゃいいだけなんで、RAWだからそれも使おうと思ったらやりようもあるけど。
伊納氏:
これはフォクトレンダー40mmの画なので若干ジャイロスタビかけてるんですけど、ちょっと揺れてるんですよね。なので、もしかしたら後でジャイロじゃないスタビライザーかけて調整するかもしれないです。普段のお店の様子を撮ってるだけなんですけど、めっちゃ質感がある画が撮れて、ここからグレーディングで追い込んでいけばいいと思うんです。
山本氏:
このままこのカフェの店頭で流れていても違和感ないですね。もう見れる画になっている。あとはこれをどういう方向に追い込むかにもよると思いますけど、シネマティックなのかもうちょっとリアリスティックなのかって。
伊納氏:
自主制作は今住んでいる街のいろんな職業とかの舞台裏を作品化していきたいと思っているんですが、そういう用途にはちょうどいいなと思って使っています。このサイズだったら別に振り回しても、でかいカメラで取材に来た感じもしない。
山本氏:
そうなんですよね。例えばCM撮影で、スポンサーや広告代理店もいるような大きい現場だと、おそらく大きいカメラを持ち出した方がクライアントへの説得力が出るんですけど、逆にそういうドキュメンタリー用途だとあんまり大きいカメラだと撮られている側が緊張してしまうことがあると思います。
伊納氏:
それもあると思います。撮っている側としても余計な負担がかからないので内容とか被写体の話に集中しながら撮って、後はポストでやればいいっていうカメラなんで。ドキュメンタリーにもすごくいいなと思ってます。
山本氏:
よくこのカメラが難しいとか、撮ってる時にちゃんと手ブレが効いてるか心配っておっしゃる方多いですけど、使いこなしてる方に聞くと、ジンバルなんか全然使ってないよ、手持ちで普通にやってるっていう方が多い印象です。もちろんジンバルを効果的に使うのも手法としては全然ありなので、別にジンバルを使うなって話じゃないですけど、全編ジンバルじゃないとスタビが全然効かないとかってことではないからBRAWで撮って、後からなんとかする。
一眼レフを使っていると、色以外は撮影段階でもなんとかしちゃうっていう考え方に慣れてる方が非常に多いと思うんですけど、やっぱりBRAWのいいところはDaVinciと組み合わせることで、撮った後に多少ミスしてもなんとかなるのが魅力の1つじゃないかと思うので、いきなり実践投入するのが怖ければ自主制作で使ってみるとか全然ありだと思うので怖らずに1回使ってみて欲しいです。このカメラで慣れれば、絶対うまくなるから!
自由時代なんで全部リアルタイムにうまく撮れた方がもちろんいいのかもしれないですけど、便利なものはしっかり使って。こいつにおいての便利なものってのは絶対BRAWですから。
撮って出しもできるカメラ?
伊納氏:
僕、思うんですけどExtended Video、綺麗じゃないですか。
山本氏:
めっちゃ綺麗ですね。
伊納氏:
ということは、これほぼ撮って出しでもいいってことじゃないですか。だからグレーディング前提のカメラとして言われがちなんですけどExtended Videoをカメラ内で設定しちゃって。
山本氏:
LUT焼き込みみたいにできますね。
伊納氏:
編集のプロジェクト設定もExtended Videoにしたら、そのまま撮って出しでもいいってことじゃないですか。RAWだけど撮って出しもできるみたいな状況ってあんまりないなと思って。
山本氏:
それは確かにそうかも。
伊納氏:
撮って出しの言葉の意味にもよりますけど、そういう意味だと汎用性広いんじゃないかなと思います。
山本氏:
そうかも。というのも私、LUMIXは大好きなんですけど。V-log(LUMIXのlog)で撮ってそこにREC709のモニターLUT当ててそれでオッケーとは思ったことはさすがにないです。綺麗なんだけど。
伊納氏:
ビデオルックにはなるのは確かですね.
山本氏:
ただBRAWだとExtended Video使ってシネマっぽくなるんですよね。それだったらそのまま使ってもいいって思うシーンは確かにあるかも。それこそ僕が普段やってるカラーマネジメントで一発で元に戻すことと、基本的にはやること同じなので、確かにありかも。
伊納氏:
最近YouTubeでも、いわゆるYouTuber的な喋りの発信とかバラエティー的な企画じゃなくて、ドキュメンタリーといえばドキュメンタリーだけど別にすごいストーリーがあるわけではなくて、日常を発信してるようなのが各ジャンルで結構出てきてると思うんです。そういう人たちがブラックマジックのカメラ使うと発信の質が変わってくるのがいいなと思ってます。
山本氏:
たまたま見つけたTikTokerの方で、YouTubeショートにも動画あげ始めて登録者数が10万人ぐらいいらっしゃるチャンネルがあって、その人のYouTubeで横動画を観たらなんとBMPCC4Kで撮っているんです。
日常の様子をBMPCCで撮っていて。その方も、他にもソニーのカメラとかも持ってるけど、BMPCCはシネマティックに撮れて、このカメラがないと絶対ダメな画が撮れるんですってすごい熱く語ってて。その人のメインコンテンツは奥さんとの掛け合いが面白いショート動画だから、その横動画の方は全然伸びてはいないんだけど(笑)。なんかちょっといいなと思いましたね。
伊納氏:
1回お話ししたことある方で、海外ですごく人気なんですけど。日本庭園の発信をしているチャンネルでブラックマジック使ってて、すごい綺麗に発信されています。
山本氏:
人物を撮ってもすごい綺麗なんですけど、ネイチャーとか風景とかその辺がすごい映えますよね。
伊納氏:
緑の表現がすごい綺麗です。Too muchにビビットにならないで自然な表現ができるのがいいですよね。
BMCC6KとBlackmagic Cloudの連携
山本氏:
最近、僕はiPhoneのBlackmagic Cameraアプリをよく使うんです。子供と出かける時にでっかいカメラが子供にぶつかると危ないとかいろんな事情があって。ちゃんと撮ろうって思う時は普通にカメラ持ち出すんですけど、このレベルのお出かけだったら、今日はiPhoneだけでいいかって、iPhoneのBlackmagic Cameraアプリで撮って、撮影した素材をBlackmagic Cloudにライブシンクを使ってバンバン送って後で編集するってフローを組んでいるんです。あれですら色のりがすごく良いので楽なんですよって話を最近いろんなとこで話しているんですが、全然誰にも刺さらない(笑)。
伊納氏:
僕はBlackmagic Cloudむっちゃ使ってて、あれはむっちゃ便利です。
山本氏:
何が話したいかと言うと、今、アップデートでここ(BMCC6K)から直接プロキシを飛ばせるんです。このカメラにスマホとテザリングで繋げる、要はネット回線をBMCC6Kに与えてあげるんです。そうすると撮った映像をチェックするサムネのところに行くとそこがBlackmagic Cloudに繋がるようになっていて、撮ったものを内部でプロキシにエンコードしてDaVinci Resolveの方に飛ばすことができるんです。だから撮ったらすぐにそれをDaVinci Resolveにクラウド経由で飛ばして編集できる。しかもプロキシなのに元がBRAWだからプロキシのデータにメタデータが載ってるんですよ。
伊納氏:
めっちゃいいっすね。僕、Blackmagic Cloudは本当に便利だと思っていて、DaVinci使ってる人はみんな使った方がいい。
山本氏:
クラウドって今どんな用途で使っています?Blackmagic Cloudって一言に言ってもできること多すぎるんですよ。送ることもできるし共有することもできるし。
伊納氏:
僕が使っているのは、いわゆる遠隔地にいるエディターとプロジェクトを共有して、その編集を共有しているって感じですね。
山本氏:
素材の共有をどうしているんですか?
伊納氏:
Blackmagic Cloudにプロキシ上げてます。
山本氏:
その使い方をされてる方が、今一番多いと思うんですけど。例えばもうそのドキュメンタリーを撮りつつ、横にiPhoneをリグと一緒にこんな感じでくっつけることになると思うんですけど、こいつ自体が5Gとか入る環境であれば撮りながら撮素材をリアルタイムのプロキシで送りまくれるんですよ。そして遠隔地にいるエディターの方がもうそこで編集し始めるみたいなことができる。
伊納氏:
ドキュメンタリーをやっているとインタビューも多くて、インタビュー撮影は撮影が終わった後に文字起こしをかけるんです。これまでは、帰ってきてから素材取り込んで、それをまた音声書き出して別のところにアップして書き起こしをしてもらっていたんです。
それがクラウドワークフローだと、1回クラウドに自分で(素材)入れて、その後に別のスタッフが書き起こしの作業をしてくれて、字幕でそのまま当ててくれたりして、本当に編集が楽になったんです。自分以外のチームとやる時のつなぎの細かい作業が全然いらなくなって便利だなと思ってます。
山本氏:
めちゃくちゃ便利ですよね。システムを組みさえすれば、自分で素材を取り込む必要すらなくなるっていうフローもあるので、少しずつ使う方も増えているのでクラウドはもっと広めていきたいですね。
伊納氏:
最初もっと複雑なのかなと思ったら、すごく簡単だったんですよね。
山本氏:
Blackmagic CloudってDaVinciのプロジェクトの共有ができます、以上!みたいな感じに見えたんですよ。このCloud Storageが何百テラとかいけるみたいだけど、何するの、と思ってたら割とすぐ素材共有もできるようになって、今はそれだけではなくて撮った素材をそこに直接送ったり、あとスイッチャーで収録したものを、普通は収録止めたらファイルができ上がって、そこから共有していく感じになると思うんですけどATEM Extreme ISOとかでライブシンクみたいなことができてREC回してると勝手にそれがクラウドにもどんどん上がっていくという。ひとえにBlackmagic Cloudと言ってもできることが3つ4つ、もっとあるかもしれない。
伊納氏:
数年前に自分のオフィス内で僕とエディターで同じファイルを共有して編集するっていうワークフローを組むためにNASを導入してむちゃくちゃ大変だったんですよ。結局失敗したんですけど。お金もむっちゃかかったし。それがもう一瞬で今できるのがすごすぎて。
山本氏:
NASの素材共有構築がすごい簡単にできますね。
Blackmagic Cloudデモ
伊納氏:
是非ブラックマジック使ってみんなでいろいろ撮っていきましょう。
山本氏:
ここまでいろいろ対談も聞いてきて、実際に自分で会社のデモ機使って撮ってみたりしましたけど、この価格帯だと今一番欲しいカメラなんですよね。私Lマウントユーザーなんで近々買うとは思います。本当に魅力的なカメラになっているので、僕もこのカメラ購入して腕をあげたいと思います。
今までの配信もアーカイブが残っております。
初回はグレーディングとカメラのお話を井上さんとやりました。
2回目はDIN FILMSさんとシネレンズとそれを使ったカラーのお話
3回目はDENDENの清本さんとクラウドの話をしました。
4回目がBMCCで撮影したBRAW使ったグレーディングのお話をIMAGICAの北山さんとしまして。あれは神回なので是非観ていただきたい。
第5回目がUZLAND田中さんと一緒にカラーの話も結構多かったんですけれど、Fusionのお話もちょっと出てきます。田中さんも基本的にはブラックマジックしか使わないという生粋のブラックマジックファンということでそちらも是非見ていただければ。
第6回目はShumaさんとお話ししました。カラーの話やカメラ全般の話が多かったかなと思います。
今回は最終回ということで、前半でがっつりレンズのお話をするという、今回も相当面白い回だったかなと思います。アーカイブはずっと残しますので見逃してる回があれば是非ご覧いただければと思います。