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今回は中国のメーカーLight Lens Labの28mm F2.8を紹介します。このLight Lens Labというメーカーは、オーナーである周さんが過去の銘玉を「完コピ」して現代に甦らせるという開発コンセプトが有名で、このレンズ以外にもライカの初代ノクチルックスを完コピした「NOCTILUCENT 50mm f/1.2 ASPH.」製品化したり、往年のSummicron 35mmF2、通称「8枚玉」を現代に復刻させたLIGHT LENS LAB M 35mm f/2通称「周8枚」などが名を馳せています。

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よく揶揄されるような、安いけどそこそこ、と言った「中華レンズ」というレッテルとは次元が違うのがこのシリーズの大きな特徴。硝材や外装にも徹底的にこだわり抜き、当時のレンズを徹底的に再現する姿勢にはただ敬服するばかりです。その代わり、値段はそれ相応のものになっているわけです(その価値と手間を考えたら十分安い、と言えるのかもしれませんが)。

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今回の28mm F2.8は、かつてライカが1965年頃に登場したライカ製"エルマリート28mm F2.8 1st"を再現したレンズです。オリジナルモデルの6群9枚のレンズ構成とMTFを踏襲しながらも、現代の調達可能な部材を使用して可能な限りオリジナルに忠実な仕上がりとなっています。

…といっても僕はオリジナルを手に取ったことはないわけですが。ライカエルマリート28mm F2.8 1stは生産本数が非常に少ない激レアレンズ。おいそれと手に取ることは叶いません。「ないなら作ればいいじゃない」とばかりに、こういったレンズを完コピして、しかも少し背伸びすれば手の届く価格で用意してくれるLight Lens Labというメーカーの姿勢はオリジナルへのリスペクトも感じられ、僕は結構好きなのです。

LIGHT LENS LAB(ライトレンズラボ)M 28mm f/2.8(愛称:周九枚)

  • マウント:ライカMマウント
  • 焦点距離:28mm
  • フォーカス:MF(マニュアルフォーカス)※距離計連動型
  • レンズ構成:6群9枚
  • 最短撮影距離:0.7m
  • 質量:約304g(レンズ本体)
  • 市場参考価格:税込149,400円(公式サイト)
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オリジナルとなった「エルマリート28mmF2.8 1st」とは?

このレンズのリスペクト元となったレンズ「ライカ エルマリート28mm F2.8 1st」とは1965年に発売されたライカMマウントレンズで、その時代としては卓越したシャープネスと質感描写で人気を博しました。しかし、その後発売されたライカM5の露出計と後玉が干渉するなどカメラ側の世代交代に合わせる形で、第2世代にバージョンアップされたのですが、初代が持つ無二の描写性能は現在でも高い人気を博しており、2025年11月現在で東京の中古カメラサイトでは100万を超える値付けがなされるなど、ちょっとやそっとでは手に入らないものとなっています。

このレンズの特徴の一つは対称形のレンズ構成を採用している点。この形式は非常にシャープで歪曲の少ない描写が期待できる反面、周辺減光がやや大きく、また後玉がせり出すというデメリットも持ち合わせています。今回のLight Lens Lab M 28mm f/2.8もまた対称形の光学系を採用し、同じように後玉が迫り出しているため専用のリアキャップが付属し保護する構造になっているため、カメラによっては後玉が干渉する場合があるかもしれません(M5、ライカCL等はオリジナルと同じく干渉するようです)。

今回テストしたBlackmagic Cinema Camera 6K FFにはL-Mマウントアダプターを経由して取り付けましたが、後玉が干渉する等のトラブルは発生しませんでした。

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専用のリアキャップが付属する。汎用品は干渉するため取り付けることができない

オリジナルを可能な限り再現と言っても、硝材が現代でも入手可能なものにアップデートされるなど幾つかの変更はあり、それに伴いシャープネスが向上、またボケの形状も改善されているとのことです。あくまでもリスペクトはリスペクトとして新しいレンズを作るという姿勢が感じられます。ボディにあえて「中國製」と目立つように刻印されているのも、そういったオリジナリティへのプライドの表れかもしれません。

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ボディの外観はオリジナルを強く意識したシルバーのくびれが印象的。以前レビューしたNokton Classic 35mm同様、Mマウントのレンズはとにかくコンパクトですから持ち運びは簡単ですが動画を撮るとなると小さすぎて困ることになります。ちなみにこちらのレンズは無限遠でロックがかかる仕様となっており、そのまま無限遠までフォーカスノブを回すと近辺で「カチッ」というロックがかかります。

CineMOD改造はなかなかハードルが高いと感じたため、今回はカジュアルに持ち歩く方向に切り替えて特にギアつけたりとかはなし。ただしNDはしっかり用意してシャッタースピードは落とした方がいいでしょう。今回は開放がF2.8かつテスト撮影が曇天の屋内だったのでND16(4段分)を多用しました。

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専用フードも付属。完成度と趣味性の高さに唸らせられる

チャートにて描写をチェック

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F2.8

測定環境が暗いのでわかりづらいが周辺減光もある。中央部は非常にシャープだがやや滲みがあり、それに伴いややコントラストが低く感じる。

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F4

滲みが取れ、黒が締まってスッキリした表現になる。

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F5.6

さらにクリアな画質になる。

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F8

F5.6とほぼ同等だがさらにシャープ。風景などはこのくらいで撮るのがいいかも。

チャートを撮ってみた印象は非常に線の細い、繊細な表現力を持ったレンズだということ。開放の滲みはほんの僅かにあるもののほとんど感じられません。周辺にわずかな糸巻き型の収差が見られます。色調はやや浅く、若干青系に振れる印象があります。そのため肌色はややクールでフラットな印象になると思いました。

また周辺光量落ちも若干ありますが、対称型のレンズと考えると非常に優秀と感じます。広角レンズなのでボケ味は出ずらいですが、ざわつく要素はあまりなく、スムーズなボケ味だと思いました。また、フォーカスの移動に合わせてブリージングはかなり大きく出る印象なので注意が必要です。

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フォーカスを「無限遠」に送った状態。チャートのボケ味は「前ボケ」を示している
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フォーカスを「至近」に送った状態。チャートのボケ味は「後ろボケ」を表している

フレアをチェックしてみましょう。オールドリスペクトの設計もあり、フレアは結構出やすい印象です。この、「現代的な描写の線の細さ」と「フレアに弱い」という掛け合わせってオールドな銘玉ならではって感じがします。ただオールドなだけだとここまで現代的な描写にはならず、現代のレンズはコーティングが発達したおかげでフレアはコントロールされている印象なので。

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光源が画面外でもハレーションが結構大きめに入る印象
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光源が見えている状態なら、画面全体に影響が出る

ロケ撮影にてテスト撮影。28mmでどう撮る?

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28mmならパース感を感じずに近距離でボケを活かした撮り方もできる
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コントラストが強くシャープなレンズなので動画からの切り出しでも「写真」のような見栄えになる気がする
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空間の広さを活かすのは広角レンズの強みだと思う
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手前ボケも暴れず非常に素直に見える
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開放にて。中央はシャープだが、周辺画質のゆるさ、糸巻き歪曲、周辺光量落ちなど理解して使う必要がある
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今回、モデル・俳優の中井さくらさんに協力していただき、テスト映像を撮影しました。ロケーションは東京国際フォーラム。直線が多くシャープな空間が生かされた、非常にクールな映像になりました。

さて、この連載では毎回テスト撮影をしていますが、連載で取り上げた1種類のレンズで撮り切ることを課題としています。写真と違い動画ではある程度の構図のバリエーションが必要になるのですが、ワイドレンズでも寄ったり引いたりと足で稼ぐことで構図のバリエーションは作ることが可能。特に引き構図で空間を大きく入れたパノラマ感を演出するのは効果的。寄りアングルでは広角ならではのパースを活かすのがポイントかな、と思います。28mmという焦点距離は人の目に近い、誇張され過ぎないパース感で絵作りができるので様々な構図を足で稼ぐのが効果的でした。

ただし極端に寄り込むとパース感が出過ぎて顔の歪みなどが出てしまうのでその点はご注意を。

また、このレンズそのままだと動画としてはややシャープすぎる印象なので、NDに加えて適切なディフュージョンフィルターを入れた方がよりシネマチックになると思います。

まとめ:「レンジファインダーらしいレンズの癖」をどう画作りに活かすか?

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本連載では2回目となる、ライカMマウントレンズを使っての動画撮影でした。ライカMマウントのオールド(リスペクト)レンズ、特に対称型を採用した広角レンズは現代的なシャープさとコントラストがあり、歪曲も少ないということで一見使いやすそうですが、周辺光量落ちの出方など、ところどころで対称型のレンジファインダーレンズっぽいクセがあり、なかなか動画で使いこなすのは難しいかもというのが正直なところだったかもしれません。

撮影した動画を見ても、かなりシャープな映像になっているのですが、クリアすぎてややシネマチックではない印象になっているのではないでしょうか。これはこれで面白いんですけどね。

フォーカスも無限遠でロックがかかったりするなど操作性が動画向けに作られていないため、もし本気で使うならいろいろ工夫が必要です。また、そもそもレンズの作り自体が非常に趣味性の高い、コレクター向けのアイテムとして作られており、バリバリ酷使するというより「愛でる」タイプのレンズというオーラをひしひしと感じます。しかし、こういった個性と優秀さを兼ね備えたレンズをもっと動画に活用できたら、表現の幅が広がるんじゃないかな、と思うのでした。

WRITER PROFILE

湯越慶太

湯越慶太

東北新社OND°所属のシネマトグラファー。福岡出身。新しいカメラ、レンズはとりあえず試さずにはいられない性格です。