260216_Review_M5iPadPro_topEOdxbWPP

2025年10月、M5 iPad Proが発表/販売開始された。謳われている高性能であることは予想できるが、実際、映像制作においてどのように活用できるか見ていこう。

  • 11インチiPad Proは、Wi-Fiモデル:税込168,800円より
  • 11インチWi-Fi + Cellularモデル:税込204,800円より
  • 13インチiPad Proは、Wi-Fiモデル:税込218,800円より
  • 13インチWi-Fi + Cellularモデル:税込254,800円より

今回はDaVinci Resolve for iPad(以後、iDR)の使用を通してM5 iPad Pro & iPadOS 26での動作を見てみる。

なお、iDRは基本の状態で使用する。他のページを使用する方法も知ってはいるが、基本はそうはなっていない。メーカーがそうするのには理由があるはず。それを尊重したい。

それぞれの仕様

今回のレビューで使用するM5 iPad ProとiDRの仕様を見てみよう。

M5 iPad Pro

260216_Review_M5iPadPro_01PUcnoK1H
M5 iPad Pro
  • M5(256GB/512GB 9コアCPU 1TB/2TB 10コアCPU)/10コアのGPU/16コアのNeural Engine
  • ストレージは256GB/512GB/1TB/2TB ※レビューでは1TBモデル使用
  • ハードウェアアクセラレーテッド8K H.264、HEVC、ProRes、ProRes RAW
  • Ultra Retina XDR Display
  • 広色域(P3)
  • ピーク輝度1,600nits、持続輝度1,000nitsのディスプレイ

すでに多くの方がその特徴をご存知かと思うが、そのポイントだけを抑えると、

  • 筐体のデザインはM4 iPad Proと同じ
  • 256GB/512GBモデルはCPU 9コア、1TB/2TBモデルはCPU10コア
  • 256GB/512GBモデルは12GB RAM、1TB/2TBモデルは16GBRAM
  • ストレージの読み書き速度が以前のM4モデルより30%向上
  • モバイル通信チップC1Xを装備し、以前のM4モデルより50%高速化と消費電力30%の削減
  • ワイヤレスネットワークチップN1によりWi-Fi 7、Bluetooth6、Threadに対応

DaVinci Resolve for iPad

260216_Review_M5iPadPro_02PUcnoK1H
DaVinci Resolve for iPad

〈レビューで使用するDaVinci Resolve for iPad〉

  • Version 20.3.1 Studio
  • 発表時から極端な変化はないが、
    • Deliverページの追加
    • ProRes RAW対応
    • バックグラウンドタスク対応(M4以降)

機能に合わせた検証

M5 iPad Proを説明する際にiDRの機能での具合を確認するとわかりやすい。そこで機能ごとにその具合をみてみよう。

※比較に利用するM1 iPad Proの仕様はCPU8/GPU8/NPU16コア 8GBRAM 128GB

強力なCPUとGPU

公式で謳われている性能は、M4に比べて1.2倍高速。とはいってもあまり実感が湧きにくいが、Cutページでの4K60Pの映像上でほとんどのFusionタイトルがコマ落ちなく再生できる。他にはノイズリダクションにおいても、M1と比べての話だが、約2倍近い速度である。

    260216_Review_M5iPadPro_03
図 ノイズリダクション処理時間
※画像をクリックして拡大

AI処理

DaVinci Resolveの「DaVinci AI Neural Engine」はこれまで見た傾向においては、処理はGPU寄りの傾向が感じられる。M5はGPUにおいてのAIアクセラレーションが強化されている。その性能をCutページでAI Super Scale(超解像)を使って計測した。

M1に比べ約3.5倍という速度も計測した。ただこれは負荷の高さによって効果が変わり、負荷が低いほど度合いは下がる。実用性の観点から評価する必要がある。

    260216_Review_M5iPadPro_04po4pGOgP
図 AI Super Scale(超解像)処理時間
※画像をクリックして拡大

ProRes RAW

iDRはV20.3からProRes RAWに対応した。そしてM5にはMediaEngineが搭載されProRes RAWアクセレーションが得られる。そのためその再生はスムーズだ。

260216_Review_M5iPadPro_05fyBKU1Io
図 ProRes RAWでのマルチトラック再生

しかし、iDRのProRes RAWのサポートはPC版に比べて限定的だ。PC版のそれとは異なる。さらにディベイヤーの処理は基本的にはRec.2020 ST2084の状態でのディベイヤー処理のみのようだ。解像度以外の調整パラメーターもない。

    260216_Review_M5iPadPro_06jc4AfG1q
図 RAWを調整するパラメータの違い
※画像をクリックして拡大

バックグラウンドタスク

これまでのiPadの映像編集作業においてのネガティブポイントは、作成した映像の書き出し時などに常にタスクを前面にしておかなくてはいかず、他の作業ができなくなることだ。

最新のiDRはiPadOS 26のバックグラウンドタスクに対応しているのだが、iDRが動作するiPadが全て対応してるわけではないようで、M1 iPad Proではバックグラウンドタスクは動作しない。M5 iPad Proはもちろんバックグラウンドタスクは動作する。これで、例えばレンダーするジョブをリストに多数溜め込んでから処理を開始したり、別のアプリで作業するなどできる。

    テキスト
>図 ジョブを溜めてからバックグラウンドタスク/バックグラウンドタスク中に別のアプリを使用
※画像をクリックして拡大

※ブラックマジックデザイン社に問い合わせしたところ、iDRでのバックグラウンドタスクでのレンダリングはM4以降と教えていただきました。

リファレンスモード

iPad Proのディスプレイは優れている。そして、これは静止画や動画を扱うクリエイタには必要な機能だ。「きれい」だからではない「確認する必要がある」からだ。

M4 iPad Proから引き続き、M5 iPad ProはタンデムOLEDテクノロジーを使った高性能なUltra Retina XDR Display。P3の色域、HDRにおいてピーク輝度1,600nitsの性能を持つ。その上で、M5 iPad Proは「リファレンスモード」を装備している。これによりP3の色域でガンマ2.2のDisplay P3に整って表示される。

260216_Review_M5iPadPro_08mTNPnb5f
図 リファレンスモード時のM5 iPad Proの状態

これを基準にDaVinci Resolveは、表示する出力カラースペースに合わせてビューアの表示カラースペースを変化させる。これによって正確な色を確認しながら作業ができる。

260216_Review_M5iPadPro_09LQLeo52l
図 DaVinci Resolveの出力カラースペースによってのビューアに表示される色域

よくiPadを購入する際の話で「ProとAirの機能性能を比較するとAirの機能で十分だ。Proは高い。」というものを見る。そしてそれを残念に思う。

確かにiPad Airは良い製品だ。ただProはさらに素晴らしい。AirとProとの同じような構成の金額差は大体9万円ほどだ。もちろんSoCの世代違いや細かいところも違うが、その中でもディスプレイの違いが大きい。

その違いを理解すれば、その価格差も理解できるだろう。事務作業やゲーム(とはいえ近年のゲームもディスプレイの性能を求めるが)ならいいが、クリエイターは色にこだわりたい。

再度書くがProのディスプレイを選ぶ理由は「きれい」だからではない「確認する必要がある」からだ。

データ転送

Thunderbolt/USB4での40Gbpsにより、高速にM5 iPad Proとのデータ入出力が可能。DaVinci Resolveでは素材はリンク形式で行われるためiPad内部に取り込まなくても、外付けされたSSDなどの素材を使った編集が可能だ。無線LANの規格もWi-Fi 7にも対応し高速である。

260216_Review_M5iPadPro_10NI8WUOkM
図 Thunderbolt/USB4で接続された高速ドライブのメディアを使用可能

PCとのコラボレーション(協調)作業

Blackmagic Cloudを使うことによって、PCとの協調作業ができる。プロジェクトそのものを協調して編集したり、Presentations時に遠方でのリモートビューイングもできる。その際はリファレンスモードでのHDRでの表示も可能だ。Blackmagic Cloudを使ってプロジェクトを共有することで、これまでのM5 iPad Proの強みを活かすことができる。

260216_Review_M5iPadPro_11UuWfqGN4
図 Blackmagic Cloudを使ったPCとの連携作業

注意点としては、iDRでは多くのRAWデータは使えない。この場合は作成されているProxyで「仮」データとして扱う(RAWパラメータ使えないが、その他の調整は生かされる。 ※注意 ProxyはRAWを読めるPC側で作成)。

260216_Review_M5iPadPro_12Eut4jdtB
図 作成されているProxyでのR3D(RED RAW)データ内容映像の表示

またDCTLの処理はGPUを使うものなどは対応していないので「問題を含む可能性がある」と考えた方がいい。

まとめ

このようにiDRとM5 iPad Proとの組み合わせは、お互いの魅力を引き出すとても良い組み合わせだ。そして、これらのことからM5 iPad Proの性能の良さが理解できたはずだ。

もちろん懸念点がないわけではない。例えば現状はREDなどのRAW素材を扱うことはできない(BRAW/ProRes RAWは可能)。

そして、これは以前の回にも書いたが、ハードウェアトラブル時にデータを救い出すことが難しい。PCなどであれば部品を抜き出してでも可能だが、iPadではそれは難しい。

また、ここで書いた機能や性能は実はM5 MacBook Proでも実現可能だ。「ProRes RAW」「リファレンスモード」「データ転送」「バックグラウンドタスク」いずれもだ。かといってM5 iPad Proに魅力がないわけではない。iPadの気軽さと取り回しの良さは格別だ。

ただ、イメージ的にMacBook Proより価格は低くあって欲しいのも事実だ。今はどちらかといえば、MacBook Proの方が同じくらいか安いイメージだ。もう少し安くあってほしい。

話を戻そう。M5 iPad Proの安定したクオリティのディスプレイを使えるメリットは大きい。特に色を扱うことに得意なDaVinci Resolveにはその意味は大きい。さらにM5の強力なパワーは今後増加するであろうAI処理に有益なものだ。

M5 iPad Pro & iPadOS 26を見るに今後はさらにiPadのような手軽なデバイスが表舞台に出て、Windows/macOSなどのPCは裏方になっていくだろう。(故人を引き合いに出すのは嫌いだが)これはスティーブ・ジョブズの予言通りだ。M5 iPad Pro & iPadOS 26はそのシンギュラリティポイントなのかもしれない。

WRITER PROFILE

高信行秀

高信行秀

ターミガンデザインズ代表。トレーニングや技術解説、マニュアルなどのドキュメント作成など、テクニカルに関しての裏方を務める。