Deityから、コンパクトながら高機能・高音質の32bitフロートレコーダー「PR-4」が登場した。映画の録音にも応えられる高音質回路と様々な音響機能を搭載した本格的なレコーダーだ。国内では7月より店頭に並ぶ予定である。

4ch入力で、超低ノイズなプリアンプ(マイクアンプ)とノイズリダクション、音質を整えるイコライザー、タイムコードの入出力、Bluetoothタイムコード同期などを搭載し、交換可能な汎用リチウムバッテリー(NP-F550)で8時間ほど稼働する。映画録音で必要な機能はほぼ全て搭載されており、環境音を録音するフィールドレコーダーとしても高いポテンシャルを持ったレコーダーだ。

プロ用4chレコーダーとしては最小最軽量だ

開発・発売はDeity Microphone社。同社は中国・深圳(シンセン)にある音響メーカーで、ワールドワイドで使えるプロ用デジタル無線マイクシステム「THEOS」で有名な企業だ。親会社は映画照明で世界的なスタンダード機材ともいえるAputure社である。

世界中に拠点があり、プロが求めるサービス体制などが整ったメーカーだと言える。

そのDeity社から、待望の4chフィールドレコーダーが登場した。実勢価格で8万円程度で、ZOOM社の「F6」がライバル機であろう。もしくはZOOM社の「H5 Studio」と同等の入力数となる。余談だが、H5 Studioはヘッドホンアンプのパワーが足りず、映画録音では音が聞き取れないこともあった。

さて、PR-4は前述のように32bitフロート録音(デュアルADC)が可能で、新開発の超低ノイズなマイクプリアンプを搭載し、映画録音のような超高音質が求められる現場向けに作られている。入力4チャンネル(XLR2つ、3.5mmステレオ2ch入力が1つ)と、最小規模の映画、ドキュメンタリー、インタビュー、番組などの制作において、もっとも小さなシステム構成で挑める。

スペックをZOOM F6と比較した表を掲載する。

項目 ZOOM F6 Deity PR-4(2026年発売) ポイント
アナログ入力数 6入力(すべてXLRバランス入力) 4入力(XLR/TRSコンボ×2、3.5mmステレオ×1) XLR入力数はF6が上
最大録音トラック 8トラック(6インプット独立 + ステレオミックス) 6トラック(4インプット独立 + ステレオミックス + 内部SSD収録&SDカードへの同時書き出し) F6は多彩なファイル形式を選べる。PR-4は内部SSDとSDへの同時書き出しや、別の形式に振り分けることが可能
マイクプリアンプ ZOOMオリジナル(最大ゲイン +75dB) ReGain PreAmp(最大ゲイン +60dB) 数十万円の超高音質マイクを使わなければ、差異はない
EIN(入力換算雑音) -127dBu以下 -127dBV(A-weighted) 同等
ADコンバーター デュアルADコンバーター(32-bit Float対応) デュアルADC(32-bit Float対応) 同等
ストレージ(記録媒体) SDカード(最大512GB) ×1スロット SDカード(最大1TB) + 内蔵64GB SSD(デュアル同時バックアップ対応) PR-4は2つのストレージに同時書き込み可能なことと、電源喪失時にもファイル書き込みを確実に行う緊急書き込み機能を搭載
タイムコード同期 有線のみ(専用3.5mm端子、高精度ジェネレーター内蔵) 有線(3.5mm) + ワイヤレスTC内蔵(Deityエコシステムと直接同期) PR-4は同社のTC機器「TC-1」とケーブルレスで同期可能。既存の撮影機材との連携が簡単
ミキシング機能 ZOOM AutoMix機能 VoiceAware Automix機能 PR-4が優れている
操作・UI 側面の物理ノブ + 液晶画面 物理フェーダー + カラータッチパネル + スマホアプリ(Sidus Audio) 後発だけあってPR-4が使いやすい。フェーダーとゲインの調整が一つのノブで可能
ノイズリダクション なし AIによる人の声を背景よりもはっきりさせる機能 PR-4が優れている
イコライザー なし 3バンド・パラメトリックイコライザー PR-4が優れている
電源仕様 単3電池×4、Lバッテリー(背面に直接装着)、USB-C NP-F550バッテリー(ボディ内に収納)、ヒロセ4ピン(TA4)、USB-C F6は大容量バッテリーで長時間駆動が可能。PR-4はヒロセ4ピンでエコシステムと連携し他機器へ電源供給も可能
サイズ(W×H×D) 100×119.8×62.9mm 80×98×41mm PR-4はより薄型・軽量
重量 520g(本体のみ) 218g(本体のみ) PR-4の軽さは現場で圧倒的に有利
実売価格(目安) 約7万〜8万円前後 約6万〜7万円台(400ドル前後)
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サイズは約9.5×7.5×4.5cm(約3.7×3.0×1.8インチ)(突起物を含まず)で、バッテリーはボディ内に収納される
入力端子はファンタム対応のXLRが2つと、3.5mm 2chステレオ入力を持つ。ヒロセ4ピン(TA4)はDC電源入力で、同社のスマートバッテリーシステム(S-95やSPD-1 / SPD-Mini)と連携することができる
反対側は充電・電源供給用USB-C端子(給電・ストレージ読み書き・オーディオインターフェース)。3.5mm 2chステレオ出力端子が2つ(任意にルーティング可能)、タイムコード入出力端子(3.5mmステレオ端子:標準LTCと音声TCの切り替え可能)、高出力ヘッドホン端子を搭載
ボディの上面と下面にはARRIスタイルの1/4インチネジ穴となっており、不用意に回ってしまったり緩むことが避けられる

プロ仕様の機能が満載

搭載されている機能を確認しておく。搭載されているマイクプリアンプは映画で使うに十分な低ノイズで、音割れの危険性を排除できる32bitフロートによる広いダイナミックレンジを持っている。ヘッドホンアンプも手を抜かず、うるさい現場でも録音状態を確実に聞き分けられる。

XLR入力端子はマイク/ラインの切り替えの他、ファンタム電源の利用もできる。つまり、プロが必要とする機能がきちんと搭載されている。

音響の機能としては、2つのXLR端子は、MSマイク入力(ヘッドホンで90度、120度のバイノーラル視聴が可能)と、通常のステレオリンクも可能だ。入力調整用のノブはフェーダーに割り当てられており、マイクゲインはメニューで調整するのだが、ボリュームノブをクリックすることで簡単にアクセス可能だ。これは映画業界で標準となっているSoundDevices社のMix-Preシリーズなどと同じやり方である。

メニュー操作は「メニュー選択ダイヤル&メニューボタン(モニターの右側)」と、ダイヤル式の「ノブ(モニター左の2つ)」と、「モニター(タッチパネル)」で行う。非常によくできていて、直感的に操作可能だ。一般的なレコーダーの使い方がわかっている人であればマニュアルなしで使えるだろう。

各チャンネルの詳細設定はボリュームノブを押すとメニューが現れる。一方、ノブを回せばフェーダー(ミックスファイルや音声出力のボリューム)、ノブを押しながら回すとゲイン(入力ボリューム)の調整ができ、メニュー操作なしに音量調整ができるのが非常に便利だ。XLR 2ch(1chと2ch)と3.5mmステレオ入力(3chと4ch)は、それぞれがセットになっていて、表示パネルをタップするとノブ調整がXLRと3.5mmステレオに交互に切り替わる。つまり、パネルタップで、XLRと3.5mmの入力調整を切り替えるわけだ。

メニュー選択ダイヤルを押すとクイックメニューが現れ、画面タップでよく使う項目にダイレクトアクセスすることが可能で、現在の設定状態も一目瞭然だ。

ユーザーが頻繁に使う項目には少ない操作で到達でき、ボタンの同時押しでファンタム電源のオンオフ、Arm録音(チャンネルごとの録音)のオンオフもショートカットキーでできる。ショートカットの組み合わせはボディ背面に印刷されているので、忘れた時でもすぐに使うことができる。

また、面白いのはバッテリー部の蓋にあるロゴがタリーランプになることだ(常時オフにすることも可能)。演者や他のスタッフに録音状態を知らせることができるため、事故の回避にもなる。

高性能なAIノイズリダクションとパラメトリックイコライザーを搭載

実際に使ってみると、プロが使っている他の映画用の高音質レコーダーとなんら遜色がない。また、ノイズリダクションが2系統あり、ステレオMIXの左右それぞれに使ったり、特定のチャンネルに割り当てられるなど、非常に柔軟性が高い。実際の使い方としては、マイクの生の音はノイズリダクションを行わずにそのまま録音し(ISO録音)、ミックスされたLRチャンネルにノイズリダクションをかけるというようなこともできるし、XLR1番にだけノイズリダクションをかけるというようにも設定可能だ。

実際のノイズリダクションの性能だが、非常に抑えめになっていて声が加工されることも最小限だ。効き具合の幅はdBで細かく設定できるが、MixPre用のノイズリダクションに比べると効きが弱い。人が喋っていない場合には環境音をそのまま通して、人の声が入ってくると背景音と分離して音量を調整する仕様のようだ。ただ、非常に静かな場所で使うとAIが迷うようで、ノイズが上がったり下がったりする。このあたりはメーカーに調整を打診している。

実際には、薄くノイズリダクションを入れっぱなしでも良いかもしれない。このあたりは現場をこなすことで最適解を見出したい。

イコライザーは個別のチャンネルにかけることもできれば、ステレオミックスにだけかけることも可能だ。もちろん、それぞれ別の調整をすることができる。

イコライザーはパラメトリックで、3バンドで設定可能だ。パラメトリックイコライザーはターゲットにする周波数に対して、それを下げたり上げたりということができる。また、Qと言って上げ下げする周波数の幅も調整することが可能だ。例えば男性の声の低音を増強するとか、マイクが遠くてモゴモゴした感じを高音成分を調整することで聴きやすくするようなことができる。ノイズリダクションと併用することで最適なサウンドが作れるわけだ。

また、最近のレコーダーにはほとんどEQが搭載されておらず映画では後処理で非常に苦労していたのだが、このPR-4があれば現場で音質調整を追い込んでおくことができるし、異なるマイクを使っている場合に音質を揃えることもできる。かなり高性能なイコライザーなので、例えばゼンハイザー416をノイマン47の特性に近づけるプリセットなども作れるだろう。このあたりはメーカーにもプリセットを用意するよう要望している。

業界標準のタイムコードシステムを搭載 有線・無線の両方に対応可能

DeityのTC-1と言えば、映画やテレビのタイムコード同期の標準機器になりつつある。PR-4はこのTC-1とファームウェアレベルで同期できる。また、他のTC機器と無線でも有線でも同期可能であり、マスター(親機)にもスレーブ(子機)にもなれる。タイムコードは最大60fpsにも対応している(国際標準の規格外)。PR-4はTC機器を外付けすることなく使えるのが大きなメリットだ。F6などにも無線TC(UltraSyncシリーズ)は搭載されているが業界標準にはなっておらず、特にUltraSync Blueを使用する場合にはBluetooth接続の不安定さで同期がズレる危険性がある。

その点ではTC-1やPR-4は非常に安定していて、映画録音のようにファイル数が極端に多い場合でも編集時に最小限の手間でTC同期編集が可能だ。もちろん、PR-4やTC-1はTentacle Syncシリーズとも簡単に同期可能なので、既存のTCシステムとの相性も抜群だ。

当然のことながら、PR-4は内部クロックによるTCの自走が可能で、ケーブル入力からのJAMシンクも問題ないし、外部機器がJAMシンクする場合のマスター(親機=TC出力機器)にもなれる。ファイル記録のフレームレートと外部TCのフレームレートが異なる場合にも、当然のことながら警告が出るなど、TC機器としてのPR-4は、必要十分以上だと言える。

専用ケージと専用オーディオバッグ 最小システムを構築するのに最適

PR-4には専用ケージ(金属フレーム)と専用バッグが用意されている(別売り)。

ケージは非常に強固で、複数の三脚ネジ穴(大小)が上下それぞれのプレートに開けられている。上下のプレート同士は2本の支柱で固定されコの字になる。PR-4本体をしっかりガードしてくれるので、映画などの激しい使い方でも安心だ。また、上下プレートはPR-4本体とArri式のネジ固定となり、ズレることがない。さらに、上下プレートはそれぞれ単体でPR-4本体に固定できるので、必要に応じた組み合わせが可能だ。

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PR-4専用ケージ。強固な金属プレートで構成され、上部下部とも三脚ネジでガッチリホールドされる
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ケージの上部も下部も多数の三脚ネジ穴(大小)があり、拡張性が高い

専用オーディオバッグはかなり頑丈に作られており、PR-4本体を軽量かつ硬いプレートで保護する仕組みになっている。左右および背面は全開することができ、各種端子やバッテリーホルダーへアクセスも簡単だ。

コンパクトなバッグだが収納性もよい。バッグは2層になっており受信機やその他を収納できるスペースがあるだけでなく、バッグ内部に受信機のクリップを挿すゴムベルトが2箇所用意されている。さらに、バッグの外側の前面に同じベルトが2箇所、両サイドに1つずつ、合計4つ用意されている。

4chレコーダーということでチャンネル数が少ないことを懸念する声もよく聞くが、このPR-4は必要最小限の機材で最高のプロサウンドを録音するための『最小システム』を構築するためにあると言っていいだろう。ネイチャー録音、テレビロケ、報道、ワンマンオペレーションなど、とにかく小さく軽いシステムが要求される現場では、それぞれの必要に応じた柔軟な組み合わせを作ることができるだろう。

事実、筆者はこの週末から始まる映画録音に、このサウンドバッグにPR-4、Theos(無線マイク)、デジタル無線マイク(Insta360 Mic Pro)で参加する予定だ。4chで足りるのかという不安はあると思うが、軽いシステムとそこから得られる柔軟なブーム操作で映画サウンドは作れる。むしろ、体力を使わずに柔軟なオペレーションができる方がいい結果になる。

Deityのエコシステムとの連携 パワーディストリビューションの活用

Deity製品を使うメリットとして、多様なオプション機器、つまりエコシステムの活用がある。その代表がパワーディストリビューターとインテリジェントバッテリーだ。大容量のスマートバッテリー「S-95」は9500mWhの大容量で、高度な電力監視システムを搭載している。これを同社のパワーディストリビューター「SPD-1/mini」と使うことによって、複数の機器へ電力を供給することができる。ヒロセ4ピンケーブルを使うと、SoundDevices社のプロ用レコーダーからバッテリーの状態が見えるというように、電源の一元管理が行える。

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手に載る映画録音システム。PR-4専用サウンドバッグに様々なオーディオ機器へ電源を供給するスマートバッテリーS-95とパワーディストリビューター(SPD-1 mini)、さらに無線マイクTheosを搭載。全ての電力を一元管理し、24時間以上の連続録音も可能

PR-4はヒロセ4ピンを備えている(レコーダーからバッテリーの状態は見えない)。小型軽量なSPD-1 miniを間に挟むことで、適切な電圧(もっとも省電力になる電圧)を供給することができるし、USB-Cケーブルで複数の受信機などへ電力を供給することが可能だ。出力電圧は自動的に調整され、最も省電力で運用される。つまり、バッテリーが長持ちする。

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USB-Cの電源出力ケーブルで無線マイクやアンテナディストリビューターなどへも電源を供給可能。PR-4はヒロセ4ピンで接続され、最も省電力な状態で稼働している

さて、録音作業で最も煩雑かつ事故が起きやすいのがバッテリー周りだ。常にバッテリー残量を気にしながら作業をするのは大変なだけでなく、事故につながる。また、撮影を止めてのバッテリー交換は現場に悪影響になるため、適切なバッテリー交換タイミングを図るのも現場作業で大きな負担になる。

この問題に対応するために、プロの多くがパワーディストリビューターを導入している。同社のSPD-1は隠れたヒット商品で、スマートバッテリーだけでなく一般的なモバイルバッテリー(PD対応がベター)でも運用可能だ。バッテリー1つでレコーダーと受信機などに電力を供給できる。それだけでも現場のストレスがかなり軽減される。

スマートバッテリーは2万円以上する高価なものだが、バッテリー残量が残り時間や%で表示されるので交換タイミングが適切に判断できる。ただ、容量がかなり大きいので、PR-4と受信機2つ(4ch分)や、アクティブアンテナシステム(指向性アンテナとアンプ入りアンテナ)へ電力を供給したとしても40時間以上も動くので、1日の撮影で交換することはないし、休憩時に送信機のバッテリーを充電することも可能(USB-C給電)だ。丸一日、AC電源に頼ることなく撮影に臨めるのは非常に助かる。

収納はどうか? S-95は大きなスマートバッテリーだが、これとSPD-1 miniやアンテナディストリビューター(アクティブアンテナシステム)をPR-4のオーディオバッグに全て収納した上で、受信機2台も収納できる。それでもなお、ピンマイクやマイク用品を収納する余裕がある。これまで大きなオーディオバッグを首から下げて疲労困憊していたものが、驚くほど小さなサイズになるのは、ある意味で革命的だ。

このようにPR-4とDeityエコシステムは、最小最軽量なプロ仕様の録音システムを構築できるのだ。

実際に使ってみて PR-4のレビュー

さて、最後に実際にテスト運用してみた感想を書いておく。実際には今週末から始まる映画の現場でいろいろなことに気づくと思うが、一般的な使い勝手についてレポートしよう。

まず、音質だがZOOM社のFシリーズと同等だと言っていい。ただ、ヘッドホンアンプの性能が非常に良いので、撮影時の観測が非常に楽だ。セリフの裏で流れる微細な振動音なども的確に聞き取れる。マイクの自己ノイズも明確に聞き取れるので、レベル調整においても判断しやすい。編集時に「こんなノイズが入ってた」などという失敗は避けられるだろう。

音色もとてもいい。イコライザーも搭載されているので、マイクごとの癖を調整して心地よいサウンドを作ることができるのがありがたい。

最高峰のレコーダーであるSoundDevices社のMix-Pre3/6IIと比較した場合、やはりMix-Preの方がノイズ性能(ダイナミックレンジ)や音質は上だ。プラグインのノイズリダクションは600ドル(約9.4万円)もするので、MixPre-3II(XLR 3ch+2chレコーダー)+ノイズリダクションの価格は25万円くらいになってしまう。価格の差を考えれば、ノイズリダクション入りのPR-4がいかにリーズナブルかわかる。

MixPreやその上のレコーダーの音質は本当に素晴らしいのだが、その音質を使い切るには、それに見合うマイクが必要だ。マイクだけで1本50万円というところなので、実はMixPreクラスを使うというのは、ちょっと次元が違うことがお分かりだろう。そういう意味でPR-4は実用レベルのレコーダーとしては最高峰だと思う。

使い勝手をレポートしよう。ノブによる音量調整も非常にやりやすい。ゲイン調整にメニューを使わなくてもいいのもありがたい。メニュー全般がよく作られていて、少ない操作で設定を変えられた。スマホアプリもよくできていて、使いやすい。

さらに、映画録音に必要なファイル名にも対応している。シーン番号・カット番号・トラック番号(テイク番号)の自動加算が行われるので、編集時に何千個にもなるファイルから必要な音源を見つけるのが簡単になる。ただ、最近はTC同期で処理することの方がメインだが。

前述したように、映画ではスマートバッテリーのシステムを使うのだが、普通のロケであればPR-4単体で十分だ。8時間は動くので、バッテリー交換の必要はないだろう。また、USB-CのPD給電/充電に対応しているので、充電器を持ち歩かなくてもいいのが助かる。

ちなみに、専用バッグにPR-4(含む内部バッテリー)、スマートバッテリーS-95、SPD-1 mini、Theos受信機(含む乾電池)、接続ケーブル類、デジタル無線マイクの受信機、小物で1.3kgに収まった。これで劇場映画のクオリティーのサウンドが作れるのだから、驚異的だ。

さて、ここからは邪推だが、PR-4のサウンドバッグは本体の左右に余裕がある。おそらく年末に出てくることがアナウンスされているPR-8(6ch+2ch)がそのまま入るのではないかと思う。PR-6を本命と考えているプロも多いようだが、併用もありだと思う。

結論としては、予算1億円未満の映画であれば、PR-4のクオリティーで必要十分かつ、劇場でこんな安いレコーダーで録音したなんて、誰にも分からないと言える。高価で大きな機材でマイクワークを制限されて音質が落ちる、表現ができないというようなことに対して、自由に動き回れて体力も奪われないPR-4は、レコーダー界のアクションカムだと言っていいだろう。

WRITER PROFILE

桜風涼(渡辺健一)

桜風涼(渡辺健一)

録音技師・テクニカルライター。元週刊誌記者から、現在は映画の録音やMAを生業。撮影や録音技術をわかりやすく解説。近著は「録音ハンドブック(玄光社)」。ペンネームに桜風涼も。