14mmから12mmへ。この2mmの差が大きく変える映像表現

2026年8月27日に発売されるタムロンの新型超広角ズーム「12-20mm F2.8(Model A084)」を、実際の撮影現場で試用する機会を得た。希望小売価格はソニーEマウント用が379,500円、ニコンZマウント用が399,960円(いずれも税込)である。本稿では、実際の撮影を通して感じた本レンズの魅力を紹介したい。

タムロンの新型超広角ズーム「12-20mm F2.8(Model A084)」

これまで風景や星景、花火、タイムラプスなど、さまざまな被写体を超広角レンズで撮影してきた。その中で、私にとって超広角の基準は長らく14mmだった。ところが今回、12mmという画角を体験して、その印象は大きく変わった。

数字だけを見ると14mmとの差はわずか2mmしかない。しかし実際に撮影してみると、その2mmが映像表現に与える影響は想像以上に大きい。

東京駅や渋谷の街並みでは、周囲の建築や空間まで自然に取り込むことができる。単に広く写るだけではなく、人物を配置しながら周囲の景観も構図の一部として生かせるため、映像全体の見せ方に新しい選択肢が生まれる。

特にジンバルを使った動画撮影では、その違いを強く感じた。人物の存在感を残しながら背景の広がりも表現できるため、歩きながら撮影するシーンでも、その場の空気感まで映像に取り込める。

超広角レンズは風景や建築だけのものと思われがちだが、都市風景や花火、星景、人物を組み合わせた映像制作など、活躍の場は想像以上に広い。その可能性を改めて感じさせてくれた一本だった。

画面全体を安心して使える描写性能

今回の試写で最も確認したかったのは、画面全体の描写だった。撮影には約5,000万画素クラスのカメラを使用し、Lightroomで画像を拡大しながら大型モニターで細部まで確認した。

超広角レンズは、望遠レンズとは画面の捉え方が少し異なる。望遠レンズでは主題を画面中央に置くことが多いが、超広角レンズでは風景や建築物を画面いっぱいに取り込み、周囲の空間まで含めて一つの映像を構成することになる。

私が重視しているのは、レンズ単体の性能を評価することよりも、撮影した映像が作品として自然に成立しているかどうかだ。大型モニターで映像を見返した際、画面の端に描写の乱れや違和感があると、作品そのものへの没入感が損なわれてしまう。

その点、本レンズは画面全体の描写が非常に安定していた。中央だけではなく周辺部まで自然につながり、画面全体を使った構図でも安心して撮影に臨める。

超広角レンズでは、広い画角を生かして大胆な構図を組み立てることが多い。だからこそ、画面全体を安心して使えることは、スペック表からは伝わりにくい重要な要素だと考えている。

今回試用したEマウント用、Zマウント用ともに高い完成度を感じた。風景や建築、夜景など、細部まで見せたいシーンでも安定した描写が得られた。

12-20mm F2.8(Model A084)を用いた東京駅・丸の内駅舎周辺の夜景撮影
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12-20mm F2.8(Model A084)を用いた夜景の左側を拡大したところ
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12-20mm F2.8(Model A084)を用いた夜景の右側を拡大したところ
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12-20mm F2.8(Model A084)を用いた夜景の中央を拡大したところ
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夜景から感じた星景への期待

今回の試写期間中は天候に恵まれず、実際に天の川を撮影することはできなかった。それでも東京駅や都心の夜景を撮影し、画像を確認していると、このレンズが星景撮影でも高いポテンシャルを発揮することを予感させた。

夜景では点光源が画面全体に広がるため、超広角レンズの描写を確認するには適した被写体でもある。今回撮影したデータを見る限り、画面全体の描写は非常に安定しており、星景撮影でも期待できるという印象を受けた。

もちろん、星景撮影では天候や空のコンディション、撮影場所など、多くの条件が作品を左右する。だからこそ、実際の星空でこのレンズを試してみたいという気持ちは、試写を終えた今、さらに強くなっている。

タイムラプス撮影で生きるカスタマイズ機能

操作面で注目したいのが、スマートフォンと接続してレンズの設定を変更できるTAMRON Lens Utility Mobileの存在である。

タムロンレンズとスマートフォンをワイヤレスで接続可能にするBluetoothアダプター「Model TL-01」を装着したところ
CUSTOMスイッチ(1・2・3)のそれぞれに機能を割り当てることができる

レンズ側には複数のCUSTOMスイッチが用意されており、それぞれに機能を割り当てることができる。フォーカストランジションなどの映像向け機能に加えて、私が特に有用だと感じたのが、設定した無限遠のフォーカス位置を呼び出せる機能だった。

星景撮影では、暗闇の中で正確な無限遠を探す必要がある。フォーカスリングは、無限遠の適正位置を通り過ぎると再びピントが外れてしまう。そのため、通常はライブビューを拡大し、星や遠くの光源を確認しながら何度も微調整を行う。

周囲にほかのカメラマンがいる場所では、ライトを頻繁に点灯することも難しい。真っ暗な中でフォーカスを探り、試し撮りをして拡大し、ずれていれば再調整する。この作業は想像以上に時間がかかる。

TAMRON Lens Utility Mobileを利用して、設定した無限遠のフォーカス位置を呼び出せるようにしておけば、現場でフォーカスリングを何度も回す必要がなくなる。設定を呼び出した後、念のため拡大表示で確認すれば、すぐにタイムラプスや静止画の撮影へ移行できる。

花火撮影でも同様だ。遠距離の被写体を狙う場合、基準となる無限遠のフォーカス位置を素早く呼び出せるだけで、撮影開始までの負担は大きく軽減される。

TAMRON Lens Utility Mobileの「Focus Timelapse(フォーカスタイムラプス)」設定画面
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TAMRON Lens Utility Mobileの「カスタムスイッチ設定」。レンズ側にあるCUSTOMスイッチ(1・2・3)に割り当てる機能を設定する画面
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こうした機能は、スペック表だけでは目立ちにくい。しかし、暗闇の中で長時間撮影する人にとっては、画質と同じくらい重要な実用機能である。

現在、TAMRON Lens Utility Mobileモニターキャンペーンを開催中だ。気になる方は以下をチェックしてほしい。

実用性の高い外装と操作性

外観は、メカニカルな印象を受ける。

レンズ側には複数のスイッチ類が配置されており、CUSTOMスイッチ(1・2・3)を含め、撮影者が設定を作り込める構成になっている。スマートフォンとの接続によってレンズの役割を変更できる設計は、今後の交換レンズの方向性を示すものでもある。

外装そのものは主張を抑えた黒基調であり、文字や数字も比較的小さい。クラシカルな操作系と、デジタルによるカスタマイズ機能が同居した独特なデザインだ。

レンズキャップにも工夫がある。大きく湾曲した前玉を持つ、いわゆる出目金タイプのレンズは、キャップを着脱しにくいことがある。しかし本レンズのキャップは指を掛けやすく、暗闇でも比較的スムーズに操作できた。

フード上から装着できる専用のロック機構付きキャップ

星景撮影の終了後、ライトを使えない状況でレンズキャップを装着することを考えると、この小さな工夫はありがたい。

出目金レンズであるため、前面に一般的なねじ込み式NDフィルターを装着することは難しい。日中にジンバルで動画撮影を行う場合は、マウント側のフィルター枠にシートタイプのフィルターを装着するか、専用の角型フィルターシステムを検討する必要がある。

前玉は曲率の高い凸面形状を採用
マウント側には、シートタイプのフィルターを装着できるフィルター枠を搭載。市販のフィルターシートをカットして挿入できる

撮れなかった風景を撮るための一本

このレンズの価値は、単純なスペックや解像度の数値だけでは語れない。

これまで画角の制約によって一画面に収めることが難しかった星空と地上の風景、広がりのある都市空間、撮影位置が限定された花火大会で画面からはみ出してしまった巨大な花火。そうした、これまで撮りたくても撮れなかったものを画面に収められることに、12mmという焦点距離の意味がある。

さらに、山へ持ち出しやすい小型・軽量設計、ジンバルで長時間運用できる重量バランス、画面全域にわたる高い解像感を備えている。

超広角レンズは、広ければよいというものではない。周辺部まで安定して描写し、現場へ持ち出せるサイズであり、必要な瞬間に確実に使えることが重要だ。今回の試写では、それらを高い水準で備えていると感じた。

タムロン「12-20mm F2.8(Model A084)」は、12mmならではの新しい構図を発見し、これまで撮れなかった映像を撮るための一本である。星景、花火、都市風景、建築、そしてジンバルを使った映像制作。超広角を必要とする撮影者にとって、有力な選択肢の一つになるレンズだ。


羽仁正樹(Saha Entertainment)|プロフィール
東京を拠点にグローバルに活躍する映像クリエーター、写真家。自身が撮影・制作を手がけた映像・写真作品は、テレビ番組や映画、世界各国で開催される展示会、ディスプレイ、テレビCM、ポスターなどの広告に数多く採用されている。
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YouTube:@SahaEntertainmentTV82