世界で初めてアイトラッキング(視線追跡)技術を取り入れたヘッドマウントディスプレイ(HMD)「FOVE」がキックスターターで資金調達を開始した。Oculus Riftにアイトラッキングを実装した仮想化向けヘッドセットが存在するということで、VR業界に賑わいをもたらせた開発品である。キックスターターに登場するや否や3日間で目標額を達成し、現在も勢いは止まらない。
FOVEを開発している株式会社FOVEは2014年5月に設立。FOVEの先導するのは元ソニー・コンピュータエンターテインメントでゲームプロデューサーを務めていた小島由香女史。昨年秋にはCTOのオーストラリア出身ロックラン・ウィルソン氏と共に、米サンフランシスコで毎年開催される「TechCrunch SF Disrupt」に日本企業初のセミファイナリストとして登壇した。その前にMicrosoft Ventures Londonのアクセラレータープログラムでも日本企業として初めて選ばれている。現在、東京大学インキュベーションラボ「Intellecutal Backyard」にてFOVEの商品化開発を進めている。
FOVEは装着しているユーザーの微妙な目の動きを読み取り、それを分析しつつ、より強力な体験へと導く。ユーザーの視線を追従して3次元空間においてユーザーが見ている場所(奥行情報)を算出し、フォーカスを調整してレンダリングソースを割り当てるアルゴリズムが存在する。ユーザーが仮想世界にいる相手や対象物とアイコンタクトがとれ、また目線で敵の飛行機をロックオンしてミサイルを発射など、自由に操作性を上げられるのだ。追従できることで福祉・医療分野でも支援ツールになると考え、昨年のCEATECではオリィ研究所のウェブカメラとマイク・スピーカのついた遠隔操作コミュニケーション用ロボット「OriHime」との組み合わせで実機展示を行っている。筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患っている人たちに向けてOriHimeのUIとしての提案だ。
そのほかにも障害者の支援ツールとして、FOVEとのコラボレーションプロジェクトに「Eye Play the Piano」が進められている。Eye Play the Pianoは、FOVEを使って「医療・特別支援教育分野への活用の可能性と、児童生徒の表現の可能性を広げよう」と考える、筑波大学附属桐が丘特別支援学校とFOVEの共同プロジェクト。活動報告は逐次、クラウドファンディングサイトにアップデートされている。
FOVE商品化までのスケジュールだが、今夏には生産試験へと進み、SDKと共に来春の出荷を目指している。価格は現在の先行予約で375ドルより。
(山下香欧)