動画レポート

PXW−Z750にHDR/SDR同時制作をサポートする機能追加

ソニーに、NABで公開予定だった映像制作ソリューションの最新動向について取材を行った。数々のアップデート情報をご紹介頂いたので、早速紹介しよう。

ソニーは、2019年のIBCやInterBEEでXDCAMショルダーカムコーダー最上位機種「PXW-Z750」や、ラージセンサーカメラ「FX9」などのカメラを発表し、豊富なラインナップを実現している。今回これらのカメラに対して機能向上アップデートの計画が公開された。

Z750は、4K HDR/HD SDRの同時収録が可能で4K HDRライブ制作のワークフロー「SR Live for HDR」にも対応しているが、こちらの機能がさらに強化される。現場でHDRやSDRを同時に撮った際の設定情報などが、SDIを通してメタデータのファイル記録が可能となる。現場で撮ったニュアンスの違いを後から参照できるようになる。

また、これま4K60P HDRとHD SDRの同時収録に関してHD側は60i MPEG2たけだったが、60P XAVC-Iにも対応する。

FX9は収録モード追加や、瞳AFなどのフォーカス性能が向上

FX9は2019年12月10日に発売されたばかりの新製品だが、さっそくメジャーバージョンアップデートとなる。FX9はフルサイズセンサーだが、6Kフルサイズ撮像での4K収録は29.97pまでだった。「なんとか60P撮れないの?」という市場の要望に応え、6Kフルサイズでは実現できないものの、5Kスキャンによる60P撮影を実現する。発売当初は予定していなかった機能だが、さっそく市場のニーズに応えて実現される機能だ。

また、収録モードの追加に加えて、HD 180Pに対応。昨年の発表時点で4096✕2160の収録対応を将来的にサポートする発表していたが、今回のファームウェアアップデートでDCI 4K収録を実現する。

今回のバージョンアップの中でも特に面白いのは、タッチスクリーン対応だ。FX9のモニター、伏せられていたが実はタッチスクリーン対応デバイスで、アップデートによりタッチデバイスとして使用可能となる。専用のUIも起こされており、画を見ながら設定変更が可能になる。また、フォーカス機能も強化され、αシリーズで話題の瞳AFや、任意のところをタッチしてフォーカスを合わせるフォーカスタッチコントロールAFにも対応する。待望のHLG対応、3D LUT対応なども盛り込まれた非常に魅力的なアップデートとなっている。

VENICEはワークフローに磨きをかける機能追加を実現

シネマカメラのVENICEは、発売当初に発表した将来へのファームウェアロードマップを今年2月のバージョン5のリリースですべて実現。バージョン6以降は市場のニーズに合わせた機能を実装していく形になる。早速、次期バージョンではハリウッドなども含めてハイエンドなワークフローで使われるCG合成に使える機能が搭載される。

具体的には、カメラの中に実は搭載されていたジャイロ情報をメタデータに付加したり、フジノンのラージフォーマットセンサーに対応したPremistaで、ZEISS eXtended Dataを収録に対応する。加えて、モニターの出力として3D LUTを使用できたが、ハイクオリティな画が出るARTファイルの対応も実現する。

「PXW-Z280」と「PXW-190」は配信機能を強化

4Kのハンドヘルドの兄弟機「PXW-Z280」と「PXW-190」は、既にPXW-Z90やHXR-NX80などに搭載されているシンプルライブストリーミング機能に対応する。ネットワーク環境に接続すれば、特別な配信サーバーなどの追加機材なしに、主要なSNSのストリーミング配信にカメラからダイレクトにアクセスが可能になる。今回のアップデートは、フルHDの解像度に対応。

業務用4K液晶モニター「PVM-X2400」と「PVM-X1800」にHDR-SDRの変換ライセンスを開発中

「PVM-X2400」と「PVM-1800」は、今年夏に発売予定の24型と18型の4K業務用液晶モニターだ。両機種とも特徴はすでに発表の通り、マスターモニターであるBVM-HX310とのカラーマッチングや全白時1,000nitsが可能でありながら値段の面でもコストパフォーマンスの高さを特徴とする。

その2機種に対応するHDR-SDRの変換ライセンス「PVM-HSX1」が現在、有償機能として現在開発中であることが明かされた。HDR-SDR同時制作の現場では、両者を比較をしたいというニーズが強く、ポスプロで変換したり、変換器を購入して間に噛ませることで実現をしている。PVM-HSX1を使えば、HDR入力信号を入力してモニター側の設定を変えるだけで、変換後のSDR信号を確認できる。また、HDR入力信号と変換後のSDR信号の並列表示も可能になる。

さらにHDR入力信号を、背面のエンハンスドモニターアウトより変換後のSDR信号出力が可能。これはモニタリング専用の機能だが、モニターがコンバーターの役割としても使える大変ユニークな機能とのことだ。

以上が、カメラやポストプロダクション関連のアップデートとなる。ここまでのアップデートの中でも特に印象的なのはHDR-SDR同時制作アシスト機能だろう。中継などのジャンルでHDR-SDR同時制作を先行してきたソニーだからこそ、その技術を他のジャンルでも転用しつつあるようだ。