レンズ制御の「完成形」への到達

タムロンブースにて体験した「TAMRON Lens Utility Ver. 5.0」は、専用の外部機器を介さずスマートフォンやPCからレンズ機能をカスタマイズできるアプリケーションであり、撮影現場のワークフローを根本から変えうる革新的なツールであった。専用アクセサリー「TAMRON-LINK」を用いたワイヤレス接続により、スマートフォンの画面が精密な操作インターフェースへと変貌し、極めて滑らかなフォーカス送りを実現している。

同ツールの歩みは、レンズ自体にUSB Type-Cコネクタを搭載し、PC経由で単体アップデートや高度なフォーカス制御を可能にしたことから始まった。2022年11月にはモバイル対応(Android有線接続)を果たしたが、今回のVer. 5.0で待望のiOS対応、およびBluetooth接続による完全ワイヤレス化という決定的な転換点を迎えた。

TAMRON-LINKを介してワイヤレス通信することで、これまでPCやケーブルに縛られていた高度な設定が現場へ解き放たれた意義は大きい。これは単なるマイナーチェンジの域を超え、撮影の機動力と表現力を飛躍的に向上させる、実用的な完成形といえる。

スマートフォンからBluetoothによる無線通信を介して、レンズの各種機能を操作可能にするコネクションアクセサリー、それがこの「TAMRON-LINK」である
展示ブースの一角では、早速iPhoneを用いたデモンストレーションが実施されていた

星景から動画までを網羅する高度な制御システム

今回のアップデートでは「星景撮影」「動画撮影」「タイムラプス」の3つの推奨シーンが提示された。撮影者の意図を高い精度で再現できる点が特徴である。

星景撮影に特化した「アストロフォーカスロック機構」の進化には目を見張るものがある。星を撮る際、温度変化によるフォーカスシフトという切実な問題に対し、このツールは真正面から向き合っている。従来のバージョンでも搭載はされていたが、その機能は無限遠でピントを固定するだけだった。Ver. 5.0では無限遠付近での「微調整」が可能になった。スマートフォンの画面をピンチアウトし、星の形が完璧な「点」になるまで追い込んでからロックをかける。この緻密な制御をアプリ上で実現した点は極めて実用的だ。

アストロフォーカスロック機能が大幅に強化。精密な追い込みを実現して、ロック機能を施せば不意に鏡筒へ触れてもピントが動かないため、確実性が求められる撮影現場で頼れる進化である

実際の操作画面についても、暗所での視認性を考慮し、インターフェース全体を赤色に変化させる「ナイトモード」を搭載している。これは、星景撮影においてスマートフォンの光が撮影や視界の妨げになるのを防ぐための機能である。撮影現場の心理を熟知した設計といえる。

ナイトモードの設定をオンに切り替えると、インターフェースが赤色へと変化する

次に気になったのは、タイムラプス撮影にフォーカス制御を付加する「フォーカスタイムラプス」機能である。従来、時間の経過とともにピント位置を滑らかに変化させるには、大がかりなスライダーや電動フォローフォーカスといった外部機材が不可欠であった。しかし本ツールは、ピントを少しずつ移動させながら撮る高度なタイムラプス撮影を、スマートフォン一台で完結させる。

フォーカス移動開始前の静止時間を「スキップ・コマ数」、移動時間を「移動コマ数」で設定する。撮影フレームレートから秒数をコマ数に逆算入力することで、意図した時間の精密なフォーカス送りを制御可能である

操作は直感的で、画面上で撮影間隔や撮影枚数を指定して実行するだけで、レンズ内に設定が保存される。特筆すべきは、撮影の途中でスマートフォンとの接続を解除しても、レンズ単体でフォーカス送りを継続できる点だ。これにより、撮影現場における機動力は大幅に向上する。

Ver. 5.0では、従来の「アイリスマーカー」が進化し、絞りとフォーカスを同時に制御できる「フォーカス&アイリスマーカーリンク」へと強化された。

動画撮影において、フォーカスのみならず対応レンズにおいては、絞り(F値)もスマートフォンから操作可能となった意義は大きい。DFF(デジタルフォローフォーカス)画面では、あらかじめ設定したマーカー位置へ、ピントと絞り値を同時に移動できる。ピント位置とF値は最大3地点まで登録可能であり、地点間を移動する時間や、動き出し・停止の滑らかさを調整する「Ease(イーズ)」設定も詳細に行える。

例えば、手前の被写体にピントを合わせる際は開放にして、奥へとピントが移動するにつれて絞り込んでいくといった複雑な表現も、機械的な正確さで何度でも再現が可能だ。これにより撮影者は、フォーカス操作から解放され、画角の微調整や演出にのみ全神経を注ぐことができるようになる。

低コストで導入可能なワイヤレス制御システムの圧倒的価値

ワイヤレス化の要となるTAMRON-LINK(専用ドングル)の実用性も高い。同社オンラインストアの価格は税込7,700円であり、この金額でワークフローが劇的に変わることを考えれば、導入のハードルは高くない。アプリも無料で提供されており、iPhone SEのような小画面デバイスからiPhone Pro Maxのような大画面スマートフォンまで幅広く対応する。

USB Type-Cポート搭載レンズ、TAMRON-LINK、そしてスマートフォンの連携により、レンズは単なる光学機器に留まらず、高度な制御が可能な撮影システムとして機能する。タムロンが提案するこの操作環境は、撮影の利便性を高め、映像制作の現場に新たな手法を提示している。技術の進歩を実感させる、実用的なアップデートである。なお近日中にTAMRON Lens Utility Ver. 5.0のモニターキャンペーンを行う予定。気になる読者の方は注目しておいてほしい。