Adobe Creative Suite 4 Production Premiumのアップデータが遂にリリースされた。このアップデートで更なるRED ONE対応を果たし、Premiere Pro CS4とAfter Effects CS4のバージョンはそれぞれ4.1と9.02になった。今回のアップデートは、Adobe SystemsのRED ONE対応の第一章を完結するといってもよいほど、申し分の無い内容を提供している。早速、アドビ式のR3D編集を試してみよう。
アップデートでR3Dファイルにネイティブ対応
今回のアップデートで、Premiere Pro CS4やAfter Effects CS4でR3Dファイル形式にネイティブ対応した。面倒な取り込みと転送をしたり、ファイル変換したり、ましてやプロキシなどをを介さずとも、直接R3D素材にアクセスして編集を開始することができるようになった。RED ONE発売当時から限られたソフトウェア対応の中で苦労してきた先駆者たちにとっては、「これまでの苦労は何だったのか」と思わせるほど、正に青天の霹靂状態である。
今回のアップデートでは、R3Dメタデータへのアクセスも可能になった。R3Dファイル素材を活かして編集できるようになり、不自由がほとんど解消している。RED ONEで撮影できる最大サイズ4096×2304に対応したことで、4Kまで解像度非依存となり、非破壊メタデータ運用を実現し、Premiere Pro CS4とAfter Effects CS4との連携でR3D運用も可能になった。これはもう、Final Cut Pro/Colorのコンビネーションで可能な2K解像度までの対応と比べても、抜本的にワークフローが見直されたと拍手を送らざるを得ない。
アスペクト比16:9や各種フレームレートに対応
実際にR3D素材を使ってPremiere Pro CS4で編集を試してみよう。まずはプロジェクトの設定の選択だ。プロジェクトの名称設定は通常通りに行うと、次に開かれる新規シーケンスウインドウのシーケンスプリセットにRED R3Dフォルダがある。このR3Dフォルダには、それぞれ1K、2K、3K、4K、512、HD 4Kフォーマットのフォルダが入っており、16:9または2:1のアスペクト比で、23.976、24、25、29.97フレームを選択できる。実際にPCで4Kデジタルシネマの編集をし、出力できる事は驚きだ。
撮影したフォーマットあるいはターゲットとなるアスペクト比や、フレームレートを間違えないように選択して先に進もう。国内では一般的にアスペクト比16:9をターゲットとする場合がほとんどだとは思うが、今回の特集で紹介されている劇場公開映画『築城せよ!』の様に、アメリカンビスタ内にアスペクト比2:1で仕上げるという場合もある。この場合は2:1フレームで撮影を行い、編集も2:1で行った方がよい。
PRONEWSの読者のみなさんはビデオフォーマットをターゲットとする場合が多いと思うので、アスペクト比16:9で29.97フレームレートを利用するのがよいだろう。撮影時に4K HD(3840×2160、HDの倍)フォーマットで撮影し、HD4Kフォルダ内の「4K HD Half 16×9 29.97」をプロジェクトとするのが好ましい。R3Dの現像や編集の仕事を受ける際に、ターゲットフォーマットに合わないフォーマットで撮影してしまっているケースにもよく出くわすので、この辺りのプランニングはしっかりしたいところだ。
Premiere Pro CS4は、HDのタイムラインに4Kのクリップを配置しても、自動的に縮小して配置してはくれない。モーションタブを使用して、クリップのリサイズが必要になる。これを逆手に取れば、HDタイムライン上に4Kサイズのクリップを貼り、4KサイズからHDサイズを切り抜いて使うとかなり自由にフレーミングできることになる。このようなプロジェクトとしてカメラ2台で撮影したデモ映像がある。1台は2Kのハイスピード(3倍スロー)で、もう1台は4Kの通常撮影をしたものだ。アスペクト比はいずれも16:9だ。これをHDサイズで仕上げる編集をしてみた。
R3D素材をメディアブラウザで容易に探索
アップデートされたPremiere Pro CS4では、R3D素材を容易にブラウズできるようになった。メディアブラウザで、R3Dファイルを保存しているハードディスクの階層を選択すれば、表示形式がR3Dだけを認識して”RED”という表示になり、同階層にあるプロキシファイルなどを含めないで表示をしてくれる。これは、実に快適だ。かっこ良いREDアイコンで表示されているR3Dファイルをダブルクリックすれば、瞬時にソースモニタで素材が開く。
再生ボタンをクリックすると再生が始まるが、初期設定では素材がスムースに再生されない。これは、ソースモニタウインドウや、プログラムモニタウインドウのミニメニューで、解像度がフル解像度になっているのが原因だ。利用しているコンピュータのパフォーマンスに応じて、スムースに再生できる解像度に落として作業しよう。今回利用した環境は、2.67GHzのIntel Core i7 920のマシン(市場価格で15万円程度のモデル)であったが、4K素材を1/4解像度に設定したところ快適に編集が行えた。4K素材の1/4解像度であっても、Premiere Proのモニタ上では等倍以下の大きさなので、編集画面上で解像度が気になる事はないだろう。PCのスペックを最高なものにすれば、解像度を落とす事もなく、編集や再生ができたというレポートもある。
R3Dメタデータにより快適に現像/色補正
選択したクリップをタイムラインに配置する。今回、プロジェクトはHD 4K Halfを選択したので、ターゲットサイズは1920×1080だ。4K素材をタイムラインに配置すると、約2倍にブローアップした状態になるが、ピクセルが1×1以下の解像度にはならない計算になる。タイムライン上でカメラや被写体の動きに合わせて、エフェクトコントロール/モーションの位置やスケールなどを使って4K解像度内でデジタルズームやパンニングの加工ができるのはウレシイ。
簡単にこれらの作業を行ってみたが、1/4解像度ではレンダリングなしで再生している。次に3倍スローのクリップをタイムラインに配置する際に、クリップの再生速度を300%に設定して、もう1つのクリップに同期させて、使いどころやクリップの切り替えどころを探す。カット点を見つけたら、レイザーツールでクリップに切れ目を入れる。そして、3倍スローのクリップ再生速度を100%に戻し、「変更後に後続のクリップをシフト」を選択してやると、スローが終わったところで通常速度のクリップが継続する。このようにして、再生速度の変更や、ディゾルブ、ズーム、パンなどを施してみたが、いずれも容易に編集をする事ができた。
クリップの色味が気になったら、今回追加されたメタデータ編集機能を利用しよう。プロジェクトビンから色調整をしたいクリップを見つけ、右クリックで「ソース設定」を選択する。R3Dのメタデータパラメータを設定できるソース設定ウインドウが表示されるので、パラメータを変更してウインドウを閉じればよい。ちょっとしたタイムラグの後に、調整したクリップのルックが切り替わる。今回のアップデート対応で、R3Dメタデータのパラメータを網羅したので、高品位に現像/色補正をすることが可能になった。
ダイナミックリンクでR3Dクリップを利用可
CS4では、Premiere ProとAfter Effectsの連携機能であるダイナミックリンク機能がさらに進化した。編集したPremiere Proのタイムラインから、After Effectsで処理したいクリップ(複数も可能)を選択して右クリックし、「After Effectsコンポジションに置き換え」を選択すると、自動的にAfter Effectsが起動し、選択したクリップがAfter Effectsのコンポジションとして作成される。ここではLight Burstプラグインを追加してPremiere Proに戻ってみた。ちょっとのタイムラグ後に、Premiere Pro上の該当クリップが、自動的にAfter Effectsで作業した状態と同じになった。このダイナミックリンク機能も、すべてR3Dをもとに機能しているのだから感動である。
最後に、編集したタイムラインを任意のフォーマットで「書き出し」てみた。CS3とは異なり、CS4では書き出しを実行するとAdobe Media Encoderが起動し、フォーマット変換を担うようになっている。H.264やFlashなど、いくつかのフォーマットで出力してみたところ、フォーマットによってはうまく対応せずエンコーディングが勝手に終了してしまうことがあった。この部分は早急に改善して欲しい。
ワークフローの課題としては、BlackmagicDesign製DeckLink HDなどのサードパーティ製ビデオカードでRED ONE素材を表示できるようになって欲しい。これがないと、適切なリファレンスを持って色補正ができないことになるからだ。アドビやサードパーティには頑張って欲しいところだ。
(RED ONE制作スペシャリスト 伊藤 格)