DSLRから考えてみる…
ミドルレンジを考えた次は、筆者にとって鬼門であるDSLR。昨年筆者のコラムでDSLR動画に対しての否定的な疑問を投げかけた。基本的に”スチールカメラ”の”おまけ”機能である動画機能で仕事を行うことには今もって筆者は両手を挙げて賛成する事はできない。しかし自分の疑問を投げかけたのと同時に多くの方からご意見を頂いた。確かに使い方次第だと思う。現にDSLR動画が多くの人に支持されているという事実があり、食わず嫌いでは駄目なのである。そんな中でSONY NEX-VG10の登場となりようやくホッとしたのだが、VG10は満足の行く域には達していなかった。結局の所DSLR動画を後押しするのは、キヤノンEOS 5D MarkⅡである事は間違いない。
そんな中、PRONEWSで「DSLR Maestro」というコラムを展開していたり、実際にDSLRを使って色々な作品を手がけ、活動しているマリモレコーズの江夏由洋氏に話を聞く事ができた。彼はAdobeのワークショップ講師としてもお馴染みで、DSLRを使った映像制作を牽引していると言っても良いだろう。
DSLR派の江夏氏が語った意外な真実
まずは率直な疑問をぶつけてみる。それは「何故、DSLRなのか?」と言うことだ。その回答は至って簡単だった。
DSLRを引っ張っているというのは大げさですよ!別にEOS 5D MarkⅡ(以下5D)にこだわっている意味はないんですよ。今なら各社からいろんな仕様のDSLRが発売されていますけど、当時は5Dしか無かったというのが、現状なんです。使用して良かったと感じたのは、まず被写界深度のコントロールでしょうね。あとは、超ワイドな映像が手に入る事。そして撮影機材にしては、本体が小型である為にアングルが自由に設定できた事でしょうかね。
ただそれだけではなく、被写界深度の浅い映像を撮ることがメインではなく、パンフォーカスで撮ったり、被写界深度をキッチリコントロールしたり、というところにDSLRを使う意味があるんですよ。感度が良いからと言って照明に手を抜かない。準備は入念にしますよ!ただ最近の状況には困惑気味です。浅い被写界深度が全てみたいな風潮はちょっと食傷気味なところも確かです(笑)
意外な言葉が聞けた。DSLRを使用する一般的なクリエーターとは一線を画す、 面白い人である。DSLRを使っていながらも、アンチDSLRの筆者と考え方が似ている。聞けば、マリモレコーズ設立前はテレビ局でENGを担いでいた技術者でもあったという。つまり、江夏氏はクリエーターである前に技術者(=職人)でもあったわけだ。DSLRのデメリットをしっかり解っていながら活用しているのだ。
ちなみにRED ONEも所有している江夏氏に、「予算が潤沢にあっても5Dを使用するのか?」という意地悪な質問をしてみた。江夏氏は「もちろん使いますよ!」と即答してくれた。これには爆笑。REDを所有していても5Dを選ぶ場合も多々あるという。
DSLRを使用する一番の理由は”安心”と言う事ですね。それは機材に対する安心というよりも、ワークフローやどの現場でも間違いなく使えると言うことなんです。REDではなくてDSLRを使う理由は、機材の機能性で映像を撮っているという事ではないんですよ。やはり機材にもそれぞれ得意分野がありますからね。条件に適している機材を投入する事になるのは当然の事ではないでしょうか?
たとえば、5Dには絶対的に足りない部分が二つあります。ひとつはスルーアウトの映像信号。もう一つは60P収録のフォーマットですね。いくら40Mbps前後での収録とはいえ、MPEG-4 AVC/H.264のフォーマットには、編集や合成の事を考えると満足出来ないんですね。なお、5Dでは”音声”についての問題も巷ではよく取り沙汰されていますが、私は同録せず音声は別録りしていますので、無くてもほとんど問題にはなりませんね。
自分のキーワードはズバリ”ポストHD”です。それは3Dであったり3k、4k多種多様なんですが、それらを撮影して、中間コーデック無しでワークフローに持ち込めると言う。これらを満たすカメラがあれば十分ですね。
江夏氏は最後に「やはり、何よりも安心感が大事ですね。」と付け加えた。どこでもどんな場所でも思った通りの映像が撮れる、それは画角等のクリエイティブな部分と言うよりもレンズや撮像素子、収録コーデックを踏まえたテクニカルな部分がキッチリと整備されることが、ポストHDに取って一番大事と言う事だ。デザインについては、カメラボディはショルダータイプで尚且つ小型軽量な物、GY-HM700シリーズだと言う。それは多分クリエーターと活躍している以上に技術者的な思いがあるだろう。江夏氏はそういうハイブリッドなマインドを持ち得た存在だからこのような意見が聞けたのかもしれない。
理想のカメラを求めて!~収録ユニット編~
収録メモリーは専用品を使い、サルベージ機能は必須。専用ストレージのために価格的には高価になることは、仕方のない事。バックアップとしてスマートフォンの使用が可能であり、そのディスプレーで各種のカメラの情報が表示可能、更にプロキシデーターとしてスマートフォン自体で再生が出来る。Bluetoothで本体とのアクセス及びプロファイルの変更が出来る。またスマートフォンの代わりに同形状のアダプターを標準装備とし、SDカードの2枚差しが出来れば最高だ。