ミドルレンジが求めるものそれは…
番組の収録、画作りをしながらも、バックアップの事が頭の中をよぎる…
各分野で活躍されているカメラを扱う人々に今のカメラの現状と本当に欲しいカメラを聞いてみた。まずは筆者の範疇であるミドルレンジ。このレンジに集まっている技術者は本当に幅が広い。一般には”業務レンジ”と言われて、放送業務以外のビデオパッケージを制作する分野の様に定義づけられている事が多い。しかしながらワイドショー系のロケもこなす。実際ミドルレンジという定義は、かなり曖昧且つ広義に渡っている。そのためこのエリアでのカメラ選択というのは単純には比較できないほど煩雑なのは言うまでもない。そこでミドルレンジとして活躍している筆者とって言及しておきたいのは、レンズや性能スペックではなく、バックアップ収録の有無だ。
え?バックアップは基本じゃないの?と言う意見はごもっとも。ここで言うバックアップ収録は、単に記録手段を担保するだけではなく、リテイクの効かない確実に1回しかチャンスが無い収録の事をさす。1回逃すと映像として成立しない現場と定義したい。具体的には、インタビュー収録に始まりブライダルや舞台撮影などがその定義に入る。もちろん仕事として、全ての素材をバックアップを取る事は当たり前だ。しかし必要以上に注意を払っていても、必ず現場で何かが起こる。そんな経験は皆さんにもあるだろう。100%大丈夫という安心感を担保することは難しいが、99%の確率で事故を防ぐという準備はできるはずだ。収録においてメモリーエラーの危険性を考えればデュアル・バックアップを必須としたい。ただ同トリガー連動のミラーリングのみはこの場合バックアップに定義されない。さて、そんな中でデュアル・バックアップ収録が必要な撮影はやはりこのミドルレンジでは圧倒的に多い。
中でも一番多い現場をあげると間違いなくブライダル撮影。世界中にある結婚式場で日々撮影が行われている訳だ。さて筆者が標榜するデュアル・バックアップ収録のためのカメラは存在するのだろうか?現状でキッチリとバックアップが出来ているカメラは、筆者の知っている限りGY-HM700以外に存在しない。ここでいうバックアップは同じ条件で同じバックアップファイルがパラレルで2個存在する事になる。
現存するカメラでのバックアップ方法は、HVR-S270Jは、ハイブリッドでのW収録、NX5Jも同様にWメモリーでの収録が出来るが、メインの収録TCに全てひっぱられてしまう。GY-HM700にOPのSxSユニットはTCジェネが別々に入っている。同様にHD-SDI接続でAG-HMR10等を使って撮るというのもあるがカメラ側でコントロール出来ない物をデュアル・バックアップとは、やはり呼べない。諸々バックアップの必要性をミドルレンジでの経験を通して考えてみたが、理想のカメラにおいては、どういうバックアップがベストなのだろうか?デュアル・バックアップだけではなく様々な可能性を考えてみたい。
様々なバックアップを考える。そこに全てがある
CFやSDメモリー等の汎用性のある物を使用してコストを下げるという方法もあるが、信頼性という意味でメインメモリーだけは専用ストレージが欲しい。メモリートラブル時にサルベージ出来る様なシステムは搭載したい。サブメモリーや緊急時は、汎用性の高いメモリーでも構わない。出来れば専用ストレージ単体でも収録映像を見れるビューワーは実装してほしい。と考えると…ぴったりのガジェットが存在する。
それは最近隆盛しているスマートフォンだ。これを自体をドライブにするという考え方はどうだろうか?スマートフォンに搭載しているBluetoothを使ってカメラプロファイル等の各種コントロールを制御し、プロキシ映像ファイルを使っての単純な遠隔ビューワー代わり(ディレクターのOK・NGカットポイント打ち込み等)、更に専用アプリケーションのダウンロードにより、ベクトル&ウェーブウォーム、TC・CTL等の各種情報を確認できるようにしたい。スマートフォンと同じ大きさの専用ケースにCF等の汎用メモリーを入れてバックアップ収録専用機に準備するのもありだ。
モバイルストレージを兼ねたブレイクアウトBOXとの接続I/Oにはサンダーボルト/USB3.0の搭載が欲しいところだ。またこのモバイルストレージから一歩進んだ物としてラップトップ型のモバイルエディターと言うのも考えられる。ここではプロキシデーターを使用しての簡易編集とそれらを出力出来る各種端子、特に現場でのストリーミング配信に対応出来るシステムはこれからのインフラの中では必要項目だと感じている。
信頼こそ命。それを補うのが、収録部分である。筆者が望むデュアル・バックアップを始め、様々な機能の前にその収録部分を精査することがミドルレンジが求めるカメラと言える。
理想のカメラを求めて!〜ボディー編〜
大型単板ラージセンサー搭載(4K性能的に収録可能)し、レンズマウントは汎用性のあるPLマウント。マウント変換により多彩なレンズを付け替えることが出来る。画角の変化が無いように、レンズマウントの種類によって撮像板の切り出し情報を変化させ、テレ側にシフトをさせないようにする。(例:35mmセンサーから2/3inchを切り出す等々)ボディそのものはENGタイプだが担いだときに右側方向が見えるようにボディハイトは押さえる。尚ハードウェアリセット(ブレーカー)も必須。アウトプットはマルチに揃え、端子によってはダウンコンバーターでの同時出力を可能にする。HD-SDI・HDMI・iLink・コンポーネント・コンポジットを実装。マイクに関しても上部1/4inchネジ穴に装着する仕様にしたい。