カメラを巡る夢の途中で
ミドルレンジの視点を通して、ENG系・DSLR系、シネマ系と3つのカテゴリーから理想のカメラとは何か?を見てきた。江夏氏・早坂氏は、やはりしっかりと一本筋が通っていてブレが全くない。ジャンルを問わずとも納得のいく意見が聞けた。江夏氏は、映像技術の知識が豊富で常に新しい物を模索し、それを自分の物にする為に自社のスタジオにて綿密にトライする。早坂氏は、新しい物よりもすでに実績があり信頼性のある物を現場に持ち込み、確実な仕事を身上とする。どちらにも共通するのは、自分の出来る事を的確に把握していると言う事だ。そして被写界深度のコントロールについては、三者とも同意見。浅い映像よりも逆にパンフォーカス気味にしっかりと色々な物を魅せて、それを背景としてもしっかり魅せるという事だ。早坂氏に関して言えば究極のレンズはピンホールと言い切る。
話は尽きないのだが、やはりカメラを扱う人間は、カメラの事が好きなんだなと思う。だからこそ日々市場に出現するカメラに果敢に挑み乗り換えて行くのだと思う。現状の仕様でのカメラでは我慢できない部分多いのは、こうしたいというファン心の現れなのである。一昔前のβカム時代、レンズ、ボディ、レコーダーはカメラマンが撮影形態によってセレクトできるところにカメラマンの個性や知識が生かされていた。レンズや収録部分など多種多様のパーツがジョイントされ一つのカメラとして成立する事は今の業界では考えられない事かも知れない。現在では、効率化や高性能に伴い小型軽量化されたカメラが主流になっている(業務用においても!)。今一度自らの手で構築できるカメラが欲しい。唯一REDのEPICはこの考えに近いのかも知れない。
考えてみれば、映像の世界に飛び込んでみて、ファーストビデオカメラが5Dと言う方も最近では多いのではないだろうか。フォーカスコントロールの知識なく浅い被写界深度を喜んでいるという本末転倒な状況さえ起こっている。…と5Dに関しては我々から苦言も多いがそれがアンチイズムという訳ではなく、こうすればもっと良くなるという愛情表現も含めた指摘でもあるのだ。
5D隆盛の裏側から読み取れる事
5D隆盛の要因の一つとして良くも悪くも被写界深度が簡単に目に見え確認できると言う事が上げられる。逆に言えばカメラ操作が簡単であり、基本的な仕組みや操作が覚えられるメリットが大きい。更に組み合わせによってはデジタルシネマから運動会で子供を撮るパパカメラまでその使用されるレンジは広域に及ぶ。ユーザーを選ばない偉大な存在であると今更ながら今回気づいた。
さらにディテールで考えてみたい。例えば同じフォーマットでも4:2:0と4:2:2、4:4:4と価格の違い=コーデックの違いと言うのもアリだし、レンズも絶対的に高画質を求める単焦点を芝居向けに、多少ワイドは犠牲にしてもテレ側の操作性を重視したズームレンズをスポーツ系、ENGならワイド系のショートズームにエクステンダーを2発搭載と言うのはどうだろう?
しかしいずれの場合でも、どうしても譲れないのが高詳細なVF(ビューファー)の存在。同じボディーでもそのカメラプロファイルを細かく変更する事でトーン自体を多種多様に変えられる様に、カメラメニューではなくコントロールパネルは必要だろう、出来ればワイヤレスでプロファイル自体の呼び出しは簡単に行いたい。それからインタビューではあまり重要視されていなかったが電源=バッテリーが無いとカメラは動かない。通常は日本国内なら業務用途してデフォと言っていいVマウントだが、そのバッテリーもアダプターで小型のminiVマウント規格というのもありかも知れない。駆動時間は少なくなるが絶対的な軽量を求める現場にはぴったりなはず。
それでも理想のカメラを追い求めるには、理由がある!
最近のカメラは高性能にして小型軽量のモノが多い。メーカーサイド側での集約されたモノが市場に並ぶ結果となっている。当然の事ながらパーツ単位まで全て一つのメーカーで完結する。そのメリットは単純明快に誰でも使えると言う事とメンテナンスが容易である事。デメリットは他メーカでのパーツとの組み合わせが難しい事だ。是非一体型のワンピース構造ではなく、ぜひメーカーを問わず、ユニット式で各モジュールを組み込めるカメラが出現してほしい。ユーザーがしっかりと考え、セレクトし、システム構築が出来るカメラを待ち望む。メーカーさんにはぜひご検討いただきたい。そのために招聘がかかればいつでも参上する準備は出来ているので…。理想のカメラを求めれば話は尽きない。こらからは、みなさんと引き続きPRONEWS上で理想のカメラを求めて考えたい。
最後にハードの進化によってビデオカメラは格段に進化したが、ソフト=人間(それを操作する我々カメラマン)はどうだろうか?情報だけを鵜呑みにしていないだろうか?オート機能を完全に否定しマニュアルのみしか認めないカメラマンも多いが、使うタイミングによっては人間の五感よりも正確に機能する時もある。それもやはり情報の整理だろう。もちろん我々の日々の努力も必要である事を最後に付け加えておきたい。
理想のカメラを求めて!〜完結編〜
最終的なセッティングをBluetoothを使用し、スマートフォンはもとよりPCからも遠隔操作が可能。ディレクターがOKテイクのチェックを入れられて、プロキシデーターを使った簡易的編集が可能。もちろんそのデーターを本編集に使用する事も出来る。勿論バッテリーシステムもVマウントを基本としながら、様々なアダプターを使う事で多種多様のバッテリー(この場合は民生機用の小型バッテリーも)を使える事が望ましい。