2011年ファイルベースはどうなっただろうか?

収録機材は特別なものを除いてメモリーへの記録になり、編集もノンリニア編集が当たり前となった。ファイルフォーマットもHDに限れば出揃った感があり、現在販売されているカメラで撮影する限り、編集側で受け付けないということもなくなり、一息ついたに見えたが、4kという思わぬ伏兵に対応すべくバージョンアップが始まった。

4kといえばいわゆるデジタルシネマ用のフォーマットであり、放送などとは無縁の存在のように思えるかもしれないが、海外ではテレビドラマ、国内では主にCMの撮影でフィルムカメラが使われていたものがデジタルシネマ系のものに置き換わってきたことからの対応ともいえる。こうしたデジタルシネマ系のカメラでは4kといった解像度だけでなく、RAWデーターを扱わなくてはならないが、こうしたソフトやシステムは非常に高価だったものが安価に手に入るようになった。

テレビ放送用のコンテンツをフィルムで撮影していたのは、解像度といった面ではなく後処理でのカラーグレーディングで作り込むことが可能であることが大きな要素となっており、REDが一世を風靡したのは4kのカメラというだけでなく、RAWデーターで撮影でき、専用のカラーグレーディングソフトも含め非常にローコストで制作環境を整えることができたという部分が大きいと思う。HD解像度以上でRAWデーター記録が可能なカメラは高価なデジタルシネマ用のカメラ以外にはなかったが、ここきてキヤノンがCINEMA EOSを掲げ参入してきそうな気配だ。

今回発売されるのはC300というHDカメラだが、参考展示されていた一眼レフタイプのカメラに期待したい。このカメラの記録形式はMotion JPEGと発表されており、額面通り受け取ると8ビットということになるが、Motion JPEG XRという規格が数年前にISO規格(ISO/IEC 29199-3:2010)となっており、32ビットまで対応可能だ。可逆圧縮・非可逆圧縮にも対応しており、RAWデーターも圧縮することで軽くできる。こうした用途としてすでにJPEG 2000が規格化されているが、Motion JPEG XRは処理に必要なハードの敷居が低く、すでに対応する処理チップも幾つかのメーカー(デジカメ用の画像処理チップを製造しているMegaChipsなど)が発表しており、デジタル一眼などへも実装可能だ。来年以降Motion JPEG XRを採用したカメラがキヤノン以外からも発売されると予想されるが、おそらくデジタル一眼のRAWデーター記録用で動画対応はキヤノンが一番乗りになるのではないだろうか。キヤノンの画像処理エンジンといわれているF社のDIGICはMotion JPEG XR対応になるのか、他メーカーのエンジンを採用するのか興味のあるところである。余談だが、REDが結構発熱するのはセンサーの発熱だけでなくこうした処理のためともいわれている。

当然編集ソフトやカラーグレーディングソフトも対応したものが発売またはバージョンアップ対応となるだろうが、Motion JPEG XRを編集中間コーデックとして採用した製品も出現するかもしれない。さて、こうした現状を踏まえるとファイルの管理とHDフォーマット以外のハンドリングが今年のトレンドであり今後の方向性といえると思う。

PRONEWS AWARD 2011 ファイルベース部門ノミネート製品

  • Blackmagic Design Davinci Resolve
  • Square Box Systems CatDV
  • 朋栄 LTR-120
  • ニコンシステム ファイルベースコンテンツチェッカー

何が受賞するのか…?

PRONRES AWARD 2011 ファイルベース部門受賞製品発表

ファイルベース部門
ゴールド賞
CatDV

Square Box Systems

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ファイルベースのワークフローが一般化するとファイルの管理が重要になってくるが、HDだけでも様々なフォーマットがあり、これにテロップ用の静止画や音声などもまとめて管理するとなると専用のソフトが必要になる。アセットマネジメントはファイルベースワークフローの要となる存在ともいえ、ソニーやAvid、Grass Valley、朋栄などシステムソリューションを展開しているメーカーでは独自のシステムを提案しているが、Square Box SystemsのCatDVのように独立系のソフトメーカーからもアセットマネジメントシステムが発売されている。Square Box Systems社は銀行業務や金融業務システムを開発しているいわゆるビデオメーカーではない独立系の会社だ。ビデオ系の会社が開発したアセットマネジメントでは送出なども含めたワークフローを視野に入れた開発を行なっているが、CatDVはファイル管理を主眼としている。リレーショナルデータベースとの連携や強力な検索機能などが搭載されており、小規模から大規模なシステムまで対応可能。

ファイルベース部
シルバー賞
Davinci Resolve
Blackmagic Design 
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カラーグレーディングのソリューションとして長年の実績のあるDavinciだが、Blackmagic Designによる買収により、驚異的ともいえる低価格を実現。デジタルシネマの業界だけでなくソフト単体は個人でも購入できる価格設定となっているので、より幅広いユーザーへのアプローチともいえるだろう。カラーグレーディングはRAWデーターで行うことでその真価を発揮するともいえるので、RAWデーターからHDフォーマットへは必須のソフトになると思われる。Motion JPEG XR対応の動画カメラは来年あたりから発売されてきそうな気配なので、そうなれば一気にユーザーが増えるだろう。ある意味先を見据えた戦略ともいえる。ちなみにSDおよびHDに限定したバージョンDaVinci Resolve Liteは無償提供となっている。カラーグレーディングはビデオのワークフローに新たな新境地を開く第一歩と思われ、Davinci Resolveは今後のトレンドを先取りしたソリューションといえるだろう。

総括

ファイルベースのワークフローが一般化すると規模の大小にかかわらずファイルの管理が必要になってくる。ファイルの種類も様々なフォーマットのものがあり、それらを一元管理できるソリューションは今後重要な要素になってくるだろう。

一方、HD解像度以上のファイルフォーマットやRAWデーターなど、ビデオとは異なった業界のものと思われていたものも一般的になりつつあるが、解像度に関しては編集ソフトがハンドリングできる幅を広げており既に対応済のシステムも多い。ただ、カラーグレーディングのような作業は通常の編集というワークフローの中に取り入れるには異質な部分であり、システムも高価な製品が多かった。CatDVはアセットマネジメントとして比較的小規模からエンタープライズ系まで対応でき、RDBなどとの親和性も良い。とかく大規模対応で自社のソリューションとの親和性を第一に考えたシステムとなりがちなアセットマネジメントを身近にした功績は大きいと考え金賞としたい。カラーグレーディングは今後のビデオ制作を行う上で重要な作業となりうるものだが、フリーソフトから個人レベル、専用のサーフェスを備えたものまで同じ環境を提供したDavinci Resolveを銀賞とした。


Vol.01 [PRONEWS AWARD 2011] Vol.03