次世代へのヒント!プロスーマ・ネクストソリューション
プロフェッショナルの映像制作者。もちろんこの層をターゲットとしている本サイト”PRONEWS”ではあるが、2011年現在、専門的な映像制作機器の購買層は大きく変化していきている。ノンリニア編集システム(NLE)の簡易化、DSLR(デジタル一眼レフカメラ)によるムービー撮影機能の定着、そしてYouTubeやUSTREAM、ニコニコ動画といったネットでの配信先の拡張など、これらの映像周辺の環境が充実したことで、これまで映像制作に関わりのなかった層が積極的に映像の世界に入り込んで来ている現状がある。
そんな状況も加味した上で、これからの映像制作のすそ野が益々広がることを予見し、今年のAWARDでは『プロスーマ・ネクストソリューション編』と題して、映像制作専業ではないが映像をモチーフに様々な利用をしている人向けの製品、という分野に着目してみた。ここで言うプロスーマとは何か?もちろんジャンルも様々で、使い方もそれぞれ大きく異なるのだが、20年以上も昔には”ビジネスビデオ”もしくは”インハウス・プロダクション”と言われていたような、要は企業VPやPRビデオ、イベント映像や販促ビデオといったものを、メーカーやショップなどが自身で映像制作してしまうような、パワーユーザーを対象にした製品である。
もちろん個々の製品を使いこなすにはそれ相応のテクニックが要るのだが、ポイントはその専門性と視点だ。プロ映像制作者は、機器のオペレートに関してはプロフェッショナルだが、請負制作した際の、PRしたいものや販促対象物に関しては基本的にアマチュアである。しかしこれを対象製品を扱っている本人が自身で映像制作出来てしまえば、さらに深い内容の映像が創れるというわけだ。機材操作が簡便になり、値段も民生品に近い価格帯になってきたいま、そうしたパワーユーザーが多く出て来たことは当然だと言える。もちろんここに挙げた製品達は、こうしたユーザーばかりでなくプロ映像制作者も使える代物を列挙した。あくまで製品選択はプロ視点で行っているのでご安心を。
一概にジャンルを決め込む事は不可能だが、とりわけ誰にでも、どんなジャンルにでも受け入れられる製品を取り上げた。GoPro HD HEROは、2009年のNABショーで出展以来、プロ映像の業界でも多く用いられているベストセラー製品。今年はCineForm社を買収して3D映像への進出を果たす等、その伸張ぶりには今後も目が離せない。そしてこの12月には、次のバージョンであるGoPro HD HERO2が発売になった。プロアマ問わず、誰もが注目するガジェットは当然のノミネート。
今年最大数の新製品を発表したブラックマジックデザイン。その中でもひと際注目されたのが、斬新なスイッチャー類だ。昨年買収したECHOLAB社の製品を同社なりの”マジック”で進化させたATEM Television Studioは、PCのみでもコントロール可能でHDMI入力が可能なHDスイッチャーだ。USTREAMなどネット配信設備として誰もが扱える機能と価格は魅力的。同じくローランドも昨年発表のVR-5に続き、その機能を絞って簡素化した製品VR-3を早くも発表して話題になっている。またネットでの映像配信機器でもPC不要でUSTREAM配信が可能なCEREVO Live Shellといった製品や、さらにCEREVO CAM liveなどソーシャルメディア専用のデジタルカメラなどが出現したことも興味深い現象だった。
今年4月のNABショーで出展はなかったものの会場外で大きく話題になったのがアップルの次世代NLEソフトウェアFinal Cut Pro X。前バージョンから大きく変貌したこのソフトへは賛否両論が寄せられているが、アップルが目算している次世代の映像制作の姿はまさしく”プロスーマ・ネクストソリューション”なのだ。今後、iPhoneやiPadへの連携等も多いに考えられる点でも注目せざるを得ない製品だろう。
PRONEWS AWARD 2011 プロスーマ・ネクストソリューション部門ノミネート製品
- Apple Final Cut Pro X
- Blackmagicdesign ATEM Television Studio
- CEREVO Live Shell
- GoPro HD HERO 2
- Roland VR-3
何が受賞するのか…?
PRONEWS AWARD 2011 プロスーマ・ネクストソリューション部門受賞製品発表
プロスーマ・ネクストソリューション部門 ゴールド賞 |
GoPro HD HERO 2
GoPro |
“ネコも杓子も”という言い方も妙だが、とにかく映像に関わる人全員が注目度No.1の、この製品。製品サイトに”世界で一番多目的なカメラ”とあるように確かに誰でも、何にでも使える画期的なガジェットである。さらに新バージョンのGoPro HD HERO 2では、1/2.3型1100万画素の新型CMOSセンサーを採用し、前バージョン比で2倍鮮明なF2.8の固定焦点レンズ、2倍の処理速度を持つ画像プロセッサを搭載した。さらに暗さに弱いとされた部分でもISO感度機能を改善。さらに超広角170度でのフルHD動画撮影にも対応、撮影モードはワイド(170度)、ミディアム(127度)、ナロー(90度)から選択可能。動画撮影はMPEG-4 AVC/H.264でフレームレートも20p/30fps/60fpsでの撮影が可能。アクセサリーは従来モデル「HD HERO」の従来のアクセサリーを全て使用できるのも魅力だ。
プロスーマ・ネクストソリューション部門 シルバー賞 |
ATEM Television Studio Blackmagic Design |
85,980円という価格帯でスイッチャーを出して来たという事自体が革命的なこの製品。まさにネット時代のプロダクションスイッチャーと言える『ATEM Television Studio』は、リアルタイムH.264エンコーダーを搭載した完全な放送局品質のプロダクションスイッチャー。ライブイベントをファイルに直接キャプチャーしてインターネット配信が可能。そして放送用SDIおよびコンシューマー用HDMIの6系統のビデオ入力搭載という本格的なものだ。ソフトウェアコントロールパネル、クロマキーヤー、2つのメディアプレーヤー・フレームストア、ダウンストリーム・キーヤー、トランジションなどの機能を搭載。このままATEMのハードウェア・コントロールパネルと使用すれば本格的なスイッチャーとしても拡張も可能だ。
総評
このジャンルは正直に言って、製品も多岐に渡るのでどれも甲乙付けがたいものがある。だがしかし全体的な流れを見てみると一つの潮流が汲み取れる。それは映像制作、映像配信のカジュアル化という点だ。人によってはこの考え方を好まない人もいるだろう。プロフェッショナルの仕事が少なくなり、単価も下がるという懸念からこうしたアマチュアを排除したい、という意志を業界の所々に感じるし、そうした動きは当然だと思う。
しかし『デジタル』というテクノロジーを受け入れて来た過去の全てのジャンルがそうだったように、映像というジャンルにおいてもその過渡期にさしかかっていることは事実であり、それは避けて通れない。事実ハリウッドのポストプロダクションにも、すでに多くのGoPro HD HEROの映像が持ち込まれているという時代性は、この潮流が日本だけではないことを物語っているように思われる。
こうしたガジェットに注目することで次代のプロがどう活きて行くか、そのヒントもここにあるような気がしてならない。