よみがえるデジタルシネマ市場
デジタルシネマカメラ市場が活性化してきている。2011年末のRED DIGITAL CINEMA製5KカメラScarlet-Xの登場に引き続き、2012年1月にはソニーのデジタルシネマカメラF65RS(ロータリーシャッター、NDフィルター内蔵モデル)とキヤノンのデジタルシネマカメラCinema EOS C300(EFマウント仕様)が発売となった。今後も、3月末にCinema EOS C300 PL(PLマウント仕様)、5月にF65(ロータリーシャッター無しモデル)が発売される予定だ。
従来に比べ、大幅に安価で高性能なデジタルシネマカメラの登場により、その下のクラスのプロビデオカメラ市場も今年は活性化していきそうだ。来月、ラスベガスで開催される2012 NAB SHOWでも、新たなビデオカメラが登場してくるだろう。カメラ市場の活性化は、制作ワークフローにおいても新たな流れを作りつつある。Log制作の普及である。これまでも、ソニーにはS-Log、パナソニックにはP-10LogというLog収録の方法はあった。しかし、日本の映像制作においては、ライティングは照明屋さんが決定する撮影現場の体制や、カラーコレクションがフィニッシング段階で行われるために、撮影時にカラーリストが撮影現場で監督の意向を汲み取りながら作業することがない分業体制があり、中間調のLog収録映像からじっくりルックを作っていく時間もコストもないローコスト制作の蔓延ということもあって、従来フィルム撮影をしていたような十分に予算のあるCMなどに活用範囲が限定されていたことも事実だろう。
キヤノンがCinema EOS C300で8bitのCanon-Logを提案したことは、ワークフローの見直しという点でも大きい。ソニーXDCAM EX PMW-F3+RGB 4:4:4&S-Logオプションに加え、Cinema EOS C300が選択肢に加わり、安価でありながらも大型イメージセンサーを搭載したカメラの活用範囲は大きく拡がった。これらに加えてRED DIGITAL CINEMAのRED ONE/EPIC/Scarlet-Xという選択もある。カメラのコストが下がったことで、撮影からフィニッシングまでワンストップでの制作もしやすくなり、これまではハイエンドの制作にしか使われなかったLog収録を、誰もが試してみることが可能になってきた。ソニーによると、RGB 4:4:4&S-Logオプションに関する問い合わせも増えてきているそうだ。
Log収録がやってきた
Log収録は、カラーグレーディングも不可欠となる。これまではカラーグレーディングシステムも高価だったが、2011年末にはブラックマジックデザインのカラーグレーディングソフトウェアDaVinci Resolveの無償版DaVinci Resolve Liteでカラーノード無制限化が行われ、Windows版DaVinci Resolve Liteも登場した。これまで限られた人しか試すことができなかったカラーグレーディング環境を、誰もがダウンロードして気軽に試すことが可能になってきた。
映像制作におけるLog収録とカラーグレーディングへの関心は、これまで以上に高まっている。今回の特集では、Log制作について整理しておこう。
txt:秋山 謙一 構成:編集部